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とよさき かんじ『街なか葉めくり虫さんぽ/識れば見えてくる 虫たちのワンダーランド』

☆mediopos2809  2022.7.27

著者のとよさきかんじ氏のプロフィールをみると
「日本野鳥の会」ならぬ
「日本野虫の会」という屋号で
嫌われがちな虫の魅力を紹介し
生物多様性の魅力につなげる活動をしているそうだが
多摩美術大学絵画科油画専攻卒ということなので
驚くほど素晴らしい虫の造形や
色彩の妙などに惹かれているところもあるのだろう

本書にも書かれているように
著者は子供の頃は虫好きだったのが
思春期には虫から遠ざかり
大人になってから虫の世界にカムバックしたとのこと

そういえばぼくのばあいと似ていて
小さな頃に四国の西南部の田舎で育ったのもあり
ずいぶん虫や魚を追いかけて遊んだものの
今のようにあらためて虫を観察しはじめたのは
ここ十年ほど前からのことだ

ちいさい頃もっていた昆虫図鑑は
小さなポケット図鑑のようなもので
典型的な虫だけが載っているだけのものだったが
こうしてあらためて虫を観察しはじめると
あまりのも多種多様にわたる虫を識別するのは
そんなに簡単なことではないのがわかってくる

現在手元にある図鑑は種類ごとの図鑑も含め
ずいぶんと充実した内容のものがたくさんあるが
それでも撮影した虫たちの名前を調べるとなると
よくわからないことも多い

そんななかで本書がまた加わっのだが
詳細な図鑑というわけではないけれど
季節ごとに見られる虫たちを
なにより重要な食草との関係を背景に
ぞれぞれの虫たちの見つけ方が
わかりやすく解説されていて楽しい

「街なかの自然といわれても、
名前を知らない植物はただの緑色で、
正体のわからない虫は
不快な黒い点としか思えないかもしれません。
でも、目に映る植物が一種でもわかると散歩が楽しくなり、
何の虫かがわかると自然が怖くなくなります。」
とあるように

たとえばまったく知らないでいた外国の言葉が
学んでくると少しずつでもわかってくるように
虫たちや植物たちも観察を続けそれを調べていくと
「見慣れた風景が、今までと違った解像度をもって立ち上がる」
ということがリアルに感じられるようになる

見ることや聞くことや考えること
そんなすべての感覚の解像度を上げることで
それまでは見えす聞こえなかった
そして考えられなかったものが姿を現してくるのは
不思議なまでに感動的な体験になる

■とよさき かんじ
 『街なか葉めくり虫さんぽ/識れば見えてくる 虫たちのワンダーランド』
 (ベレ出版 2022/7)

「私は子供の頃は虫が大好きだったのですが、思春期に虫から遠ざかってしまい、大人になってから虫の世界にカムバックしました。市街地に住んでいるので、こんな街なかに虫なんていないだろうと思い込んでいたのですが、花や葉の周辺を探すと、いろいろな虫たちが見つかることに驚きました。はじめのうちは、出会った虫をひたすら撮影して名前を調べていたのですが、数年だたつうちに、「あれ? なんでこの虫はここにいるんだろう?」と不思議に思うようになりました。そこで植物や花の種類を調べてみたところ、「偶然だと思っていたけど、この植物が食草だったのか!」とか、「この花、めっちゃ虫に人気だな……!」など、しだいに植物と虫をセットで観察することの面白さに目覚めていきました。「身近な街なかの自然に、こんなドラマがあるなんて……ひとりで楽しむのはもったいない!」——そんな思いが、この本をつくるきっかけになりました。

虫には、他の生き物を捕食するもの(カマキリやクモなど)と、植物食のもの(チョウやセミ、カブトムシなど)がおり、なかにはどちらも食べるもの(アリやススメバチなど)もいます。植物には花や葉、樹液や果実など、虫のエサ資源となるたくさんの要素があります。また虫の体を外的から隠したり、すみかや産卵場所となって、虫の暮らしを支える存在でもあります。植物も虫に食べられるだけではなく、虫を利用して身を守ったり、受粉して種子をつくったりしています。この本では、身近な植物を利用する(植物に利用される)虫たちの生きざまを、季節ごとに紹介していきたいと思っています。

現代に生きる私たちは、多くの刺激や情報に囲まれて忙しく暮らしています。街なかの自然といわれても、名前を知らない植物はただの緑色で、正体のわからない虫は不快な黒い点としか思えないかもしれません。でも、目に映る植物が一種でもわかると散歩が楽しくなり、何の虫かがわかると自然が怖くなくなります。「あの花は去年より早く咲いている気がする」「このハチは危なくないうやつだ」そんな体験をすると、脳内物質がブワーッと出て多幸感に包まれます。この世界の一片を自分の眼で「識ること」、それは見慣れた風景が、今までと違った解像度をもって立ち上がる、ときめきの瞬間なのです。」


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