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高岡英夫 『高岡英夫の「総合呼吸法」 呼吸五輪書/呼吸の達人を目指せ! 』

☆mediopos2739  2022.5.18

息を吸って
ひとは生まれ
息を吐いて
死んでゆくように

ひとの生は
呼吸のあいだに
展開される

そんなことが
語られることも多く

とくに東洋においては
さまざまな呼吸法が
行法として実践されていたりもするが

シュタイナーも修行法において
呼吸が用いられるのはもっぱら東洋であり
どちらかというと古代的な行法として位置づけているが
少なくとも西洋的な修行法においては
呼吸法に対してはどちらかというと否定的である

かつて古代においては霊的な知恵は
呼吸によって得られていたが
今日ではそこにルシファー的なものが
人体に入り込みやすくなるのだという

そうした危険性もあり
現代では(西洋的な身体性において)
支配的になっている感覚知覚と思考による
修行が適しているということのようだ
おそらくオイリュトミーもその方向性で
身体性をとらえているところがあり
呼吸法をそのなかに特別に組み入れていたりはしない

本書はそうした西洋的な身体性における呼吸ではなく
東洋的な身体性における呼吸法の
メカニズムを明らかにすることで
驚くほど総合的にまとめあげられ
この日本において身体性にかかわる際に
呼吸法に関して意識しておく必要のある視点が
この一冊のなかに詳細かつ総合的に論じられている

といってもぼく個人が実践的に理解できるのは
いまだほんのわずかな部分でしかなく
本書からとりあげてみたのは
「無柱中心軸理論」と
「呼吸意識」における「モーション」である

興味深いのは
身体と身体意識
呼吸と呼吸意識とは
異なる次元に存在しているというところである

「無柱中心軸理論」においては
心柱不要という技術をもった五重塔の例を引きながら
背骨というような場所が中心となるのではなく
「実体として中心になりそうなものは何もない空間」にある
「第3軸と呼んでいるセンターの通る基本ポジション」が
中心軸になるのだという

つまり物質的な身体や呼吸ではなく
いってみればエーテル的身体における中心を軸として
呼吸法が実践的にとらえられているのだろう

その意味では西洋的な行法において
感覚知覚と思考による認識が問題になる際においても
実質的にはそれを単純に物質的な身体のなかに
その基盤をもとめているということではなさそうだ

とはいえ西洋の場合は呼吸を通じてアストラル体に影響する
ルシファー的なものを排するために
東洋的な柔軟な身体性ではなく
身体性を構築するための堅固な身体性を
個として形成することが求められたともいえる
西洋的な「論理」や「言語」
「思考」といったもののありようも
それに即して建築物のような固定的な姿をとるようになった

そしてそうしたソリッドな身体性のなかで
それを宇宙的に展開し得るようにと
オイリュトミーのようなものが必要とされたのだろうが
おそらく東洋的な日本においては
そうしたものとはある意味逆の方向性をもった
意識的な呼吸法による身体感覚を
つくりあげていくのが適しているように思われる

その意味で以下に引用しているような
「呼吸意識」における「モーション」
つまり「呼吸意識のメカニズムに則って、
呼吸・呼吸意識によって身体の動き、行動、
人間関係の改善を図る」呼吸法が重要になる

従ってそうした呼吸法の実践においては
オイリュトミー的な外的で動的なものを用いるのとは逆に
内的で静的ななかにおける微細な動きのなかで
展開される必要があるのだといえそうだ
(現代日本に特有の舞踏もおそらくその流れに近しい)

本書はたとえばこうしたことなどを実践的に考えていくための
豊かな示唆が満載されている一冊となっていて興味は尽きない

■高岡英夫
 『高岡英夫の「総合呼吸法」 呼吸五輪書/呼吸の達人を目指せ! 』
 (ビーエービージャパン. 2021/12)

(「無柱中心軸理論」より)

「無柱中心軸理論というのは、文字通り中心になる柱はいらないという考え方です。由緒あるお寺に行くと、五重塔というのがあると思いますが、あの五重塔には、当然通し柱(心柱)があるとお思いでしょう。でもなかには通し柱がない五重塔というのもあるのです。つまり心柱不要という技術があるということです。それは実態としての柱はなくても、同じ妖婆五重塔は建てられるということです。それは非常に高度な建て方ですが、けっして建物として脆弱なわけではなく、長年にわたり台風や地震に耐えられる構造をしているのです。

 また建築コストの点から考えれば、巨大な心柱が不要になるということは、非常にコストパフォーマンスが高くなります。

 こうした無柱中心軸構造というものが、五重塔のような建物だけでなく、人間の身体についても存在するということを、均等呼吸と軸の理論と方法を統合する研究を経て、私は発見、確立したのです。それが「全方向均等軸呼吸」です。

 つまり背骨は中心ではないということです。

 ではその背骨の代わりに中心となるのはどこかというと、まさに私が第3軸と呼んでいるセンターの通る基本ポジションなのです。この第3軸は、背骨の前端部からやや前方で、実体として中心になりそうなものは何もない空間です。そこにセンターという身体意識が通って、それが中心軸となるので、無柱中心軸と呼ぶのです。これはまさに五重塔と同じ無柱中心軸論理、メカニズムが人間にも存在しうるということで、逆にいえば方法として存在させなければならないという結論に到達したわけです。

 この発見によって、「ベース」で紹介するように、胸や腹だけでなく、背中や腰でも自由自在に深い呼吸をするということが、必然的にメカニズムとして確立され、そのことによってより多くの人が真に優れた呼吸というものを体現することで、人類の全分野に共通する真に優れた本質的能力(本質力)を習得できるようになったのです。

(「呼吸意識で身体運動の質が変わる」より)

