僕がマーダーミステリーを作ったワケ

ども、NOVAKです。

実は、最近マーダーミステリーを自作してみました。

で、このnoteはこちらの3部構成でお届けします。

なぜ僕が作ろうと思ったのか

前提として、僕は、主に趣味は謎解き、でした。でした、というのは、今も謎解きは行ってますが、圧倒的にマーダーミステリーの方が数は増えました。

話は、初めて王府百年プレイしたころ、のことです。2019年5月の頭でした。そのころ、もう周りの謎解きの仲間や、謎解き制作者の方は、こぞって、マーダーミステリー初体験に興奮していました。そのころ多くの人が言ってました。「これは作ってみたい!」と。僕もそう思ってました。

その後、かなり早い段階で、謎制作者であった、ぺよん潤さんが、マーダーミステリーを発表しました。そのころ思ったものです。これは日本の謎制作者がこぞってマーダーミステリーを作ることになるのでは!なんて楽しみな未来だ!と。

正直、自分も作れるのでは?とそのころから思ってました。僕は、epinさんに代表される、ミステリーイベントを作るのは、難しいと感じています。自分自身もその手のイベントお手伝いしたことありますし、それに近いものも作ったので、難しさはよくわかります。なぜなら、ミステリーイベントは、論理の構築と、かなり高い難易度とバランスと納得性で「気づきポイント」を用意する必要があります。それがすべて、といっても過言ではないからです。そして、舞台、や、リアルイベントである、という情報コントロールの難しさもあります。

個人的に、それはマジックのタネを作ることに近いのように思います。もちろん、前述のことは、マーダーミステリーにも僕は重要な要素だと思ってます。

ただ、実際40数作やってきて、ミステリーイベントなみにそれらが用意されてるのは、ほんの数作だと感じてます。しかし、不思議なことに、それがなくても、いや、それが弱くても、「楽しい」し、そことは関係なく何かしら「面白い」のです。

これはマーダーミステリーの構造にもよるのですが、あまりに流動的な要素が多すぎて、そこまで綿密かつギリギリのバランスでは成立しえない、そう考えています。

前置きが長くなりました。だから僕は、みんなこれなら作れるんじゃね?と。

だが、どうでしょう?全然ぺよんさん以降、謎制作者によるマーダーミステリー制作のフォロワーが現れませんでした。

え?なんでみんな作らないんだろう。あんなに謎解きがんがんみんな作ってたじゃない!あんなすごいの作れる人たちならちゃちゃっと作っちゃうんじゃないの!?それに、一人とかでも作れるんじゃないの?これなら。僕は不思議になりました。その間に、謎制作者じゃない人たちが作ったマーダーミステリーはどんどん世に出てきています。なんでだ……。

この謎を解くために(僕は謎を解きたいので!)僕は決めました。僕が作ってみよう、と。そしてこっそり縛りを決めました。基本マーダーミステリー制作経験者でなく、謎クラスタだけ呼んでいったん完成までいけるかやってみよう。

実際作ってみてどうだったのか

上記のtweetの時点で、舞台設定、と、メイントリック案、だけはぼんやり頭にありました。何もテキストは書いてはいません。これは書けるんじゃね?そう思ってました。年末年始あれば帰省しててもプロットは書きあげられるでしょう。

実際、年末年始でプロットは書きあがりました。スマホでevernoteで書いただけですが。システムもだいたい決まって、悪くない気がします。ちょっと肉付けが足りない気がしますが、あとは肉付けすればいけるのではないかな?仕事忙しいから作業時間ほとんどとれないけど、印刷物もカードリストとハンドアウト作るだけでしょ?いけるいける。

そう思ったので、もうこれはテストプレイの日程決めて自分を追い込もうと思って、決めました、1/18。およそ2週間後です。

ただ、ここまで順調に見えた制作工程に、かげりが見え始めました。それは肉付け一回して、脳内でプレイヤー視点シミュレーションし始めたときです。

この作品、アイディアや構成は「面白い」と思う。これはそれなりに自信ある。でもこれ「楽しい」のか?

どんな制作でもあるあるです。でも、初めて作るジャンルだと、この不安めちゃくちゃでかくなります。マーダーミステリーは推理であるが故に、比較的時間が長めです。その時間を満たすほどの楽しさがあるのかどうか。

ちょっと良くわからないまま、ちょこちょこ要素足したりしてると時間は簡単に尽き、雑なカード(めっちゃ字が小さくて読みにくかったり)で、テストプレイ50%版を迎えました。正直、50%版だと言いつつ、意外とうまくいって、なんだ、ちょっといじればいけるじゃん、になったりしないかな、と淡い期待をいだいてました。

結果、ちゃんと想定通り50%でしたw ほんと最初にプレイしていただいた方々には不出来なものを遊んでいただきまして、感謝です。まあ、プレイアビリティの問題は大きかったけど、これは改善できる。どちらかというと、問題だったのは、不安の的中した「楽しさの薄さ」でした。

