【ウォー・オブ・シャドウズ、ザ・アウトカム】#1 (忍殺二次創作)

01010100010010010101010101……

アルゴスが天下網の一瞬の乱れを補足した時、既にその乱れの原因は天下網から消え失せていた。白い古代装束の論理肉体が確認されたが、それ以外になんの異常も、いや1つだけあった。アルゴスはその名前を共有する。「イグザイラー」。天下網に一瞬だけ現れた、謎の存在。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

サント・デル・フジサワ命名教会と距離も近いハカバで、デモニックグレイヴはギターを鳴らしていた。「それじゃあ聞いてくれ」彼は「生きるか死ぬか」と刻まれたハカイシに語りかけている。「モータルの友人が作った曲だ……お前等の耳にあうか、わかんねぇけど」

デモニックグレイヴはエレキギターで少し切なげな入りを弾き始めた。だんだんと曲調が激しいものへと変わる。ゴウランガ!ニンジャ聴力に優れているものならば、これがネオサイタマが炎上したあの日を一瞬で想起させる曲である事が分かるであろう。どこか悲しく、どこか熱い曲だ。

「罪!/俺の犯した罪か?/いいや違うね/これは他人のナイフ/マグロが死んだ/炎が上がる/それはまるでデーモンの仕業/だが俺は/罰を受けた/暗い人生、センタ試験に落ちマケグミの日々/俺は見た、罪の記憶を!」泥水めいたデスヴォイスがハカバに響き渡り…おお、見よ! 

「アバー」「アバー」ナムアミダブツ!無数のハカイシの下から死体が這いずり出てきたではないか!アンデッド達は青白く光り、デモニックグレイヴの歌に合わせて腕を揺らしていく。「おう、お目覚めだぜファン達」デモニックグレイヴがガスマスクメンポから静かに言った。

「アバー」「でし!」「アバー」ハカバはたちまちアンデッド達で埋め尽くされ、ジゴクめいたライブ会場を作り上げる!ブッダ!なんたる生の冒涜!……だが、よく見てほしい。もし読者の方々がニンジャであるならば見える筈だ。アンデッドに紛れた、一人の小さな少女の姿を。

「アバー」「でし!」「アバー」ナムアミダブツ!もし読者の方々の中にゾンビーニンジャのと交戦経験がある者ならば分かるであろう、少女がゾンビーニンジャであることを!「ア?」デモニックグレイヴが歌をやめる。途端、アンデッド達はハカイシに帰る。少女が残された。

デモニックグレイヴは少女を二度見した。「どういうことだ」彼は唸り、目を擦った。だが、彼を見つめる少女は消えない。「どうしてやめたでしか!」少女が怒っている。「エ」デモニックグレイヴは呆気にとられた。そして数秒後に、彼女がニンジャであると気がついた。

「ドーモ、デモニックグレイヴです」スキンヘッドのニンジャは、自分とかなり体格と身長さのあるニンジャにアイサツをした。相手も返した。「ドーモ!はじめまして、ロトンテイルでし!」ロトンテイルはにこやかに笑った。「お、おう……」デモニックグレイヴは苦笑した。

キキーッ!ハカバに車が止まる音がした。振り返るとそこには武装SUVがあった。運転手はブラッディスウェットだ。後部座席にはジューテイオンが座っている。車内でブラッディスウェットはデモニックグレイヴを見て「おい、あいつ、マジか?」と笑った。

「なンだよ」ジューテイオンが窓に目をやる。そして腹を抱えて笑い出した。デモニックグレイヴは車内のアトモスフィアを感じ取るとデーモンめいた形相で車へ向かっていった。コワイ!「ザッケンナコラー!」デモニックグレイヴはヤクザズラングを吐きながらドアを開けた。

「だってよ、お前よ」ブラッディスウェットはクランンクションを叩きながら笑っていた。「アッコラー?」「お前、ペドフィリアだったのか?」ジューテイオンが爆笑しながら聞いた。「ちげぇよ!」デモニックグレイヴがジューテイオンを殴った。「グワーッ!」

