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親が老いれば子も老いる

自分のこととなると途端に感度が鈍ります。

初老を過ぎたくらいから飛蚊症が悪化した。視界に入るモヤモヤに茶色い色がついて、本当に虫がいるように見える。これでは全く気持ちが休まらない。加えて、最近妙に世界がまぶしく感じて夕方になると目がチカチカしてくる。とにかく視界が見にくい。
ちょうどコンタクトレンズの定期検査の時期だったから、先週は眼科で相談をした。網膜の写真まで取ったが異常なし。コンタクトレンズを継続して大丈夫ですよというあっけない結果だけをもらって診察は終わった。

コンタクトレンズ屋のスタッフさんに結果を伝えるとテキパキと視力を測ってくれて「うーん、ちょっと視力が良くなっちゃったかも」と意外なことを言われた。単純に、視力が倍になっていた。倍になったと言っても裸眼で0.03→0.06という、ゴミみたいな数値なので「最近見やすくなったな」なんて実感は全くない。
検眼しながら度数を落としたレンズに変更したら大変見やすくなった。親身に対応してくれたスタッフさんには感謝しかない。

実はこの「視力がちょっとよくなる」現象、大昔にメガネ屋でバイトした時に聞いたことがある。もともと近視の人は老眼が始まるとちょっと遠くが見えやすくなる時期があるらしい。本当かどうかわからない。私にできることは老いた、という事実を受け入れるだけだ。しかし少々気恥ずかしい。もちろん病気ではなくて幸いだが、単に加齢で見づらさが出たのを病気だと思って深刻になっていたことがどうにも気恥ずかしい。 

そういえば10年くらい前―

父が60過ぎた頃に、もともと視力が悪いのにさらによく見えなくなってしまって眼科を受診した。診断結果は「加齢のため」で、見づらさは治るものではなく『お年ですね、って言われたら俺ぁ手も足も出ねぇよ』とガックリしていた。
父の年齢を考えたらそんなにショックを受けることでもないだろうにと、あの時はちょっと冷めた目で見ている自分がいたが、今や時を越えてほぼ同じ状況をなぞっていることに気づいてしまってバツが悪い。こういう気持ちだったのねお父さん。

去年と同じことができなくなる、半年前と同じことができなくなる、
先月と同じことができなくなり、先週と同じことをすると今週は辛い。
無理がきかなくなるだけでなく、一晩寝たくらいでは回復しなくなり、
痛みや不調、不便を永続的なデバフとして受け入れなくてはならない。
私はその「老い」の道をすでに踏み出していたことにやっと気づいた。

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