(freakonomics視聴記録) The Pros and Cons of America’s (Extreme) Individualism (Ep. 470)

freakonomicsは、スティーヴン・J. ダブナー(Stephen J. Dubner)というアメリカ人の作家、ジャーナリストがホストをしているラジオ番組のタイトルです。freakonomicsは、日本では「ヤバい経済学」として本になっていますが、オリジナルはラジオ番組です。

以下は、英語の勉強のための個人的記録です。標題の回について要約しています。

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今回は、前回(Ep. 469)の続きです。前回、アメリカというのは他と比べて非常に個人主義の国であるということが指摘されました。今回は、なぜアメリカ人は他の国と違うのか、を説明できる心理学モデルが作れるのか?というのがテーマです。

最初に登場するゲストは、オランダのWageningen大学の教授であるGert Jan Hofstede(ヘルト・ヤン・ホフステード)氏です。Hofstede氏は、彼の父親が50年以上も前に開始した研究プロジェクトをいまだに継続しています。彼の父親とは、Geert Hofstede(ヘールト・ホフステード)であり、この人は各国の文化を説明する6-D(6次元)モデルを提唱した人です。

Hofstede(息子の方)は父について、次のように説明します。父は元々電気の技術者でしたが、その後、社会心理学の仕事をしました。父は、IBMの社員を対象に国際的な調査を実施しました。調査の内容とは、例えば「従業員間の競争はどちらかというと有害である、という意見に同意しますか?」とか「上司とよい関係を築くのは重要ですか?」などといったものです。そしてこの調査結果から6-Dのうち4つの基準がうまれました。

Hofstede(父の方)はこのころから、スイスのローザンヌにあるInstitute for Management Development(IMD)教えはじめてました。そして、IBMでの調査結果がIBM以外にも当てはまることを知ったのでした。彼はIBMでの調査をもっと深堀りしたくて、そうしていいか上司に頼んだのですが、それは学者のやることだと断られたのでIBMをやめて学者になることにしました。このころ、彼はすでに社会科学の博士号を取得していました。最初の4つの基準は60年代末から70年代初頭にかけてのIBMの調査がもとになってました。1つ目の基準は個人主義か集団主義か、2つ目は「権力の距離」、3つ目は男性的か女性的か、4つ目は不確実性の回避です。その後、1980年代初頭に5つ目の短期志向か長期志向かという基準を導入し、2010年に6つ目の無節制か抑制的かを導入しました。

1つ目の個人主義か集団主義かについて言うと、中国はとても集団主義的ですが、日本はそうではありません。そして、一番個人主義なのがアメリカです。

個人主義の傾向が強いということは、新しいことをするということと関係しています。なぜなら、新しいことをするということは、その人が独立した個人であり、またその人自身でものごとを決めることができるということだからです。

個人主義の国は、より裕福である傾向がありますが、Hofstede(父の方)は裕福だから個人主義になると考えました。一方、Joe Henrich(前回Ep. 469に引き続いて登場)はそれとは微妙に異なる見解を持っています。彼は他人に対するオープンさ、個人主義、目立つことへの欲といったものはイノベーションを促進すると言います。そして、イノベーションは経済成長と関係しています。それから、アメリカ人が他の西洋の国と異なっていることとして、個人の成功をその人自身の功績に帰する傾向が強いことです。そしてこのことは格差を正当化します。

また、Michele Gelfand(前回Ep. 469に引き続いて登場)はアメリカ人は、個人主義なだけでなく、競争心が強い傾向があるとも指摘します。Gelfandはこれをvertical(縦の、垂直な)個人主義と呼びます。同じ個人主義でも、ニュージーランドやオーストラリアはhorizontal(横の、水平な)個人主義であり、これらの国では出る杭は打たれるといった傾向があり、また謙虚さを示すことが大事とされます。

後半では、6-Dモデルの個人主義-集団主義以外の指標についても見ていきます。まずは「権力の距離」です。これは、組織の中で権力が小さいひとが、権力が組織の中で均等に分配されていないことをどの程度受け入れるかどうか、という指標です。例えば、オランダのような権力の距離が小さい国では、お母さんが2歳児にオムツを変えるかどうかを確認して、選択させるということが起こりえます。アメリカも権力の距離が小さい国であり、上司はチームプレイヤーであることが求められます。

次は「男らしいかどうか(男性的か女性的か)」という指標です。「男性的」な社会では、それぞれの性別の人が、それぞれの性別に期待されることをすることを求められます。アメリカは、やや「男性的」な社会です。ただし、中国やメキシコほどではありません。アメリカにおいて、「男性的」な社会と個人主義が結びつくことで「勝たなければ負け組になる」社会となっているとHofstedeは指摘します。

次は「不確実性の回避」という指標です。不確実性の回避度とは、あいまいさへの不寛容さの度合いです。アメリカはこの指標がやや低いです。

5つ目は「短期志向か長期志向か」という指標です。もっとも長期志向の国は日本で、中国やロシアも同様の傾向です。この指標は、世界が常に流動的な状態にあると見なす、つまり、常に未来に備えるかどうか、の度合いです。アメリカは比較的短期志向の国です。短期志向の特徴は、善悪をはっきりさせたがる傾向と短気です。Hofstedeはアメリカ人の短期志向は我々が他の国とどう関係を作るかということに影響を及ぼしていると言います。

最後の指標は「無節制か抑制的か」です。抑制的な社会では、肉体的な満足を抑制する傾向があり、しばしば出生率が低いです。無節制な国ではより多くの人々がスポーツを楽しみ、抑制的な国ではスポーツは見るもの、という傾向が強いです。最も無節制な国はメキシコで、最も抑制的な国はエジプトです。アメリカはやや無節制な方です。抑制的な社会では、幸福度は低く、自殺が多く、犯罪は少ない、という傾向があります。

以上で6つの指標を見てきましたが、Hofstedeは彼のモデルを絶対的なものだと考えすぎない方がよいとも指摘しています。

Dubnerはある国がその文化を変えたい場合どうアドバイスするかと質問したところ、Hofstedeは変える方法はないので無駄だとの回答でした。

以上で、アメリカが他の国とどのように異なるかを見てきたので、次回以降、子供の貧困、社会インフラなど、個別の経済や社会の違いについて見ていきます。

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今回は「ホフステードの6次元モデル」の話題でした。これは僕も知っていたので割と有名なのではないかと思います。インターネットで調べると詳しく説明しているサイトがあります。各指標は日本語に訳すとやや違和感があったり、わかりにくいように思いましたがここではわりと直訳的にしました。

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