デモニックグレイヴは憤慨しながら助手席に乗った。「教会まで行くンだよ!」彼が怒号を発すると、ブラッディスウェットは「アイ、アイ」と車を走らせた。「ん?」殴られたジューテイオンは後部座席の隣を見る。……見よ!ロトンテイルがいるではないか!「ワッザ!?」

道中。「お前、そういうシュミがあったのか?」ジューテイオンは武装SUVの後部座席隣に座るロトンテイルを一瞥し、デモニックグレイヴに懐疑的な目を向けた。「バカ!スゴイ・バカ!ライブに紛れてたンだ。一体どっから来たのかは知らねえが」「ホントか?」「ホントだ」 

「つうかいつの間にか乗ってなかったか?」ブラッディスウェットが呆れた声で言う。「ニンジャだな……」ジューテイオンが推測を叩き出した。「実際正解だぜジューテイオン=サン。ゾンビーニンジャだ。俺にはワカル」「ペドファイルだから?」「ちげえ!」

ジューテイオンはパック・スシを食べながら訪ねた。「コンキョはなんだよ、コンキョは」「俺が前戦ったゾンビーと色々似てンだよ」デモニックグレイヴは窓の外を眺めながら言った。「ゾンビーって、ツキジにいるんだろ?なんでこんなところに」「知らねえよ」

数分後。彼らはサント・デル・フジサワ命名教会前についていた。「薄暗いな」ジューテイオンが眺める。彼らは武装SUVから出る。「アレ?」ジューテイオンが、先ほど迄居たロトンテイルがまた消えている事に気がつく。「あのチビ、どっかいったぞ」「エ」

そのとき、彼らの耳に叱り声が聞こえてきた。「ダメでしょう!」彼らの目に映ったのは、黒と銀のニンジャ装束を纏ったニンジャであった。「ご、ごめんでし……」その前にはロトンテイルもいる。「地下から抜け出しては鳴らないとあれほど!」ニンジャはロトンテイルを叱った。

「ン?」黒銀のニンジャが三人に気がつくと、前転ジャンプでエントリーし、アイサツした。「ドーモ、エボニーアワビです。」エボニーアワビと名乗ったニンジャは三人を一瞥した。「成る程、ニンジャですね」エボニーアワビは冷静に言う。三人はアイサツを返した。

「ドーモ、ブラッディスウェットです」「ドーモ、デモニックグレイヴです」「ドーモ、ジューテイオンです」エボニーアワビはうなずいた。「……何か、用件が?」「いや、神父様に聞きたいことがあってよ」デモニックグレイヴが静かに言った。エボニーアワビは一瞬黙り込んだ。

「分かりました。ついてきてください」エボニーアワビはロトンテイルと三人を連れて教会の中へと入ってゆく。教会に入ると、すぐ前に神父めいた男が見えた。神父は真っ白なウロコニンジャ装束に包んだ長身のニンジャと、なんらかの談話に勤しんでいるようであった。 

「ゴッドファーザー=サン」エボニーアワビが声をかけた。「おや、ドーモ」ゴッドファーザー、そう呼ばれた神父は振り向いた。その顔には「神」「父」のメンポが。彼はメンポを外さず、器用に菓子を食べていた。ウロコニンジャ装束のニンジャ「ムシュスー」もその顔を向けた。

「ドーモ」三人は簡易的なアイサツをすると、教会の長椅子に座った。「私にお話と聞きましたが」ゴッドファーザーは静かな声で訪ねた。「アァ」デモニックグレイヴは携帯用UNIX端末を見せながら答えた。「単刀直入に聞くんだが、イグザイラーってのは、なんだ」

