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プリパラが描く賢さの奥行き【”頭がいい”の多様性】

これは #プリッカソン Advent Calendar 2020 - Adventar 23日目の記事です。(かなり遅刻してすいません)

幼稚園や小学校低学年では運動が上手い子がヒーローでヒロインだ。速く走れる子、遠くに飛べる子が人気になる。

しかし年をとるにつれて、運動神経のよさよりも頭のよさが求められるようになる。
受験、就活。これらを勝ち抜く”賢さ”を手に入れることが現代社会では推奨されている。

本日紹介する少女向けアニメ「プリパラ」「キラッとプリ☆チャン」は6~9歳が対象年齢とされている。
そう。運動神経だけでなく頭のよさを意識始める年齢だ。
漢字を覚えられる子と覚えられない子。九九を覚えられる子と覚えられない子。
嫌でも、自然に、頭がいい子と頭がよくない子の違いが可視化されていく。

これから多感になっていく年齢層を相手に
少女向けアニメは”頭のよさ”をどのように描いてきたのだろうか。
今回はプリパラのキャラクターをとりあげることで検討をしたいと思う。


1,南みれぃ【計算】

プリパラで頭がいいキャラと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは南みれぃだろう。
計算をすることが得意で、プリパラにおける自分のキャラづくりもすべて計算づくしである。

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みれぃの特徴はコンピュータ的な頭のよさと表現するのがよいだろう。

例えば、計算の結果が異様に細かいことが多い。次のライブの勝率や、必要な努力量をかなり具体的に提示をする。
細部まですべての計算を行う点はコンピュータらしいといえるだろう。

また、例えば、計算の過程にみれぃ自身の感情を含まずに計算を行う。
なので自分の思いとは裏腹に語尾を捨てたり、アイドルを辞めたりする。そうするのが最適だから。
感情を含まずに計算するので、紫京院ひびきと「負けたらプリチケを譲る」という取引をしてしまう。それが合理的だから。
これもコンピュータらしいといえるだろう。

みれぃは作中で計算を誤ることが多い。
それは計算が下手なのではなく、計算の前提となる条件が間違っているためと考えられる。
だから、前提条件を正してくれる仲間がいればみれぃの計算は正確になる。
らぁらの気付きから選曲を変更した神アイドルグランプリファイナル準決勝などはその典型的な例といえるだろう。

みれぃの頭のよさは1人だけでは完結しない。
みんなサポートがあってこそ活きるものである。


特徴
・コンピュータのように計算をする
長所
・高速で精密な結果を出せる
・感情を度外視して計算をすることができる。
短所
・前提条件が間違っていると正しい結果がでない

2.東堂シオン【読み】

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みれぃと対になるキャラとしては、東堂シオンが筆頭候補だろう。
シオンは学生囲碁チャンピオンで常人ならぬ勘の鋭さをほこる。

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シオンの特徴はヒューリスティック的な頭のよさと表現するのがよいだろう。
ヒューリスティックというのは、ある程度のレベルで正解に近い解を見つけることができる方法だ。
答えの精度が保証されない代わりに、回答に至るまでの時間が短いという特徴がある。
囲碁を通してこのヒューリスティック的賢さを磨いたのだろう。

正解を見つける早さの例としては、ダンスの習得があげられるだろう。
アイドルは未経験だったが、ダンスを囲碁に見立てることであっという間に最強アイドルになることができた。

答えの精度が保証されない例とした。時折見せる頓珍漢な行為があげられるだろう。
紫京院ひびきとのデートを決闘と勘違いしたり、プリチケを取り戻したいあまり大神田校長に襲いかかるなどだ。

シオンは読みの早さに自信を持っている。
自信が過信に変わりやすいのが弱点だ。神アイドルグランプリファイナルではガァルマゲドンにあと一歩のところまで迫られてしまった。
また、反射で行動する相手(虹色にの)には先手を取られてしまう点も弱点である。

特徴
・経験則に基づく鋭い直感
長所
・とにかく早い
・基盤となる経験則(囲碁)が強い
短所
・自信が過信にかわりやすい
・反射で行動する相手に早さで勝てない


3.黒須あろま【事前知識】

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黒須あろまは、みれぃと似たタイプの頭のよさを持つキャラといえよう。
膨大な知識をもとに、悪魔キャラを演じきっている。

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黒須あろまの頭のよさは、そのすべてを事前知識に依存している。
図書館の一角を占領している、666冊のノートがその象徴だ。
あろまの演じる悪魔像はキリスト教世界に忠実に基づいており、キャラを演じる上でかなり研究をしたことが見受けられる。

事前知識が正確にインプットされているために、ブレない点が長所といえよう。
悪魔キャラに悩んだりするようなエピソードは作中で一度もなかったと思う。この点みれぃとは対極的だ。

一方、事前知識に頼っているためアドリブが効かない点が短所だろう。不器用な点はみれぃとの類似点だろう。
神アイドルグランプリファイナルでは、芯ガァジラを召喚するものの、シオンらの機転に打ち勝つことができなかった。

