見出し画像

PB黒字化とは

YahooニュースでPB(プライマリーバランス)が2025年度に8000億円程度の黒字化するとの試算を示したと話題になっていましたので、PB黒字化について調べてみました。


1.PB黒字化とは

プライマリーバランス(PB)黒字化とは、その年度の税収等の歳入が、国債の元利払いを除く政策的経費(※)をカバーできる状態を指します。
※国債の元本返済や利子の支払いに充てられる費用を除いた社会保障関係費、公共事業費などの実際の政策実施に必要な経費のこと

つまり、「新規の借金に頼らずにその年の政策的な支出を賄える」ということです。ただ、過去の借金の利払い費は考慮されていないためPBが黒字だったとしても、債務残高は増え続ける可能性がありそうですね。

PB黒字化を達成するための手段としては単純化すると主に二つで、歳出の削減と歳入の増加です。
歳出の削減例:
公務員数の削減や、軍事費、公共事業費、社会保障費などの見直しを行うことで、支出を減少
歳入の増加例:
消費税や所得税、法人税の引き上げなどで税収を増加

2.PB黒字化のメリット・デメリット

メリットとしては、まず第一に前述した新規の借金に頼らずにその年の政策的な支出を賄えるというのが挙げられます。
また副次的な効果としてはPB黒字化への取り組みを示すことで、国債市場における信頼を維持できます。

デメリットとしては、財政健全化を急ぐあまり、必要な財政支出を抑制し過ぎると、経済成長を阻害する可能性があるというのが挙げられます。公共事業を削減したり、増税したりすると経済活動が縮小しそうだなぁということですね。

3.財政健全化の他の指標

代表的なものに公債依存度と債務残高対GDP比というものがあります。
公債依存度:
歳出をどれだけ借金で賄っているかを示す指標
(新規国債発行額 ÷ 歳出総額) × 100
債務残高対GDP比:
国や地方の債務が国内総生産(GDP)に対してどの程度の規模であるかを示す指標
(債務残高 ÷ GDP) × 100

経済持続可能性のためには、債務残高対GDP比を安定的に引き下げることが必要と一般的に言われています。
引き下げのための条件としては以下の2つ。
・名目経済成長率(※)が名目金利(※)を上回ること
・PBが黒字化すること

ですので、PB黒字化というのは債務残高対GDP比引き下げのための片輪のようなものであり最終目標ではないということですね。

名目経済成長率:物価変動を含めた経済の成長率のこと。
=実質経済成長率(物価変動の影響を除いた経済成長率) + インフレ率(物価上昇率)
名目金利:インフレ率を考慮していない表面上の金利のこと。一般的に、長期国債の金利(長期金利)が用いられる。
=実質金利(インフレ率を差し引いた実質的な金利) + 期待インフレ率

では、名目経済成長率が名目金利を上回るための施策としてはどのようなものがあるのでしょうか。

4.名目経済成長率が名目金利を上回るための施策例

名目経済成長率が名目金利を上回るための施策としては以下のようなものがあると言われています。

経済成長促進策:
生産性向上のための投資促進、イノベーションと技術開発の支援、人的資本への投資(教育・職業訓練)、規制緩和による新産業の創出
→実質経済成長率を高め、名目経済成長率の上昇に寄与

適度なインフレ政策:
中央銀行による金融緩和政策の継続、インフレターゲットの設定と達成
→適度なインフレは名目経済成長率を押し上げる効果

金利抑制策:
中央銀行による長期金利のコントロール(イールドカーブ・コントロール)、国債管理政策の最適化
→名目金利の上昇を抑制する効果

財政政策:
成長分野への戦略的な財政支出、民間投資を促す税制優遇措置
→適切な財政政策は経済成長を促進し、名目経済成長率の上昇に寄与

構造改革:
労働市場の柔軟化、企業の新陳代謝促進、デジタル化・グリーン化の推進
→潜在成長率を高め、長期的な経済成長

リスクプレミアムの低減:
財政健全化への取り組み、政策の透明性と予見可能性の向上
→国債のリスクプレミアムを低減し、名目金利の上昇を抑制する効果

ある種、PBの黒字化と相反するようなラインナップですね……
政策というのはバランスが難しいということなのでしょう。

5.まとめ

PB黒字化とは、新規の借金に頼らずにその年の政策的な支出を賄える」状態であり、歳出の削減と歳入の増加によって達成することができるということがわかりました。
また、債務残高対GDP比を安定的に引き下げるための条件の一部でもありました。
そして債務残高対GDP比を安定的に引き下げるためのもう一つの条件は、「名目経済成長率が名目金利を上回ること」であり、そのためには金利を抑制したり経済成長を促す必要があるということもわかりました!

ここまで読んでいただきありがとうございます!
何かのお役に立てれば嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?