ゴッドファーザーは静かに目を閉じた。「お答えかねます」「そりゃないぜ神父=サンよ。こいつは……イグザイラーはニンジャだ!こいつは言っていたぞ、自分のことをアンタに伝えてほしいッてな」デモニックグレイヴが食って掛かる。他の二人は菓子を食べていた。

「……」ゴッドファーザーが立ち上がる。「もう一度聞くぜゴッドファーザー=サン。イグザイラーってのは、なんだ」ゴッドファーザーは携帯UNIX端末を一瞥した。「ついてきてください」彼はデモニックグレイヴについてくるように促した。他二人はチャを飲んでいた。

デモニックグレイヴが連れられて来たのは教会の書庫であった。「これを」ゴッドファーザーが、電源が入りっぱなしのUNIXを指差した。そこにはカプセルめいたプログラムファイルに眠る白い古代装束に身を包んだ紫色の髪のニンジャがいた。「コイツが……」「ええ」 

ゴッドファーザーがデモニックグレイヴを見る。「1つお聞きしますが、貴方の端末にいつイグザイラー=サンは現れましたか?」「今日の朝だ」彼は答えた。「フゥーム」ゴッドファーザーが考える仕草をした。イグザイラー。そう呼ばれるニンジャは電子の海で眠っている。

◇◇◇◇◇◇

今宵も重金属酸性雨が降り注いでいた。ネオサイタマの中心部、巨大な墓石めいて鎮座するのはカスミガセキ・ジグラット。そのジグラット内のネコソギファンド社オフィスで、ハーフの少年は葉巻をふかしてモニタ内を見つめていた。側近のヤクザニンジャが吸い殻を受け止める。

この少年こそネコソギ・ファンド社のCEOでありニンジャ組織「アマクダリ・セクト」の総帥であるラオモト・チバその人である。そして吸い殻を受け止めたのは彼の側近であり、ニンジャであるネヴァーモアであった。チバは不満そうな顔で3Dのボンボリモニタを見つめた。

ターン!チバの集中を途切らせるようにライオンに「支配力」と書かれた黒いフスマが開く。現れたのは白いスーツに身を包んだ容姿端麗な男…執事のアガメムノンであった。ネヴァーモアと、オフィス内に居たクローンヤクザが一斉に彼に剣呑な視線を向ける。

「ご機嫌麗しう、ラオモト=サン」アガメムノンはチバにブッダの微笑みめいた笑みを向けた。「ご用があるとお聞きしましたが?」チバは平静を装いつつ答える。「……天下網に現れたこのイグザイラーというのは、なんだ?」彼は葉巻を口から離し、アガメムノンに向けた。 

「ああ、ソレですか」アガメムノンは大して気にしていないような素振りで言った。「アルゴスの目からも逃れた……一体なんなんだ?」チバは再び聞く。「単刀直入に申し上げますと」アガメムノンは一息ついて答える。「ニンジャです」その言葉にチバは眉を動かした。

「……そのイグザイラーというニンジャがどこへ消えた?」「そうですね」アガメムノンは再び一息つく。「その前にお聞きしますが。このイグザイラーが脅威になるとお考えで?」アガメムノンの言葉に、ネヴァーモアが再び剣呑な目を向ける。「……なんだと?」チバは返した。 

「お言葉ですが、イグザイラーがアマクダリの脅威になるとは到底考えられません」アガメムノンは柔和な笑みを浮かべながら言う。「だが奴は天下網、強いてはアルゴスの追跡をも振り切った」チバは立ち上がる。「これを脅威として考えずにどう考えろと言う?」

「成る程。一理はありますね」アガメムノンは相も変わらず笑みを崩さず言った。「お答えしましょうか」チバが目を細める。「イグザイラーの潜伏場所はネオサイタマから外れます。サント・デル・フジサワ命名教会なる教会にいるようで」「……成る程な」

アガメムノンはモニタを見る。「教会が複数のニンジャを抱えている事が先ほど分かりましたので、アクシスを派遣致しました」まるでチバの言う事が分かっているかのようにアガメムノンは続ける。「万が一の為の奥の手も用意してあります」「……」チバは彼を睨んだ。

