オフィスとマンションの原状回復の違い 経年劣化は誰が負担?

おかげさまです。
不動産コンサルタント蔭山達也です。

オーナーのための不動産チャンネルを
ご覧いただき、ありがとうございます。

今回は、オーナーにとっては常に
関係してくる原状回復、について
お届けします。

原状回復は、
「借主の使用により発生した
建物価値の減少のうち、退去時に
借主の故意・過失や善管注意義務
違反、その他通常の使用を超える
ような利用方法など借主の責任に
よって生じた損耗やキズなどを復
旧すること」です。

善管注意義務とは民法400条に定め
られた「善良なる管理者としての
注意義務」の略で、「通常期待さ
れる注意をもって使用・管理しな
ければならない」といった規定で、
この規定を超える損耗は、住宅の
場合でも借主負担となります。

逆に言えば、
通常使用による住宅の損耗や経年劣化に
関しては、借主の責任ではないので回復
に要する費用を負担する必要はないとも
言えます。

例えば、
住宅の場合で、次のようなケースは
借主の原状回復に該当するでしょうか?

◎陽当りの良い部屋の壁紙が、
日照により変色をしていた

◎冷蔵庫を置いていた後ろの
壁紙が、電気やけで変色していた

これらは、
借主の原状回復には該当しません。

では、次のようなケースは
どうでしょうか?

◎引っ越し作業など家具を
動かす際にできたひっかき傷
◎タバコのヤニによる汚れ

これらは、
借主の原状回復に該当します。

他にも色々なケースはありますが、
分かりやすく言えば、時間の経過
とともに劣化する対象や自然損耗
については貸主、注意を怠って、
あるいは故意に生じた対象は借主、
ということになります。

このあたりは、
マンションやアパートなどの住宅に
おいては、国土交通省が定めたガイ
ドラインがあり、それに準じる形に
なります。

しかし、これは住宅の場合です。

多くのオーナーとテナントが混同
しているのが、オフィスの場合も
住宅と同じ基準、という認識です。

オフィスの原状回復は、
住宅とは異なってきます。

まず、住宅の場合は、
さきほど伝えたとおり、通常損耗や
経年に基づく原状回復は、借主の負
担にはなりません。

居住使用ですから、借主によって使用
方法が大きく異なるということはなく、
通常損耗についての原状回復範囲があ
る程度予想できるため、考え方として
はその分は、あらかじめ賃料に含まれ
ているという捉え方です。

一方、
オフィスの場合だとどうでしょうか。

オフィスの場合、損耗のレベル、
或いは、内装やレイアウトの変更など、
借主の事業規模や業種によって、その
使用方法は大きく変わってきます。

そのため、住宅と異なり、通常損耗や
経年劣化のレベルは予想できません。

また、住宅だと、立場の弱い借主が
賃貸借に関する法律や判例で強く保護
されているのが現状です。

それに対して、
オフィスは、貸主と借主は同等で
あると考えられる傾向があります。

したがって、
両者に明確な力関係がないと判断され、
原状回復義務は入居時の契約内容に基
づくことが妥当である、とされています。

仮に
契約書に何も取り決めがない場合だと、
通常損耗や経年劣化は、住宅と同じで、
貸主が自分の負担で原状回復しなくて
はいけません。

そのため、貸主としては、契約書に、
原状回復の取り決めを必ず記載して
おくべきことがポイントになってき
ます。

住宅だと、
ガイドラインが優先されるため、経年
劣化も借主負担で原状回復する、など
貸主有利な契約書を作っても、その項
目は無効になってしまいますが、オフ
ィスでは有効です。

例えば、
「経年劣化も借主の原状回復工事で
修復する」といった特約や、契約期間
や通常損耗にかかわらず、壁・天井の
全面塗り替え、床のタイルカーペット
張り替えは借主の負担とする、などを
契約書に記載をしておくことで、経年
劣化であっても、借主の負担での原状
回復となります。

そのように契約書に記載している場合は、
過去の判例でも借主の負担とした判決が
出ています。

オフィスビルを持つ貸主は、
その点もよく考えた契約書を作成する
ことが重要になってきます。

しかし、
こういった細かい原状回復の規定を
契約書に記載していないオーナーは
多く、その結果、借主負担でできた
であろう原状回復工事を、貸主の負
担で実施されています。

具体的にどれくらいの負担になるかと
言えば、次のようになります。

◎原状回復工事 総額50万円
(内訳:経年劣化箇所40万円 善管注意義務箇所10万円)
A 契約書に記載なし  貸主負担   50万円
B 契約書に記載あり  貸主負担    0円

オフィス規模にもよりますが、
契約書に細かく記載しておくだけで、
原状回復の際の負担が数十万円単位
抑えられます。

いかがでしょうか。

オフィスビルにおいての原状回復は
住宅と異なり、国土交通省のガイド
ラインがないため、判断が難しいケ
ースも多いです。

だからこそ、契約書には、
具体的に借主負担の内容を最初から
記載しておくことが大切になります。

以上となりますが、
最後までご視聴いただき、
ありがとうございました。

ぜひ、チャンネル登録も
よろしくお願いします。

おかげさまです。蔭山達也でした。

https://www.youtube.com/watch?v=PsCNOmshUnc&t=445s

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