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人事ファイルの保存期間

先日、元弊社で働いていた社員から、「いつからいつまで働いていたか正確に書かれている書類が欲しい」という問い合わせを受けました。彼はもう5年以上も前に弊社を退職した人です。なんでも、新しい仕事のためにインフォメーションが必要で、自分の税金の書類はなくした、と言っていました。
自分の税金の書類をなくした、という話は開いた口がふさがりませんが、W-2などの税金の書類をみたところで、正確な雇用開始日・終了日などは書いてありません。安易に元の雇用主に聞いたところで情報をもらえるとは限りません。

そもそも、人事記録の保存期間は米国では雇用を終了してから3年ほどです。官庁や法律によって人事ファイルの保存期間の規定が違いますが、以下のように定められています。

EEOC (Equal Employment Opportunity Commission: 雇用機会均等委員会)
雇用に関する全ての記録は1年保存すること。

ADEA(The Age Discrimination in Employment Act of 1967:1967年雇用者年齢差別禁止法)
給料支払いの記録は3年、福利厚生の記録は1年保存すること。

FLSA (Fair Labor Standards Act:公正労働基準法)
給料支払いの記録は3年、他の人事記録(給料のレート、人事評価など)は2年保存すること。
(参考文献: “Record Keeping Requirements” by U.S Equal Employment Opportunity Commission”: https://www.eeoc.gov/employers/recordkeeping-requirements#:~:text=EEOC%20Regulations%20require%20that%20employers,from%20the%20date%20of%20termination. )

家を購入する時に組むモーゲージ(住宅ローン)の給料の照会も過去3年のみです。離職してから3年以上たつ元従業員の記録をいつまでも残しておく必要はないのです。

むしろ、いつまでも過去の従業員の人事書類を取っておくのは危険です。差別などの法律は、時代と共に変わってきています。昔問題がなかったことが現在では深刻な問題となる場合もあります。極端な話ですが、何かのときに20年以上も前に離職した従業員の人事記録がでてきて、そこに現代では差別と取られる記録が書いてあったとすると、今からでも過去にさかのぼって問題になる場合もあります。

過去の従業員だけではなく、面接を受けに来た候補者の面接記録も3年ほどは保存する必要があります。「面接を受けた時点で差別を受けた」と訴えられた場合に、反論をするために面接記録を提出する必要があることもあります。

もちろん、新規に従業員を採用するにあたり、信用調査をした記録も保存しておく必要があります。信用調査の結果、不採用となった人の記録も、なぜ不採用になったのか、明確にしておきましょう。

しかし、もう破棄してしまった記録については、調べる方法はありません。法的に雇用主が人事記録を保存しておく期間はその従業員が離職してから3年です。

雇用主の方は、まず、離職した従業員の人事ファイルの保存期間のポリシーを作りましょう。例え人事に関する調査が入ったとしても、「人事ファイルの保存期間は3年です」というポリシーがあれば、保存期間を過ぎた書類に関しては責任を問われることはありません。その上で、定期的に数か月に一度でも人事ファイルの棚卸をして、必要のない書類は処分しましょう。
従業員の方々は、自分の過去の雇用記録は自分できちんと保存しましょう。安易に元の雇用主に聞いたところで、雇用記録の保存期間が過ぎていて情報を手に入れられない場合があります。

なお、ご存じだとは思いますが、人事ファイルと医療関係の書類(FMLA:Family Medical Leave Act(家族介護休業法)の申請書も含む)とを一緒に保存してはいけません。医療関係の書類は別にファイルを作り、鍵のかかるところに保存しましょう。

The Stellar Journal 2021年5月掲載
https://www.stellarrisk.com/ja/jobofferletter/?fbclid=IwY2xjawEdxm9leHRuA2FlbQIxMAABHRj3sLjAudDNn2RdD6TcOkA2gJw6wrxuZE4m6ySW6hz7tJgQIlhFD6jBMQ_aem_hff7HKoHo27B4caTgPqlOQ

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