◇◇◇◇◇◇

パンキチ・ディストリクト近辺。重金属酸性雨に濡れるハイウェイを、改造リキシャーが走り抜けていた。リキシャーを引くのはニンジャである。顔の半分をミラーゴーグルで覆ったそのニンジャの右上腕部にはアマクダリ・セクトのシンボルが入った腕章が結ばれている。

改造リキシャーは二階建て構造である。一階の客車には二名のニンジャが座っている。一人はエメラルド色の外骨格装束に身を包む。もう一人は下半身がヤクザスーツを着、アマクダリのシンボルが刻み込まれたメンポをしたヤクザニンジャであった。

二階は特殊な造りとなっており、大量のクナイ・ダートや投擲用の武器が丁寧に置かれている。その真ん中にオリーブ色のニンジャ装束に身を包んだニンジャがアグラをしている。当然、装束の胸にはアマクダリのシンボルが刻み込まれている。

「命名教会か」エメラルド色のニンジャ、エメラルドブルースが呟いた。「オヌシはどう思う。エンマソルジャー=サン」エンマソルジャーと呼ばれたヤクザニンジャは、半開きにしたYシャツから覗く牛頭馬頭のイレズミを一瞥し、答えた。「……知らねェなァ」

「少なくとも」二階でアグラをしていたニンジャが口を開いた。「強力なニンジャがいることに変わりはない」エメラルドブルースはそれを聞くと、肩をすくめた。「お前のそういう言葉は、当るんだよな。バリスタ=サン」バリスタと呼ばれたニンジャは、それを聞いて目を閉じた。

「お前はどうだ、エンデューロ=サン」エメラルドブルースがリキシャーを引くニンジャに尋ねた。「興味が無いな」エンデューロは静かに答えた。「そうかい……」エメラルドブルースは二度肩を竦めた。「俺のビズは、お前達を運ぶ事だ」「帰りもだがな」バリスタが割り込む。

「そろそろネオサイタマを抜ける」エンデューロが言う。「そうかァ」エンマソルジャーが腕を組み、メンポの奥でにやりと笑った。「作戦通りにやれと、二人とも」バリスタがクナイ・ダートを構えながら言う。「わかっている」エメラルドブルースは古の強者めいて答えた。

その時である!オオオオーン!突如背後から聞こえるのは大型車のエンジン音!「何だ!」エンマソルジャーがバリスタに警戒を促す。バリスタは後方を見る。おお……ゴウランガ!それは水牛戦車を彷彿とさせるような巨大な武装トラック!「教会の奴らに気がつかれたのか!?」 

「何」エンデューロが少し表情を強張らせた。自分に追従する武装トラック有り。まさか。その運転席には山のように盛り上がった筋肉を持つニンジャだ!ニンジャは運転しながらアイサツをした。「ドーモ。アマクダリのみなさん。ハタモトライノです。……敵が貴様らとはな!」

「一人じゃない!」バリスタが叫ぶ。武装トラックのコンテナにもう一人のニンジャあり!巨大な段ボールの上に仁王立ちしているではないか!ニンジャはヤリを構えてアイサツした。「同じくドーモ、アマクダリのみなさん。チカテツです」オオオーン!トラックが速度を上げる! 

「屈強なプレゼントだ。受け取れ」チカテツが巨大な段ボールを槍を用いて投げた!その中から鎧装束のニンジャが姿を現し、リキシャー後方に降り立った。そのニンジャが抱えるのは巨大なバイオ丸太!ニンジャは静かにアイサツした。「ドーモ。バタリングラムです」

「情報が漏れているだと?」エンマソルジャーがバタリングラムの前に立ちはだかりながらバリスタに訪ねた。「可能性はある。今は迎撃をするしかあるまい」エメラルドブルースが叫ぶ「エンデューロ=サン!もっと速度をあげろ!」「アイ、アイ」

バタリングラムはリキシャーを引くエンデューロを見た。彼は一瞬沈黙すると、インカムを使ってハタモトライノへと通信を寄越した。「リキシャーを引くのはエンデューロ=サンだ!もっと速度を上げろ!」それを聞いたハタモトライノは「ヨロコンデ!」とアクセルを全開にした!