そんなあろまに大切なのは事前知識を拡大してくれるような仲間だ。
常識にとらわれない白玉みかんと、何よりも純粋なガァルルはあろまの賢さを支えているといえよう。

特徴
・豊富な事前知識から答えを探す
長所
・間違えない
短所
・研究にコストがかかる
・アドリブに弱い


4.紫京院ひびき【逆算】

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つづいて紹介するのは圧倒的なカリスマ性を持つ紫京院ひびきだ。
セレブな一家に生まれ、幼少期から英才教育を受けてきた彼は、自身の理想郷にむけてスキの行動をとる。

紫京院ひびきの頭のよさは、自身の理想から逆算をする点にあるだろう。
アニメ2期のひびきの行動は、プリパラを我が物にするために逆算されていた(例:緑風ふわりのスカウト、プリズムストーン前の物件を購入)

計算するという点で、ひびきとみれぃは類似しているキャラといえるだろう。
ただ、みれぃは目の前の事象を計算するのに対して、ひびきは自身のゴールに向けて逆算をするという違いがある。
ひびきは(基本的に)自身の理想が揺るがないので、逆算は正確でカリスマ性を帯びたものになる。

そんなひびきの弱点は、分かりあえない人物には頭がいいと認識してもらえない点だろう。
らぁらはひびきの聡明さを理解してないし、ドロシーとひびきはお互いがお互いを馬鹿だと思い合ってるはずだ。

特徴
・理想の再現に向けた逆算
長所
・芸術家的カリスマ性を持つ
短所
・自分の思想の幅を抜け出せない
・理解しあえない人物がいる(例;真中らぁら)


5.真中のん【模倣】

主人公らぁらの妹である真中のんも、頭のいいキャラクターとして挙げることができるだろう。
しっかりものの妹ととして描かれ、テストの点がよいという描写がされていた。

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真中のんの頭のよさは、模倣力の高さに尽きるだろう。
1人3役でそらみスマイルを真似ることによって、一気にスターダムを駆け上がった。
ラブリーなかのんは、らぁらの模倣。ポップで語尾なぴのんはみれぃの模倣。クールなじゅのんはそふぃの模倣。

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ただ、そふぃの天才性を完全に模倣できなかったために、神アイドルグランプリ初戦ではそらみスマイルに勝利することができなかった。
後にそふぃが「蝶の舞」のメイキングドラマを作った際に、のんはそふぃへの完敗を認めざるを得なかった。

模倣で一気にパワーを得ることができるものの、模倣できない対象も存在するのがのんの賢さといえよう。

特徴
・観察力による模倣
長所
・瞬間的に誰かの長所を真似ることができる
短所
・自信が理解できないものは真似をすることができない(天敵:北条そふぃ)

プリパラ総括

プリパラのキャラの”頭のよさ”を振り返ると、多様性に富んでいることがわかった。
それぞれの頭のよさには得意と苦手があって、それぞれをカバーしあいながら物語が進む様子が浮かんでくる。

小学生は頭がいい/悪いという2値評価で友達を評価してしまいがちだ。
でも実際にはそうじゃない。暗記が得意な子もいれば、論理的な思考が得意な子もいる。

プリパラでは長所と短所を様々な側面から描くことで、
視聴者の頭のよさの解像度をあげることに成功していると言えるだろう。


さて、ここまではプリパラのキャラを振り返ってきたが、最後に番外編としてキラッとプリ☆チャンの天才キャラである紫藤めるについても触れていきたいと思う。
『頭のよさには長所・短所があっても、自分の上位互換の存在がいるじゃないか!?』という疑問に答えてくれるのが、この紫藤めるである。


番外編.紫藤める(キラッとプリ☆チャン)【無敵】

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紫藤めるは圧倒的ジーニアスである。
中学1年の段階でアメリカの大学を卒業し、既にNASAで働いた経験があるという超ぶっとび天才児だ。

めるには苦手なこともある。じっとすることや、好みであるドーナツを我慢することだ。
ただ、この苦手のことは頭のよさとは関係ない。

現状、紫藤めるの頭のよさの弱点は見つからない。
開発する新しいアイテムが不良品であることはないし、歌や踊りも自身の天才性で習得してしまう。

少年少女は成長していく上で、自分が敵わないと思う存在にであっていく。
紫藤めるは、そんな『上位互換』として存在するキャラだと思う。

圧倒的なのは63話。
この話ではめると後輩(ずず、まりあ)が仲良し合宿を行う。

すずは筋トレやダンスなどの種目でめるに勝負を挑むが、何をしても負けてしまう。
ヤケクソになったすずは「める先輩は出来ない人の気持なんてわからない」と言い放つ。

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めるの回答は
「わからないよ。すずは出来る人の気持ちわかる?わからないことをもっと知りたいから、すずの気持ちも教えて欲しい」
というものだった。


自身が出来ることを否定せず、さらに貪欲な態度をみせる。
ジーニアスが見せたスケールの大きな世界に、すずも憧れを感じるのであった。

少年少女が成長すればいつかはぶつかる「上位互換」の世界。
その世界の一片を見せてくれるのが紫藤めるだった。

特徴
・人智を超えた天才
長所
・万能
短所
・なし

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