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「おかしい」の声をわきまえない。

2月3日、JOC臨時評議委員会の場で、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長 森喜朗氏が行った女性蔑視の発言。

「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」
「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」
「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困ると言っておられた。」

森会長の差別発言に対しても、発言に対して笑った評議会委員に対しても、国内外から強い批判の声が上がっています。

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この記事を読んでくださっているみなさんは、一連の報道や議論を見ながら、どんなことを感じたでしょうか。

また女性差別の発言か、という絶望感、怒り、呆れ。
この国に残る根強い差別は、いつまでも変わらないという諦めの念。
自分は差別的な発言や行動をしないようにしようという戒め。
あるいは、辞任まで求めることはない、報道は大げさだと、報道や議論のあり方に疑問をおぼえたかもしれません。

このままで、いいはずがない

一人ひとり抱いた感情は違うかもしれません。それでも、女性のあり方を決めつける発言に対しては、沢山の方が、このままでいいはずがない、という想いを持ったと思います。自分の中にも差別の芽があるのではないかと振り返り、言葉や行動に配慮しようとしている人も少なくないはずです。

でも、自分の中で教訓にするだけで、反面教師にするだけで、本当にいいのでしょうか。
公の場でリーダーが間違ったときに、間違っていると言わなかったら、誰が、この問題を終わらせるんでしょうか。
いつ、なぁなぁに問題を見過ごす時代が終わるのでしょうか。

問題発言に対して、批判は起こる。
しかし実質的には差別をした方は、何も変わらない、大丈夫。
女性差別は社会的に「マズイ」けれども、形式上発言を撤回したり、謝罪会見をすれば、大丈夫。
そんな風に社会的に差別的な発言や行動を、見逃して「許して」きたから、日本ではこの2021年になってもなお、公の場で差別発言が繰り返されています。

そして、差別的な発言や行為、それらを見過ごしてしまう瞬間は、公の場に限りません。家族や学校、職場といった身近な場面にも「女性だから、男性だから」という決めつけの言葉が潜んでいます。

「間違ってる」を私は言わなかった

NO YOUTH NO JAPANの一メンバーである私は、筋肉質で身体が大きいことを「女性なのにでかい、重量感がある」と周囲の方からよくいじられ、それを当たり前のコミュニケーションの一部として受け入れてしまった経験があります。仲良くなれるのなら「仕方がない」と聞き流すことを繰り返すうち、いつからか一つのアイデンティティとして「自分はそういうものだ」という感覚が根付いてしまったのです。

場の空気を壊しちゃいけないから。
受け入れたほうが、周囲に溶け込めるから。

いくつもの「仕方がない」は、自分の周囲の方々にとって、苦しい環境を生み出すことにつながりました。私がそのコミュニケーションを「受け入れる」ことで、いじりのコミュニケーションがとれない女性は「面白くない」というレッテルを貼られることになったから。女性を容姿でからかっていいという状況を、自分が許してしまったからです。

「その雰囲気が苦しかった」
何年も後に友人がぽつりと言いました。自分の愚かさに気づいた頃には、いじりのコミュニケーションを「仕方がない」と受け入れていた自分も、体型を気にし上手くご飯が食べられなくなっていました。

笑って流した何気ない女性いじり、男性いじり、その他多様な差別的発言は、今ここにともに生きる人に、そしてこれからこの社会に生まれてくる人に、「あなたもそれに耐えろ」という空気を背負わせます。

わたしも、差別的発言を、許してしまった一人。
身近な場でも、公の場でも「仕方がない」「そういうものだ」の空気をつくることに貢献して、問題を継続させてきた一人でした。

「それは間違っている」の一言が言えなかったことを、後悔しています。

周囲からうざがられても。空気を壊しても。
差別的な発言や行為に対して、「それは間違っています」とその場で表明できる人や、しつこく怒り続けられる人や、一歩社会を変えるアクションに踏み込める人に、一人でも多くなってほしい。

そして、差別的発言を「仕方がない」ではなく、どんな場面であっても絶対にしてはいけないこと、と当たり前に捉えられる社会をつくりたい。もう誰も差別的発言や行為で傷つく必要がない社会の景色を見たいのです。

一歩を踏み込むその勇気が「仕方がない」を終わらせる

NO YOUTH NO JAPAN代表である能條桃子は、有志10名とともに、日本政府、東京都、日本オリンピック委員会、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に対して、森喜朗会長の処遇の検討を求める署名を立ち上げました(※)。署名は、立ち上げから1日で9万署名を超え、現在は12万人以上の方々が賛同を示しています。
※ 本署名は、代表が個人で有志の一人として立ち上げたもので、NO YOUTH NO JAPANが行う活動ではありません。

また、世界各国の大使館が、#dontbesilent(黙っていてはいけない)というハッシュタグを用いたツイートをして、森氏の発言に抗議を表明しています。

発言にもやもやしたり、嘆いたりしている人は十分にたくさんいる。
あとは、変化を求めて行動に移す「わきまえない」人の数が増えることが必要です。
想いを示す人が「一部の人」でなくなれば、この問題は終わりにできる。
そう信じていいからこそ、わたしたちは黙ってはいけないんです。

オンライン署名に参加する。
SNSで、差別に反対する投稿をいいね・シェアして応援する。
差別発言や行為について、周りの人と話してみる。
場に流されず、差別を笑ったり聞こえないフリをすることを止めてみる。
身近な人の違和感ある発言に、そっと「それは間違っている」と伝えてみる。

具体的に社会を変えるためにできることが、一人ひとりにあります。

毎日の生活が忙しく、時間にも気持ちにも余裕がないかもしれません。
それでも、オンライン署名やSNSでの投稿のシェアなら、たった2分で行うことができます。

次の世代に「差別」を持ち越さないために。
わたしたちが差別を終わらせるために。
もやもやする気持ちの「もう一歩先」を、ぜひ踏み出してみてください。

NO YOUTH NO JAPANは、あらゆる差別に反対します。
そして、あらゆる差別のない社会をつくるために、一歩勇気を踏み出す方を、心から応援します。



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