フォントが使えなかった話/今後の投稿方針 -チェビグローサ 編集裏話(#1~#7)

はじめに

 Dobrý den! (こんにちは!)
 「チェビグローサ」編集と,ささらの台詞の中の人,新橋歌織です.
このNote連載では,「チェビグローサ」の構成や編集の過程に関する裏話や,動画で語り切れなかったうんちくを載せていこうと思います.
  今回は「チェビグローサ」の初回の編集で困ったフォントの問題について.

ハーチェク(č)が使えない

 動画を作成するにあたって一番困ったのは,多くの日本語フォントがチェコ語の記号付き文字[1](例: č, á, ů)に対応していないことでした.
 当初,字幕のテロップには“ぎゃーてーるみねっせんす“,解説欄には“ほのか新丸ゴシック“という個性的な日本語フォントを使う予定だったのですが,そのどれもがハーチェク(čの文字上にあるVのような記号)を表示できないのです.小さなVやOの文字を字幕の上に貼ってそれらしく見せることもできるのですが,作業量が多くなるので断念しました.学術論文などでは英字だけ別フォントにする設定も見受けられますが,動画では編集ソフトAviUtlがその設定に対応していません.結果として,“メイリオ“という汎用性の高いフォントをテロップと解説欄の両方に用いています.
 
 私がよく使っている日本語フォントと,そのフォントで表示できる文字の例を図1に示します.

図1 日本語フォントで表示可能な記号付き外国語の例;
上3つはWindows搭載フォント,下6つはフリーフォント.

 Windows搭載フォントは多くの記号付き文字に対応していますが,フリーフォントでハーチェク(č)に対応しているものはありません.フランス語やスペイン語で用いられるアキュートアクセント付きの文字(á)とドイツ語のウムラウト付き文字(ä),エスツェット(ß)は収録されているフリーフォントがあります.ギリシャ語はαとβだけ収録しているフォントが多かったですが,全文字収録されていないフォントは未収録とみなしました.興味深いことに,全てのフリーフォントがキリル文字(ウクライナ語やマケドニア語で用いられる)に対応しています.日本語の顔文字に使われることが多いからでしょうか( ゚Д゚).
 2136文字の常用漢字を収録する手間に比べればハーチェク(č)の追加など容易いでしょうが,なぜ収録されていないのでしょうか.推測ですが,フォント製作者がハーチェクの存在を認識していないのが理由と考えられます. ハーチェクを用いる言語にはチェコ語,スロバキア語,上ソルブ語,下ソルブ語,セルボクロアチア語,ラトビア語,リトアニア語,エストニア語,そしてカレリア語が挙げられます.しかしどれもが母語話者数1,000万人程度かそれ以下の言語であり,総計しても3,000~4,000万人程度です.2億人以上の母語話者を持つフランス語,1億3千万の母語話者を持つドイツ語と比べると,使用頻度が低いのは無理からぬことです.
 
 なお,英字フォントではラテンアルファベットの記号付き文字はかなり網羅されているようです(図2).これらはサムネイルなどで用いられています.

図2 英字フォントで表記可能な各国語の例; 全てWindows搭載フォント.

そもそもハーチェクとは何者か

 図3に,チェコ語の記号付き文字の一覧を示します.

図3 チェコ語の記号付き文字

 ハーチェク(háček)とは,発音を表す記号です.例えばチェコ語ではcaを「ツァ」と発話し,čaは「チャ」と発音します.ěは「ィエ」という発音の母音ですが,他の7つは子音に当たります.V字型の記号を文字の上に付けますが,dとtの小文字では‘(ダッシュ)のような記号を付けています(文字の上に十分なスペースがないからでしょうか).
チャールカ(čárka)は長母音を表します(a: ア に対してá: アー. の音).スペイン語やポルトガル語でも使われるので,なじみのある方もいるかもしれません.フランス語にも同じ記号がありますが,こちらは母音の発音を変えるものなので役割が違います.クロウジェク(kroužek)も長母音ですが,文頭には来ない特徴があります.
 
 ハーチェクを伴う子音は発音の難易度が高く,CeVIOでは再現できないものも多々あります(投稿者もできません).řは「巻き舌をしながら口をすぼめる」という音で,チェコ語以外の言語にはないことからこの語の特徴として挙げられています.ďやžも日本語で対応する音がなく,全て「じゃ」行で表現する他なさそうです.そもそも巻き舌のrとlの区別を付けられないCeVIOで外語系企画をやることに問題があるかもしれません.しかし,何とか雰囲気は伝わるように,アクセントは元の言語に合わせています.

今後の投稿方針

 この原稿を書いているのはpt. 1投稿前なのですが,pt. 21までの動画はあらかた出来上がっており,pt. 30まではネタが出そろっている状態です.4月中は毎日投稿になると思います.
 そこから先に投稿をするかは,pt. 1~pt. 30の再生回数によります.具体的にいえば1本あたり600再生以下なら絶対に打ち切り,600~1000再生なら検討,1000再生以上なら積極的に続けようかなという所です.(ただし週1更新とかになります).
 この再生数の根拠は,epl値 [%] という独自規格で判定しています.これは
 
epl 値 = ( 動画の総再生時間 / 総編集時間 )×100
   = ( 動画時間 ×再生回数 ÷3 / 総編集時間 ) ×100
 
 という指標で,「投稿者が動画に掛けた手間に対して,視聴者がどれだけ動画を見たか」という割合を表しています.係数の÷3は,平均すると1人の視聴者は動画を1/3しかみないというYouTubeアナリティクスのデータから算出しています.私はeplが100 %以上なら動画を続ける最低限の再生回数が取れているとみなしています.ざっくり言えば,「より少ない手間で多くの再生数が得られたら効率が良い」ということで,単純な再生数比較だと無視される投稿の労力を加味しています.
 私は1動画の収録·裏どり·編集に平均8時間をかけて,動画時間は平均2.5分程度なので,eplが100 % になる動画の再生回数はこれをaとして
 
  100 = ( 2.5 × a ÷ 3 [min]/ 8×60 [min] ) ×100 ; a= 576
 
 だいたい600再生となるわけです.
 
 つまり,続きが見たかったらぜひ皆さん宣伝して広めてください.見たくなかったら積極的にネガキャンしてください.簡単に言えば,そういうことです.

おわりに

 チェビグローサのネタは30個ほど用意できているので,しばらくは投稿を続けられそうです.投稿が途切れそうな一番の要因はモチベーションでしょうか.できる限り長く続けたいところ.
 Děkuji vám, na shledanou! (ありがとうございました,またね!)

[1]…記号付き文字の記号を「ダイアクリティカルマーク(英: Diacritical mark, チェコ語: Diakritické znaménko)」と言いますが,長いため本文では「記号」としました.

おまけ

 ペンギン回で紹介した内容を,海外でありがちなミーム画像にしてみました(図4).

図4 ペンギンの呼び方の各国語比較:
右上は上からポーランド語,ノルウェー語,エストニア語,クロアチア語

 言語マニアが集まっている飲み会のネタにできるので,ぜひご活用ください.

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