007シンメトリー
正方形と円
001で書いた正方形の話です。
正方形は上下左右の辺の長さが同じ。
これは「円」と同様と捉えます。
円の中心は真ん中でそこは画の重心でもあります。
円といえば日本人ならだれでも持っている「家紋」
衣装はもとより、武具や瓦にまで描かれ、古くは平安時代にまでさかのぼるというから日本人の美意識の高さには驚かされます。
ここで原則的に良く使われるものが「対称=シンメトリー」
海外では紋章(エンブレム)ですね。
ロゴや自動車のマークがわかりやすいかな。
美の一つの完成形としてのシンメトリーが見えてきます。
もちろん正方形でなくてもトランプの絵札にも描かれます。
ここで「あれ?」
と思った方も多いと思います。
トランプの絵札は「対称」ではなく、左右逆に描かれます。
あえてシンメを崩すのも面白いところです。
実は、上の徳川家の家紋も葵の葉柄が対象ではなく、円周方向にトランプの絵札と同じように描かれています。
完全なシンメトリーにこだわるのではなく、柔軟に対称や相似で描かれていることも少なくありません。
冨嶽三十六景 甲州三坂水面も季節の違う見えるはずのない逆さ富士から北斎の意図を感じることができるのでしょう。
余談ですが、安野光雅「ふしぎな絵」をご覧になることをお勧めします。
遊びの中の美しい構図として一見の価値があります。
もちろん、家紋も探せば結構な数の「非対称」に出会います。
巴や鷹羽や矢羽、蝶・鳥などの顔の向き、謙信や三成の文字などはバランスのとれた非対称であり、良く考えられています。
さて、構図の理論など何もない大昔でも美しいものは美しい。
それはルールの一つとして「シンメトリー」があることを教えてくれます。
そして、これをルールに組み込む時
意図しない対称っぽい構図はNG
とも言えます。
分かりやすく書くと、
シンメトリックに撮りたかったのに立ち位置が悪く微妙に外れてる・・・これはNG
神社仏閣などに見られますが、思いっきりシンメな建物があります。
この場合、撮り方としては
1.完全にシンメトリックな構図
2.少なくとも20度以上外した(立体感を意識した)構図
の2通りしかないと考えていただいてOKです。
映像におけるシンメトリー
換言すると、映像ではこの両方を撮っておかないと編集できない。
本来、使ってはいけないOLやワイプでつながざるを得ない、すなわちカメラマンの未熟を露呈させることになります。
特殊効果はカメラマンの力量の無さを示す指標です。
正しい構図で撮れるのは前提条件で、カットのつなぎも考えられるのが一人前のTVカメラマンです。
このへんの映像理論はディレクター編で詳説します。
建物でもブツでも、シンメ構図は常に頭の片隅に陣取っています。
対称が見えるか?見せるべきか?という選択は被写界深度などを考える前にまずつぶしておきたいところなのです。
意図の意思表示
ついでに書いておきます。
時々、水平ではなく、あえて斜めに撮ることがあります。
この場合も数度という「失敗斜め」ではなく意図的に15度以上傾けます。
「水平がとれていない」ではなく意図です!という意味で。
ちなみに、16:9画面の対角線は約30度です。
縦の半分なら約15度
1/3からなら約10度です。
10度未満がいかに中途半端な角度か分かると思います。
水平が取れていない画は「ビデオ酔い」の原因の一つです。
ビデオ酔いも後に詳説します。
ここまで全体的に間違いやすい部分や前提として知るべきことを書いてきましたが、次回以降はより実践的に細かいことも書いていきます。
最後までお読みくださりありがとうございました。