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イメージがアイディアに変わる

「佐藤可士和の打ち合わせ」は、気づきの宝庫で、良い学びの場となっています。これから何回かにわたって、この気づきの宝庫から音楽との接点を書いていきたいと思います。

さて、今回はこの言葉、「イメージがアイディアに変わる」です。著者は、言葉の本質を見た時、アイディアという言葉を乱用しないように心がけている、と語り、打ち合わせの場では、どれだけ具体的にイメージが描けるか、様々なイメージをぶつけられるかで、生まれてくるアイディアの質が決まる、と述べています。

音楽用語リタルダンド(ritardando)で考えてみましょう。「だんだんゆっくりと」という意味ですが、皆さんは、どんなイメージを描かれますか?

・次第に足が重くなって引きずるように前へ進むイメージ? 
・巻いたネジが緩み止まりそうなオルゴールのイメージ?
・何も知らずに歩いていて、障害物に直前で気づいて「おっとっと・・・」と避ける様子がコマ送りで映像化されるイメージ?
・あるシーンで今から懐古に浸るシーンへの移行のイメージ?

それぞれ、音の様相も異なることでしょう。アンサンブルの練習中に仲間とイメージについて意見交換、確認する作業は、プロジェクトの打ち合わせでイメージをぶつけ合い、一つのアイディアへと作り上げていくのとまったく同じプロセスです。小さな確認ですが、その積み重ねが一糸乱れぬ演奏を作り上げるのです。

場としての「打ち合わせ」は、演奏家にとっての「合わせ練習」と同じ目的のようです。そこから作られる共有されたアイディアが、曲をまとめていく時、演奏者一人一人の意識に繋がっていきます。

「アイディア」という言葉は、単に「発想」ではなく、たくさんのイメージから生み出される方向性そのものであり、そこに含まれる「意図を確認する」という意味合いが大事なのではないでしょうか。


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