正直、肉付けはあとでできる、と考えたのですが、これがとにかく難しかった。僕のお仕事はデジタルゲームのゲームデザイナーで、今までの業務内容的に、シナリオの肉付けは、プロット作成よりメインの仕事に近いものだったので、苦労しないと思ってました。

ただ、肉付けが、経験してきたそれとは違うんですよね。制約のなかでの枝葉じゃないのです。単にフレーバーつけるだけでは、プレイヤーが議論するネタにならないのです。プレイヤーのミッションに帰結させないとゲームデザインとして、読むのに時間かかるだけのノイズになりかねない。きちんとマーダーミステリーにするには、ゲームのフレーバーではなく、ゲーム→設定→ゲームに回帰させる。という作業が必要になるのです。これがもうとてもとても重要、かつ、とても難しいです。これはもちろん他のゲームでもあることなのですが、マーダーミステリーの場合、これをしないと、そもそも参加者に共有されない可能性も高くなる。それでは肉にならない。

その後、テストプレイのたびに、要素を追加し、楽しさはあがっていった、とは思います。が、どちらかというと、コンセプト先行の印象はいなめないかもしれません。なので「癖がある」というのは今後の参加の方のために注意書きとして残しました。

また、この肉付けの難しさは、1本プロットを作った後なので、整合性に問題のないネタを出すのが難しい、という点と、その難しさのわりに、実りの薄さもあり一人で作っているのでモチベーションがあまりあがらない、という部分もありました。

さて、そんなこんなで、なんとか、好みは分かれるだろうけども、楽しい、面白いと言ってはもらえる感じにはなり、知り合い限定公開にはこぎつけました。

これから作るかたに

で、当初の目的であった、謎制作者がマーダーミステリーを作る、という視点で考えるとどうだったのか、という話をしていきます。ちなみに僕謎制作者というにはおこがましい程度しか作ってないですけど、NOVAKの名前出さずに作ったやつとか、周りの話聞いてとかそういったこと経験踏まえてのお話です。

メイントリックを考えるのはそこまで難しくない

とはいえ、「謎制作者が大謎を作る難度に比べて同じぐらい」という難しさです。どこで気づきポイントを作りどういう伏線を貼るか、というノウハウはそう違わないと思います。でも、それはこんだけ謎解き公演作ってる人多いのだから、やれるのでは?と思います。大謎思いついてから公演作る人はそれでいいし、考えてりゃ大謎あとでも作れる、という人はそれでもアリだと思います。なので、

◎謎制作者はマーダーミステリー制作に向いてる!

メインプロット・構成を考えるのも難しくはない。ただし……

大謎があれば、小謎やプロットや構成はもうできたようなもんですから、くみ上げてくだけです。そのくみ上げてく中で膨らむ部分はあるので、なかなかこの工程は楽しいです。そもそも、謎のために、システムだっていくらだって変えていい。

なので

◎謎制作者はマーダーミステリー制作に向いてる!

ただし……

メインプロットは、最初から人数分書く覚悟が必要

1本のメインプロットを書くのは難しくないです。ただ、それを8人の視点で書く難しさを最初に覚悟する必要があります。そこが一番大変なのと、これを1本書ききってから肉付け、と考えると、モチベーションや、完成したものを動かす難しさから、ハードルが高くなります。で、ここが……

×謎制作者が作ろうとすると視点の違うメインプロット本数に苦労する

ただ、謎制作経験者はこうなったときのコツを知ってるはず。謎制作者の多くは「謎制作団体」にいるのです。

マーダーミステリーは、ひょっとすると謎制作団体に向いてるかも

これは仮説です。謎制作って、1人じゃなくて、まわりの制作と作るが故に整理されるところがあります。マーダーミステリーは、とてもとても1人で作りやすい(ように見える)ものです。ただ、現状見ての通り、成功してるマーダーミステリーのいくつかは、監修やディレクションと、シナリオが分けられてる場合が多いです。これは、1人で作るのに限界がある、という部分を示唆してると思います。

結局、現代の多面的なエンタメ制作で、ブレストなしで作り続けることはそもそも難しい、というのことなのかもしれない。

一方、ランドルフ・ローレンスの追憶、とCosmo Murder Grand Hotelという僕の大好きな傑作2つは、作りこみにモチベーションが落ちない二人の鬼才がほぼ独力で生み出したものだと思います。ここまで一人でやり切れる人は、一人で作るべきだと思います。そして、そんな人はこんなブログ見てなくてももう作ってると思います。

ただ、そうやって生み出された傑作を見ると、ひとつのものさしの監修体制よりも、いろんなところでいろんなブレストや、調整が行われるほうが、ゆたかな文化を作っていくと思います。それを成し遂げたのが謎解き文化だったはず。最初からビジネスになったわけではないでしょう。でも、作りたいものを仲間たちとわいわい作ってったらビジネスになった、という制作者は多いはず。そういうケースがマーダーミステリーでももっと増えるといいな、と願ってます。

なので、このブログでの結論です。

謎制作者、いや、謎制作団体の方々、マーダーミステリー作ってみませんか?

そして遊ばせてください!!



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