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甘い葡萄を酸っぱい葡萄にする魔法

アイゼン師匠のお好みは私にはさっぱりわからないが、酸っぱい果物がお好きな人は時々お見かけする。

私は酸っぱい果実は好きじゃない。酸っぱさが欲しいなら果実に求めず酢でも飲めと思うくらい好きじゃない。作物の甘味を際立たせて作り上げてきた方々の努力と時間に敬服して享受したいタイプだ。

ところがだ。父は「最近のミカンは甘すぎてダメだ」と言う。
はん!言ってろクソジジイ。スーパーのミカンの味に慣れてしまったくせに。酸っぱくて美味しいわけないじゃん。

ちなみに私が買った家の庭で育つ柑橘はとにかく酸っぱい。木の保守のために収穫はするけど鳥と動物に食われるがままで、自分で食べようとは思わない。

正月、「じゃあこれ」と大ぶりの柑橘を一つ父にあげて会社へ行った。「こんなに酸っぱいとさすがにお手上げだな」と言わせたい、と不意に思ったのだ。

その日は私の方がニヤニヤして帰宅した。父に「酸っぱすぎて食べられなかったでしょ?」と聞いたのだが—

いやおめぇ、あれは極上の逸品だぜ

まさかの反応だった。どれほど美味しいか、まったくそそられない力説を10分ほど聞かされた。

ほら、最初酸味があっても後からやわらかな甘みがふあーっと来るでしょうが!

と言っていたが、私は食べないからわからない。まったくの平行線。

もちろんこの「すっぱい柑橘が好き」という人が、父だけではないことも知っている。過去におすそ分けした方々からはお酒の割り物にしたり、サラダのトッピングやドレッシングの代わりにしたよとレビューいただいた。ただ、父のように絶賛!と、いうわけでなく「そうそう、こういうのも悪くないのよ」とおっしゃる程度で、こちらもそれくらいのご感想であれば理解できるというもの。

とりあえず父には山ほど収穫して食べさせた。

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