「私の総合呼吸法の第4講座に「モーション」という講座があります。これは動作というものの質が、息を吸って吐くという。呼吸現象に重なって成立する意識=呼吸意識のモビリティ(動き」と方向性の組み合わせによって、身体運動の質というものが劇的に変わるという論理・法則を元に作り上げたメソッドです。

 この「モーション」も私自身の人間観察、身体運動の観察、あるいは自分自身の身体の観察から発見したものです。(…)

 この「モーション」についてはさらなる広がりが隠されていて、呼吸意識のモビリティと方向性組み合わせというものが、人間関係と極めて密接に関わりあっているということがわかっています。」

(第2章・水の巻:総合呼吸法 第一教程 第4講座「運動制御呼吸法・モーション」より)

「「運動制御呼吸法・モーション」は、呼吸と、身体運動・動作・行動・人間関係を含む人のあらゆる「動き」との関係を研究する中で私が発見した「呼吸意識」がテーマになっています。

 呼吸法「モーション」を実践するには「呼吸意識」の理解が不可欠です。「呼吸意識」を理解していただくために、その前提となる「身体意識」について確認しておきます。

 人間の意識系と成立するものは、視覚を基盤とする視覚意識、聴覚を中心基盤とする聴覚意識、そして体性感覚を基盤とする体性感覚的意識の3つがあり、3つ目の体性感覚的意識の学問的略称概念を、私は「身体意識」と命名しました。

 「身体意識」の代表は「センター」で、背骨の前に形成される直線状の身体意識です。身体を解剖した時に背骨の前に実体として見つかるわけではありませんが、センターをはじめとした「身体意識」は、構造(ストラクチャー)・質(クオリティ)・運動(モビリティ)を持つ機能的な構造体です。「呼吸意識」は、吸う・吐くという呼吸運動に伴って形成される身体意識のことです。

 身体意識と身体の関係と同様に、呼吸意識も実際の呼吸とは異なる次元で存在しています。実際の呼吸に同調することもあれば、異なる存在の仕方、つまり実際の呼吸では息を吐いていながら、呼吸意識では吸っているということもあり得ます。

 呼吸運動は、身体運動の中でも「吐く・吐き出す」「吸う・吸い込む」等に二分できる「呼/吸」という特異な性質を持っており(精確には「ためる/抜ける」という性質もあります)、これが呼吸意識の重要な構成要素となります。

 呼吸意識は、実際の呼吸が潜在的に繰り返されることで、ストラクチャー・クオリティ・モビリティを備えた機能的構造体として形成されていくことから、たいていは本人もほぼ完全に無自覚のまま形成されます。自覚的に呼吸法に取り組んでいる場合でも、呼吸意識の論理構造を意識していなければ、呼吸意識の形成という点においては無意図的にならざるを得ません。

 というのは、私たちが意図的に呼吸法のトレーニングをしている時だけでなく、日常生活、寝ている時の形成に影響を及ぼしているからです。

 実は、呼吸意識を自覚的に鍛えるための方法こそが、この「モーション」なのです。呼吸意識を鍛えるためには、まずその存在を認識し、論理構造をきちんと理解することが重要です。

 たとえば、いわゆる押しの強い人は、他人に話しかける時に、実際の呼吸で息を吐くと同時に呼吸意識においても身体の全面で呼息することによって、相手に威圧感を与えています。身体の全面で呼息することが常態となっている人は、テニスなあ、ボレーで球の勢いを殺すことが苦手で、ドロップショットを失敗することが多いはずです。

 一方、複数の人の中で話をする際に、呼吸意識において全身で呼息している人は、チームスポーツでは仲間と調和し、仲間の能力を引き出し、息の合ったプレイができるはずです。

 こういったことはどこでも観察される「呼吸意識現象」ですが、周りの人だけでなく当の本人ですら呼吸意識のメカニズムに気づいていないため、たいていは人柄、癖、センスといった言葉で片づけられてしまいます。

 「モーション」は、呼吸意識のメカニズムに則って、呼吸・呼吸意識によって身体の動き、行動、人間関係の改善を図ることを狙いとした呼吸法大系なのです。」
 

《目次》

○はじめに
壮大なる呼吸法体系への道程

○序にかえて
今、呼吸法の意義を改めて問う
“呼吸法から武術そして呼吸法開眼へ”
著者インタビュー

○第1章 地の巻
総合呼吸法 概論

○第2章 水の巻
総合呼吸法 第一教程
1 第1講座 基礎呼吸法 ベース
2 第2講座 精神力制御呼吸法 コントロール
3 第3講座 疲労回復呼吸法 リカバリー
4 第4講座 運動制御呼吸法 モーション
5 第5講座 股関節強化呼吸法 ヒンジ
6 第6講座 細胞呼吸法 セル

○第3章 火の巻
総合呼吸法 第二教程
1 第7講座 睡眠呼吸法 スリープ
2 第8講座 呼吸筋鍛錬呼吸法 マッスル
3 第9講座 精神力強化呼吸法 ストレングス
4 第10講座 局面呼吸法 フェイズ
5 第11講座 質性呼吸法 クオリティ
6 第12講座 感性呼吸法 センス

○第4章 風の巻
総合呼吸法 第三教程
1 第13講座 刺通緩解呼吸法 ピアース
2 第14講座 三元締上呼吸法 トライアングル
3 第15講座 垂腰体呼吸法 ドループ
4 第16講座 内臓透圧呼吸法 インターナル
5 第17講座 肺膜呼吸法 メンブラン
6 第18講座 裏日本呼吸法 リア

○第5章 空の巻
呼吸の“頂上”4つの呼吸法
1 全身体内溶緩通軸呼吸法
2 銀河細胞呼吸法
3 亜呼吸空間呼吸法(亜空間呼吸法)
4 銀河宇宙周回通軸呼吸法

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