「イヤーッ!」エメラルドブルースがトラックのコンテナに乗り移った。「久しいなチカテツ=サン。ソウカイヤに雇われていた以来か」エメラルドブルースが笑う。「アマクダリに属するとは、落ちたものだよ……!」チカテツがヤリを構える!

そしてバリスタはハタモトライノに目をつけながらクナイ・ダートを構える。(((何故だ?)))彼は情報が漏れている可能性を信じた。だが彼は気付かなかったのだ。これが事前にアマクダリが襲来してくる事を知っていたゴッドファーザーの対策の1つであるという事を!

……さあ、イクサだ!

「ドーモ、我々はアマクダリ・セクトです。私はバリスタです」バリスタがリキシャーの二階からアイサツした。「エメラルドブルースです」「エンマソルジャーです」続いて二人のニンジャがアイサツをした。オオオーン!武装トラックが唸りを上げてリキシャーを追いかける!

ハタモトライノはハンドルに備わった「機関な」のボタンを押す。武装トラックの側面がパカリと開き、中から現れたのは物々しいガトリングガン!バリスタが叫ぶ!「エンデューロ=サン!防護壁用意!」「アイ、アイ」エンデューロはリキシャーハンドルの防護ボタンを押す。

BRTATATATATATATATATATATATATAT!!ガトリングガンが凶暴なバイオライオンをもネギトロに変える鉄鋼弾を高速で吐き出す!ガコーン!それがリキシャーに当る直前、リキシャーの壁からスライドして現れたのは対砲防護壁だ!

それがイクサの合図であった!「イヤーッ!」エメラルドブルースが超自然オーラを纏ったポン・パンチを繰り出す!「イヤーッ!」チカテツはスウェイでそれを避けると、死角からヤリを突き出す「イヤーッ!」エメラルドブルースはそれをブリッジ回避! 

「イヤーッ!」チカテツはブリッジ回避したエメラルドブルースの腹を突くべくヤリを振り下ろす!「イヤーッ!」エメラルドブルースはコンテナの上を転がり回避!しかし落ちかかる!「イヤーッ!」しかし彼は懐のチェーンブレイドを展開し、それをコンテナに引っ掛ける!

「イヤーッ!」エメラルドブルースはコンテナにしがみついて復帰!「イヤーッ!」チカテツがそこを狙ってヤリを突き刺しにいく!「イヤーッ!」エメラルドブルースはチェーンブレイドをムチ状態から剣状態に戻し、これを防ぐ!「イヤーッ!」チカテツが追撃!

「イヤーッ!」エメラルドブルースがヤリの追撃をかわし、チェーンブレイドを振るう!それは縄めいてチカテツを縛り上げる「ウカツ!」「イヤーッ!」エメラルドブルースはそれを思い切り引いた!纏わり付いたチェーンブレイドが一気に引かれ、チカテツをずたずたにしていく! 

「グワーッ!」チカテツが全身から血を噴出しながらコンテナを転がる。「イヤーッ!」エメラルドブルースはザンシンをきめた。「ぐ!」「どうした!ジツを使わねば俺は倒せんぞ」エメラルドブルースが挑発する。「大丈夫かチ…グワーッ!?」通信機からバタリングラムの声!

「イヤーッ!」エンマソルジャーは鋼鉄メンポから息を吐き、ザンシンを決めた。「ザッケンナコラー!」エンマソルジャーはよろめくバタリングラムの腹を殴打!「グワーッ!」バタリングラムが悶える!「スッゾオラー!」更に追撃!「イヤーッ!」バタリングラムも反撃! 

