(読書記録) スピリチュアルズ 「わたし」の謎 (橘玲 著)

この本は、新しい心理学に関する本と言えるかもしれません。著者は冒頭で、この本では、「わたしは何者か?」という人類史上最大の謎に挑む、と書いています。

僕は橘玲氏のファンで、その著作を何冊か読んでますが、この本はその中でも力作と言えると思います。前述の冒頭の記載にもそれが表れていると思います。実際、僕も面白くて一気に読み進めてしまいました。

著者は最近の人間のこころの理解には、パラダイム転換が起こっていて、それは「わたしもあなたも、たった”8つの要素”でできている」ということがわかったことだと言います。そして、この理論にはちゃんとした名前がないので、著者自身が「スピリチュアル理論」と名づけることにしたそうです。

"8つの要素"とは、よく知られるパーソナリティの「ビッグファイブ」を著者が8つに拡張したもので、なぜそうした拡張が必要かについても本書で説明されています(簡単に言うと、ビッグファイブの「協調性」を、「同調性」と「共感力」に分け、さらに、「外見」と「知能」を加えています)。そして、人間の様々な性格がこの8つの要素の組み合わせで説明できることを示しています。例えば、「社会的知能」、「こころのIQ(EQ)」、「コミュ力」という言葉で説明されることは、8つの要素の中の「高い知能+高い共感力」の組み合わせで説明できるとしています。

本書の最後では、こうした"8つの要素"はそう簡単には変えられないという事実を述べています。そして、このことを踏まえて著者は「自分のパーソナリティを前提にして、それがアドバンテージを持つ場所(ニッチ)を探す」というシンプルな提案をしています。

以下、この本で印象に残った部分を要約してメモしておきます。
・ビッグファイブで性格が決まるのは、人格は、その人の内部にあるのではなく、他社の評価がフィードバックされたものだから。
・「外見と性格は別」というのはイデオロギーによるもので、キャラが外見から大きな影響を受けるのは当然。
・(アメリカの大学生を対象にした調査で)好きな曲を挙げてもらってそれにより判定者が評価した性格とビッグファイブの特徴のうち4つで、有意な相関が見られた。
・外向性/内向性は外部刺激に対する敏感さの違いで説明できる。(内向的な人は、レモンの搾り汁に対して、より多く唾液が出る)
・「神経症的傾向が高い」人は、ささいな変化やちょっとした出来事を敏感に感じとることができるというメリットもある。
・「博愛」や「人類愛」は共感からもたらされるわけではない。ガンジー、マザー・テレサらの偉人は、低い共感力によって偏狭な部族主義を脱し、より広い視野で自分とは異なるひとたちの幸福を真剣に考えることができた。
・知識社会で成功するパーソナリティは、「高い知能」+「高い堅実性」+「低い神経症傾向(精神的安定性)」。
・パーソナリティはベルカーブで、高くても低くても特定の環境では有利になる。しかし、同調性や母性愛が欠落しているのは生き延びるのが困難なので、これらについてはベキ分布していると考えられる。

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