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圏論の魅力を数学抜きに伝えたい


みなさんは圏論をご存知でしょうか?

今密かに話題の数学の一分野で、数年後にはビジネスマンの間でブームが来ると考えられています。

近年、圏論を紹介する書籍などは増えてきましたが、
広く初学者向けに「圏論って何なのさ」と紹介する記事はあまりみないので、
今回は自分なりに圏論の楽しさや魅力を書いていこうと思います。

数学の一分野ではありますが、数学アレルギーの人にでも伝わるように、書いていこうと思います。

注意書き

本記事では、数学的な知識や数式を極力使いません。というのも、私自身に数学の専門知識がない、単なる数学愛好家なので、下手に数学の話をすることで間違った理解の温床になる可能性を避けるためです。

専門的な入門テキストとしては、以下の本がオススメで自分も使っています。
ベーシック圏論 普遍性からの速習コース

また、上の本が難しいと感じた方は、この本から入るといいと思います。
圏論の道案内 ~矢印でえがく数学の世界~ (数学への招待シリーズ)

では、圏論の話に入っていきましょう。


圏論:同じさを議論する

圏論は、”本質的な同じさ”を議論するための手法です。
我々は、モノを関係性を通して理解することが多いです。

例えば、カーリングを氷上のチェスとたとえます。
このようにすることで、カーリングを知らない人でも、チェスとの関係性を通してカーリングの概要を掴むことができます。

また、ドラフト候補の野球選手を〇〇のダルビッシュとたとえることがあります。
その投手はダルビッシュ同様に、右投手で身長が大きく速いボールを投げると予想することができます。

このような、モノとモノの間の本質的な同じさを、数学で議論したいというのが圏論のモチベーションとなります。
本質的な同じさは等号(=)で表せないので、そのための手法が必要ということです。
圏論は1950年代にオックスフォード大学で始まったと言われています。

圏:対象と射の集合

圏論における圏は、対象と射から成り立ちます。

下図では、AとBが対象、fが射となります。
「fは対象Aから対象Bへの射」と表現し、Aを域、Bを余域と呼ぶ。

図1

対象と射は何でもよいです。


例:f(x)=2x とすると 3→6 となる
  f(x)=xを加熱 とすると ⽣卵→ゆで卵


圏や射の詳細な定義は割愛します。
下図のように、対象(A,B,C,D)と射(f,g,h,i)が集まったものが圏となります。

図2


関手と自然変換:射の射

続いて、圏論の重要なアイデアである、関手(かんしゅ)と自然変換のアイデアを紹介します。
関手も自然変換も射の一種となります。


関⼿:圏と圏の間の射(下図F・G)
⾃然変換:関⼿と関⼿の間の射(下図θ)

図3


例えば、昭和と平成における「待ち合わせ」を圏にすると以下のようになります。
先についたaさんがまだ到着していないbさんに連絡する状況を想像してください。

【昭和の圏C】                 【平成の圏】
先→(掲示板の射)→後  ⇢(緊急時の関手)⇢  先→(通話の射)→後
              ⇑(緊急性の自然変換)
             ⇢(非緊急の関手)⇢  先→(LINEの射)→後

関手によって、昭和と平成を対応づけることができ、
自然変換によって、電話とLINEの違いを説明することができました。
昭和と平成の待ち合わせがどのように違うのか、数学的手法であらわすことができました。


圏論の魅力:言語化

最後に、圏論を勉強してよかったと思うこと、圏論の魅力を4点説明したいとおもいます。

・人間関係の悩みが減りました

圏論は、対象と射から成り立っています。
これを現実社会にあてはめると、社会は個人と個人間の関係性から成り立っていると考えることができます。
関係性が個人と同じように主役という訳です。

圏論的社会観では、相手とうまく行かないときに、相手(対象)に問題がある場合と関係性(射)に問題がある場合があります。
相手と同じ関係性でいたとしても、相手が変わってしまえば、射の結果が変わってしまいます。
逆も然りで、相手が同じでも、関係性が変わってしまう場合もあります。

個人的には、圏論的社会観では、性善説と性悪説が両立するのが面白いと思います。
というのも、対象に性善説、関係性に性悪説が宿ると仮定することができます。
そうすると、少し世界が優しくなった気がして好きです。

・スポーツと芸術

以前noteにあげた、スポーツ×芸術の記事も、圏論のアイデアから着想をえています。


例えば、以下の図も、左が作品の圏、右が鑑賞者の圏だと捉えると、スポーツというのは圏と圏の間の射と考えられます。

ファインプレー例

つまり、芸術というのはある種の関手ということができそうです。


・ビジネスのハウツー

そのうち、ビジネス書などでも圏論が取り上げられると思います。
というのも、ビジネスのハウツーも関手(射)といえるからです。

例えば、〇〇社での成功事例を☓☓社で活かすというのは、〇〇社の圏と☓☓社の圏を対応付ける関手(射)とみなすことができます。
上記の待ち合わせの例のように、両社のステークホルダーを関係付けることができれば、ビジネスでの成功事例をうまく模倣することができます。

ビジネスのハウツーを数学的に表すことができれば、かなりキャッチーですし、圏論が重宝される時代が来るかなと思っています。


・分断を越える

これが圏論に一番期待されている役割でしょう。
実際に(自分の周りの)研究者の間では圏論がブームで、諸科学の諸領域を圏論で定式化して、共通の⼟俵に載せるようとしています。
現代思想の圏論特集号では、論理学の圏と物理学の圏の対応を考え、物理のための⾃動推論システムの研究をする例があげられています。

このように知識における分断社会を乗り越え、横断的な知の再統合をはかることができるのが、圏論の大きな意義といえましょう。

圏論で科学を横断するように、現実社会での分断に対処するためにも圏論は有効なツールとなるでしょう。
たぶん数年後圏論がカジュアルに話題になる時は、分断を越えるための数学としてクローズアップされると思います。
ただし、圏論はあくまで道具であって、圏論が世界を救うわけではありません。
容量用法をただしく守って、圏論を使いたいものです。



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