両者のカラテがぶつかり合う!「イヤーッ!」バタリングラムはバイオ丸太をエンマソルジャーの下半身めがけて振るう!エンマソルジャーのカラテはボックス・カラテであり、かつてこのカラテを使うソウカイ・ニンジャの存在を想起したバタリングラムは咄嗟に弱点を狙ったのだ!

「バカカテメッコラー!」コワイ!エンマソルジャーは恐ろしいヤクザスラングを放つと、振るわれたバイオ丸太を踏みつけた!「なんと!」バタリングラムが目を見開く!「おおかた足元が死角とでも思ったんだろうが……」エンマソルジャーがメンポにタバコを差し込む。

「テコン!」エンマソルジャーは謎めいたシャウト共にバタリングラムを踏みつけた!「グワーッ!」「テコンドーッて知ってるか?知らねえよな。パンキドーの影に隠れちまったからよ……」エンマソルジャーはタバコの煙を吐き出す。バタリングラムがもがく。

「イヤーッ!」バタリングラムは突如逆立ちをするとそこからカラテキックを繰り出す!「イヤーッ!」「ヌゥーッ!」エンマソルジャーが腕を交差して受け止める!「イヤーッ!」バタリングラムはなんとバイオ丸太を放棄!丸太は武装トラックに回収され、コンテナに押し込まれた。

「パンキドーではない……!」バタリングラムがオーソドックスなカラテを構えながら言う。「あァ、そうだな。俺はパンキドーが嫌いなもんでよ。そもそもサボターの野郎が気に食わなかったんだが」エンマソルジャーが笑う。「懐かしい名だ…だが!」バタリングラムが仕掛ける!

「イヤーッ!」エンマソルジャーが無骨なカラテパンチで迎撃!再びカラテがぶつかり合う!「イーヤヤヤヤ!」エンマソルジャーはボックス・カラテ特有の高速パンチを繰り出す!「イヤーッ!イヤーッ!グワーッ!」バタリングラムはこれを捌くも、一撃食らってしまう。 

「ボックス・カラテは足下が弱点だろ?イヤーッ!」エンマソルジャーが前蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」バタリングラムがそれを受け止める!「テコンドーは足を使うんだ。パンキドーとは違うがな」「……ボックス・カラテの弱点を補ったか!」「あぁそうだァ!」邪悪!

「イヤーッ!」バタリングラムがカラテパンチを繰り出す!「ザッケンナコラー!」エンマソルジャーがそれを回避し、バタリングラムの顔を強打!「グワーッ!」バタリングラムが蹌踉めく!アブナイ!「アッコラー?」エンマソルジャーはタバコを押し付けた。「グワーッ!」 

「避けろ、エンマソルジャー=サン!」エメラルドブルースの声!「ア?」エンマソルジャーはザンシンをきめつつ声を聞き取った。避けろ?「イヤーッ!」「グワーッ!?」アンブッシュ!突如としてエンマソルジャーの脚にヤリが突き刺さる!

チカテツだ!彼はエメラルドブルースとのイクサを放棄し、トラックからリキシャーへと飛び移ったのだ!「イヤーッ!」その隙を狙いバタリングラムがエンマソルジャーに頭突き!「グワーッ!?」エンマソルジャーはリキシャーから弾き飛ばされ、ハイウェイに叩き付けられる! 

「ドグサレッガー!」エンマソルジャーは叩き付けられた衝撃でハイウェイから転落!「エンマソルジャー=サン!」エメラルドブルースが叫ぶ!「ヨソミヲスルナー!イヤーッ!」チカテツ!ソニック・カラテによる衝撃波が襲いかかってくる!「グワーッ!」

「ハァーッ!ハァーッ!」チカテツはザンシンを決めた。彼は再びトラックへと飛び移る。「バリスタ=サン!何をやっている!援護を!」「そう上手くいくものか!」おお、ナムアミダブツ!バリスタは武装トラックから発射されるバンブー・ミサイルの迎撃で援護が出来ない!

