(freakonomics視聴記録) The U.S. Is Just Different — So Let’s Stop Pretending We’re Not (Ep. 469)

freakonomicsは、スティーヴン・J. ダブナー(Stephen J. Dubner)というアメリカ人の作家、ジャーナリストがホストをしているラジオ番組のタイトルです。freakonomicsは、日本では「ヤバい経済学」として本になっていますが、オリジナルはラジオ番組です。

以下は、英語の勉強のための個人的記録です。標題の回について要約しています。

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この回のテーマは、他国で見られる教育、医療、インフラなどに関する良さそうな政策を文化的に異なるアメリカにそのまま適用できるのだろうか?ということです。

前半のゲストはMichele Gelfand(ミシェル・ゲルファンド)です。彼女は、異文化心理学(cross-cultural psychology)の研究者であり、University of Marylandに25年間いた後、Stanfordのビジネススクールに移ってきました。

Gelfandはニューヨークのロングアイランド、つまりアメリカの大都市郊外の出身です。もともとColgate Universityの医学部進学課程にいたのですが、ロンドンに留学した際に、アメリカとイギリスの違いにカルチャーショックを受けました。また、その他の国にも行って、重要であるが目に見えない文化の力を認識し、Colgate大学に帰ってきたあと専攻を変更しました。

Gelfandが今回の話題のゲストなのは、他国の政策等をアメリカに提供できないのはアメリカのどのような文化に要因があるのか?、を明らかにしたいためです。アメリカの文化として最も特徴的なのはindividualism(個人主義)です。

文化は定量的に評価することが難しそうですが、Gelfandはそれを測定することを試みました。彼女が最初に測定しようとしたのが、その国がtight(厳格)かloose(寛容)か、ということです。Gelfandによれば、それぞれの文化には社会的規範があり、我々はそれに沿って行動します。ある文化ではその規範は厳密に守られ、それをtight(厳格な)文化と呼びます。そうでないものは、loose(寛容)な文化です。

彼女はこの考えに基づき、33カ国7000人にインタビューて調査結果をまとめました。そして、2018にその知見を「Rule Makers, Rule Breakers: How Tight and Loose Cultures Wire Our World」という本として出版しています。tightな文化は東南アジア、中東、そして北欧やドイツ系のヨーロッパに見られ、looseな文化は、英語圏、ラテンアメリカ、ヨーロッパのラテン系、旧共産圏に見られるそうです。韓国、中国、日本はtightで、アメリカはlooseな文化に分けられます。

なぜ、国によってこうした違いが生れるのか?という質問に対して、Gelfandは一つの要因として、自然災害、病気、侵略といった慢性的な危機を経験した国はそれに対処するために厳格なルールを適用する傾向があるとしています。

アメリカはこの200年でよりlooseになっているそうです。これは、新聞や本に含まれる“restrain,” “comply,” “adhere,” “enforce,”といったtightさを示す言葉と、“allow,” “leeway,” “flexibility,” “empower”といったlooseさを示す言葉を分析してわかったことです。

Gelfandはlooseな文化の国ではコロナウイルス(Covid-19)の感染者がより多いことを指摘しています。一方で、looseな文化ではイノベーションや創造性を活性化するとしています。Gelfandはどちらの文化が良いと言っているわけではなく、どちらにも一長一短があると言っています。

また、アメリカの50の州の中でもTightness–loosenessの傾向に差があり、例えばカリフォルニアはlooseな傾向があります。

後半は、Harvard Universityのhuman evolutionary biology(ヒト進化生物学)の教授Joe Henrich(ジョー・ヘンリック)が登場します。

Henrichは下記の2冊の本の著者です。
「The Secret of Our Success: How Culture Is Driving Human Evolution, Domesticating Our Species, and Making Us Smarter」
「The WEIRDest People in the World: How the West Became Psychologically Peculiar and Particularly Prosperous」

HenrichはWEIRD (Western, educated, industrialized, rich and democratic)という枠組みを提唱した人の一人です。Henrichによれば、社会心理学のテーマのうち96パーセントがWEIRDな社会でのものだそうです。そして、70%のアメリカ人がWEIRDなので、心理学はアメリカ人によって支配されているということです。

DubnerがWEIRDな考え方の一例を挙げてほしいと言ったところ、Henrichは最後通告ゲーム(The Ultimatum game)を挙げました。最後通告ゲームは社会科学の分野で有名な実験で、2人プレイヤーの間でお金を分配する際分配割合を調べます。Henrichによれば、アメリカやヨーロッパの人は
50%を分配することが多いのに対し、ペルーのアマゾンで実験したときは、25%しか分配しなかったそうです。

したがって、Herichはこうした研究で文化の違いを意識することの重要性を強調します。また、Henrichは文化が遺伝子に影響するとも主張します。その一例として、ほとんどの人が読み書きできる社会では人々の脳梁はより分厚くなるということ挙げています。

もう一つの例として、個人主義の社会では中心にあるものに注目する傾向があるということです。一方で、東洋ではより全体的なイメージを見る傾向があります。これは例えば、2つの線が与えられたときに、個人主義社会ではそれぞれの長さの絶対値を正しく言い当てるのが得意なのに対して、そうでない社会では相対的な違いを言い当てるのが得意、といった違いとなってあらわれます。

その他にも所属する社会によって異なることは多くありますが、一つ言えるのはアメリカというのは他と比べて非常に個人主義の国であるということです。

この点については次回(Ep. 470)でもっと掘り下げます。

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今回は個人的に興味のある話題だったので面白かったですが、結構長かったので割と端折って書きました。今回登場したゲスト(GelfandとHerich)の著書をアマゾンで検索してみましたがレビュー件数も多く話題の本のようでした。ただ、日本語への翻訳はされてないようでした。

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