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ショートストーリー「ひとつ多く

閏年にちなんでのショートストーリー。

「ひとつ多く」
作 弓川信男

結婚して48年になる老夫婦が居た。
お爺さんは冷たい性格、でもたまに優しい面を見せる。
そんな、たまに優しい所が好きなお婆さん。
2人の結婚記念日は2月29日。
4年に一度の閏年。

(婆)お爺さん、今日は特別な日ですよ。

(爺)何がじゃ。

(婆)私達が結婚した日ですよ。

(爺)そんな事、まだ言っているのか。しょうもない。

(婆)まぁ、冷たい人。閏年なんですよ。4年1度しかない、日がひとつ多いこの日に結婚したんです。
少しは特別だと思いませんか?

(爺)思わんよ。

(婆)まぁ…酷いわね。

(爺)結婚して48年、別にキリが良い訳でもない、それに4年に1度なら忘れるわい。そもそも年を考えろ。そんなハイカラな事を言うとる年でもないじゃろ。

(婆)いいじゃありませんか。せっかくの記念日、今年はひとつ多く喜びを感じましょ。あなたもたまにはハイカラな気分になって下さいな。

(爺)じゃ、この先。命日は2月29日がいいな。

(婆)まぁ…縁起でも悪い!なんでそんな事を…。

(爺)いいじゃないか。4年に1度しか来ないんだろ?

(婆)そうよ…。

(爺)じゃその分、お前が仏壇の前で悲しむ数が減るじゃないか。

(婆)あなた。。。やめて下さい。なんで私が残されると決めつけるんですか!

(爺)あっ…。そうじゃな、じゃワシが残されるのかな?

(婆)いいえ。命日は一緒でいいじゃないですか。

(爺)ははっ(笑)そりゃいい!じゃ~互いに100歳まで生きようか~!

(婆)いいえ。100歳は嫌です。

(爺)じゃ何歳だ?

(婆)ひとつ多く、101歳にしましょ。

(爺)これからも宜しくな…(笑)

END

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