形勢逆転!バタリングラムはリキシャー前部へと身を移らせる。「ドーモ、エンデューロ=サン。バタリングラムです」「ドーモ、バタリングラム=サン。エンデューロです」エンデューロはリキシャーを引きながらアイサツした。「リキシャーを止めてもらおうか」「出来んな」

「イヤーッ!」バタリングラムがパンチを繰り出す!しかし!「イヤーッ!」更なるアンブッシュだ!「グワーッ!」バタリングラムが弾き飛ばされ、リキシャーの座席に叩き付けられる。「ドーモ、ダークサザエです」アンブッシュ者はアイサツした。装束にはアマクダリシンボル!

「ヌゥーッ!」バタリングラムが起き上がる。通信!「バタリングラム=サン!トラックに戻れ!一度引き上げる!」「しかし!」「いいから戻れ!」ハタモトライノの怒号が響く「ク…オタッシャデー!」バタリングラムがリキシャーからトラックへ飛び移る。

「イヤーッ!」入れ替わりにエメラルドブルースがリキシャーへと飛ぶ。武装トラックはスピードを緩め、リキシャーとの距離を離していく。「いいのか?」チカテツが訪ねる。「ゴッドファーザー=サンからの指示だ」ハタモトライノが重々しい声で言った。 

リキシャー内ではエメラルドブルースがダークサザエを訝しみながら言った。「お前が出てきたのか」「……出動命令が出た」アマクダリ・アクシスであるダークサザエの得物「ウミノサチ」のルーンカタカナが刻まれた剣は、彼の横に立てかけられている。「思わぬ妨害にはいった」

「後れをとったが、もうすぐ教会につくぞ」ハイウェイを抜けたリキシャー、そしてそれを引くエンデューロが言う。「エンマソルジャー=サンを失ったのは痛いが、ダークサザエ=サンがタイミング良く来てくれた」バリスタがクナイ・ダートを磨きながら言う。 

◇◇◇◇◇◇

サント・デル・フジサワ命名教会。デモニックグレイヴはゴッドファーザーからデータ素子を受け取る。彼を含めたロックなニンジャ達は武装SUVに乗り教会を去っていく。ムシュスーがゴッドファーザーに訪ねる。「敵が来ます」それに対し、神父は。「ええ、わかっていますよ」

その傍らにエボニーアワビが立った。「アマクダリの求めるものは既に、デモニックグレイヴ=サン達が持っていきましたしね」それは勿論、データ素子だ。「……あの中には、何が?」ムシュスーが訪ねる。「……イグザイラー=サンの論理肉体がおさめられています」

◇◇◇◇◇◇

重金属酸性雨は、いつものようにネオサイタマに降り注いでいた。PVCビニール傘をしたヨタモノ達が、ハイウェイの下に降り積もった瓦礫を眺めている。「何?」「なんか落ちてきたんだってよ」「コッエー」「ZBRを決めたトラックじゃないの?」

…ナムアミダブツ!この瓦礫はZBRをキメた運転手が事故を起こした形跡ではない!瓦礫が一瞬動く。「ワッザ?」「今動いたよね?」ヨタモノ達がざわめく。そのとき!瓦礫を突き破って何かがヨタモノ達の前に現れた!ニンジャだ!「アイエエエ!?ニンジャナンデ!?」

「ハァーッ…ハァーッ…」グレーのヤクザスーツを着たそのニンジャは、メンポにタバコを差し込みながらゆっくりとハイウェイの下を歩き始めた。脚から流れる血が痛々しい。「……殺す!」ニンジャ…エンマソルジャーが憎悪の目を燃えあがらせながら、雨の中を歩いた。

【ウォー・オブ・シャドウズ、ザ・アウトカム】#1 おわり #2 に続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?