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2023夏 西日本を巡る①

2023年の夏休みは7日間、1日目の朝は夫の合図から始まった。
「いくよー」
「何泊?」
「うーん。3泊か4泊かなぁ」
「ちなみに、どちらまで?」
「天橋立としまなみ海道だね」
「おお。ついに日本三景を制覇。」

松島は縁があって何度も行っているし、宮島は夫が西日本で仕事をしていた頃に一緒に旅行した。いつかは行きたかった天橋立!そしてしまなみ海道!ついにその時が来た。
何をどのくらい持っていくか目安になる情報だけで荷物をパパッと詰め込み、車に乗る。今回の移動手段は自家用車、出発地は伊豆半島。長距離移動になるのでハニカム構造のクッションを携えて臨む。運転は夫、費用は私。


1日目 700キロ

天橋立は前屈できる柔軟さが必要


宿の予約もないまま車は走り出した。
「琵琶湖の北側を通って日本海側を目指すよ」
ほうほう。初めて通るルートですね。
「今日は天橋立あたりに宿泊するつもり」
1日目の私はこれを鵜呑みにして午前中から天橋立近辺の宿泊場所を検索してしまったが、
アラフィフの夫の「行けるところまで行ってみたい」という情熱の前に朝令暮改が繰り返されることを後々思い知らされる。

早朝に出発したせいか、渋滞らしい渋滞もなくスイスイと静岡県を横断。宣言通りに琵琶湖の北側を通ってするりと日本海側へ出た。
「ナビ、天橋立に入れてー」
はいな。名称検索すると2箇所候補地が出てしまった。えっどっち?スマホで調べるとベルとエジソンみたいな、元祖と知名度で2箇所ある。
「分岐来ちゃうから早く!」
なんか元祖っぽいところに設定。思ったのと違ったら両方巡れば良い。何せ夏休みなんだから。案の定、夫は知名度が高い方に行きたかったようで「えー別の方が有名だよ」とぼやいたが「気に入らなければ両方行こう」と言うと「そうだね」と笑った。うん。私たちはこのゆるさが良い。

ちなみに松寿庵さんの黒豆きんつばはこの旅でベストヒットのお菓子でした。控えめな甘さと黒豆のどっしりした味わい、最高です。

まだ日の高い時間に天橋立に着き、リフトで上がる。「またのぞき」スポットがあるのだが、どうも気乗りしない。ここを目的地に決めた彼もなぜか躊躇う始末。
「あれ、行ける?やってみる?」
「私はいいや。ちょっとトイレ」
私はそそくさとトイレへ。スッキリして表に出ると「じゃあ行こうか」と駐車場へ戻った。
「またのぞき」をする台が設置されているのだが、あの上で前屈したらバランスを崩して落ちそうな気がして夫婦揃って無理だった。
近くにはさらに上に行く山道もあったが、日差しが強くて無理だった。人生でおそらく最初で最後の天橋立観光は、リフトに乗って高いところで用を足して終わった。夫はちゃっかり写真を撮って大満足。もう1箇所の天橋立観光スポットには行かなくて良さそうだ。私も
とりあえず「お菓子の館 はしだて」に立ち寄り、楽しい楽しいショッピングを満喫。


わさっとお菓子を買い込んで車に戻ると、私は重大な話を切り出した。
「この先で宿をいくつか見繕ったよ。今からなら夕飯に間に合うと思う。温泉入ってゆっくりできるよ。運転疲れたでしょ。ここまでありがとう。」
次の目的地をナビに入れようと車の中で夫に声をかけた時、祈るような気持ちだったと思う。今日はもうゆっくりしようぜ相棒。ハニカム構造が尻を守ってくれてはいるが、なかなか腰にきてるんだぜ。ここまで7時間以上走ってるから。私、一切運転してないけど、疲れました。
夫は
「いやいや、もっと行ける気がする」
と目をキラキラさせていた。
祈りは届かなかった。そっか……マジかぁ……さよなら温泉宿。
せっかくの休暇にくよくよする時間はない。温泉を諦めた悲しみを秒で忘れることにした。もっと行けちゃう?なんてキャッキャしながら「じゃあナビ、どの辺にする?」とにこにこしながら聞くと

「とりあえず鳥取砂丘に設定して」

「えっ」
笑顔は秒で消し飛び、私は宿の検索をやめた。 

鳥取駅でやっと停止

日が傾き始め、通常のお宿ならチェックインの時間をとうにすぎ、なんなら夕食の配膳が始まる頃に鳥取に到着。
「今日は砂丘観光、無理だねぇ。暗くて何も見えないね。」
これ以上は動き回らないよね?ね?と言う気持ちで夫に確かめて、怒涛の宿検索を開始。2人で泊まれる手頃な宿がなかなか見つからず、
駅前のビジネスホテルのシングルを2部屋取った。ここまで移動時間は10時間以上になっていて、700キロは走っている。正直、相手のペースに合わせるのもしんどくて宿泊はもう別行動でいいやと思った。それくらい疲れていた。

1日目にして最大のトラブル

ビジネスホテルの立体駐車場に誘導されてバックした瞬間、ギギギギギ!!!と大きな音。アンダーカバーが半分外れてベッコリ曲がってしまった。

あああああ!疲れてるのに!すっごく疲れてるのに!今日という1日が!終わらない!!

イライラにのまれてはせっかくの休暇が台無しなので、気持ちを切り替えて冷静にJAFをアプリで依頼し、待っている間にビジネスホテルのチェックインを済ませる。
「最悪の場合は車を陸送してもらって新幹線で帰宅かな」と考えを巡らせ、鉄道の帰宅経路と費用を検索し始めた。
いやホント、何が起こるかわかんないね。駅前のビジネスホテルで良かったなーなんて思っていたらJAFのスタッフさんが来てパパッと確認。最初「ええと、今日?静岡から来られたんですか?」と若干戸惑われていたが、それもそのはず。天橋立を過ぎてから他県ナンバーなんてほとんど見なかった。伊豆ナンバーはかなり目立つ。こちらが休暇初日なんですと伝えると長距離走行に問題ないかチェックしてくれた。外れかけのアンダーカバーを丁寧に取り外して「アスファルトの道ならこのまま走行して大丈夫ですよ。」と笑顔で去っていった。これだからJAFの年会費は払って損はないのですよ。

「それでは今より各自自由行動とする!」

翌朝の集合時間を決めて夫婦はそれぞれの部屋で休息をとった。ちなみに夜食を買いに出かけたコンビニで夫に遭遇して、鳥取駅でウイスキーを買ってしまったのも良い思い出だ。

1日目はこれでおしまい。
1人のビジネスホテルは何もかも自分ルールで過ごすことができて最高だった。

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