なぜL/Cカーが増えているのか

通勤時に便利なライナー列車には、なぜロングシートとクロスシートが切り替えられる電車(通称L/Cカー)が多いのでしょうか。通常の特急車両よりもドアの数が多く、座席数が少なくて高級感も薄いのですが…。

そもそもライナー列車導入の理由

増収

単純にライナー料金を徴収するため、増収になります。

300~500円程度のライナー券は乗車券とは別に取っているわけで、客単価は概ね倍増する計算になります。

一列車あたりの定員が減るため、列車の本数は増やさざるを得ませんが、ライナー券を購入しなくても、その客を目的地まで運ぶことには変わりありませんので、倍増した人数を輸送することよりも会社としてはお得です。

なお、運賃を引き上げるのは国の認可が必要なため、運賃以外に収益を求めることは多く見られます。

沿線価値向上

日本の場合は、皆がお金がないから自家用車ではなく電車に乗っている人わけではありません。道路網が貧弱だったり、速さの面で劣るためであり、ある程度の収入があっても電車を使うことは考えられます。そのような人に高級のサービスを導入し、沿線価値を向上させることができます。

もちろん、普段は一般車両を使っていても、荷物が多い時や、疲れている時は楽して帰れるので、そういった人ではなくても価値は向上します。

L/Cカーのメリット

リスク回避になる

L/Cカーを入れる会社の多くは、新しく通勤ライナー列車を導入した会社です。そのため、導入しても通勤ライナー列車が不評で、廃止する可能性が考えられました。

もし、特急専用電車で製造した場合、観光列車としての活用ができないような路線であれば、車両の役目を失ってしまいます。

L/Cカーであれば、ライナー列車を廃止しても、通常の通勤電車として引き続き活用することが可能です。

ライナー列車以外の時間帯にも活用できる

日中時間帯など、ライナーが走らない時間でも、一般電車として有効活用できます。ロングシートモードにすることで、ライナーの付加価値を毀損しないことも可能です。

ダイヤ乱れの対策になる

ダイヤが乱れた場合、特急専用車両は車庫などにしまうことが多いです。乗り降りが多い電車は、特急の少ないドアの数では対応できないからです。

一方、L/Cカーであれば通常の通勤電車として使うことができます。ダイヤが乱れたら通常の通勤電車に切り替え、混雑している中でも多くの乗客を運ぶことができます。沿線に車庫や留置線が不十分な場合でも問題ありません。

予備車を共通化できる

L/Cカーであれば、ライナー列車の予備と、通勤電車の予備を兼用することができ、予備の車両を減らすことができます。

デメリット

ドアの数が多い

ドアの数が3〜4箇所と多く、ドア付近の座席数が減り、収益性が落ちます。

ドアカットで対応しない場合は、冷暖房の効きが悪く、静寂な車内を保ちづらいです。

座り心地が良くない

以前よりは改善しましたが、特急専用車両よりも座り心地はあまり良くないことが多いです。ロングシートでも使うため、設備の制約を大きく受けます。テーブルなどはありません。カップホルダーもないことがあります。

景色が良くない

最近の電車はドアの戸袋部分に窓がありません。これは車体の強度やメンテナンスの問題ですが、戸袋部分にかかる座席では景色を楽しむことができません。特急列車でも稀にありますが、L/Cカーはドアの数が多いため、このような座席が多い傾向にあります。

なお、朝夕のライナー列車で使う場合は、景色を楽しむ人が少ないと割り切ることも可能です。むしろ日光が当たらず、快適という意見もあります。ただ、土休日に観光列車として走らせる場合は問題になります。

誤乗車が発生する

明らかな有料車両感がある特急専用車両に比べ、L/Cカーは時間帯・種別・行き先によって有料と無料が切り替わります。東上線の池袋など、始発駅のホームを分けることも行われていますが、途中駅ではややこしい存在です。

特急専用車両が走っている路線は?

一大観光地や空港アクセスなど

小田急の箱根といった一大観光地を持っている場合や、京成の成田空港など空港アクセスの役割を担っている場合は、日中・土休日も利用を見込めます。この場合、バスなどの競合と差別化を図るため、特急専用車両を導入しています。

各社は、観光利用の少ない朝夕を活用してライナー列車を走らせていますので、ライナー列車はあくまでも副業的な立ち位置とも言えます。そのため、相対的に安価で高級な車両が利用できるとも言えます。

座席が劣っていても、なぜライナー列車は人気なのか。

着席保証

ライナー列車の第一の目的は着席保証です。発車直前でも確実に座れることに大きな価値があります。

停車駅が少ない

停車駅が少なく、比較的短い時間で目的地に到着します。とはいっても元々の時間がそこまで長くないため、後続の優等列車と所要時間が大きく変わることは稀です。ただ、途中駅の乗り降りが少なく、その点で車内が落ち着いていることは良い点です。

相対的に良ければ良い

ライナー列車の競合は、自社の一般電車であるため、一般電車よりも相対的にサービス・環境が良ければ利用されるとも言えます。たとえ、特急専用車両よりも設備が劣っていても、走っていなければ比較されません。

飲酒が許容される

クロスシートになることにより、通勤電車では許されない飲酒が容認されやすい環境に付加価値を感じている人も多いです。

この記事は、2023/3/6にtoremikke.comにて公開されたものを再編集したものです。

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