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芸術においてのアニメーション—天使のたまご—

≪概要≫

監督 押井守
出演 根津甚八, 兵藤まこ(1)

≪あらすじ≫


水没した都市の中で、たまごを抱き続ける少女。彼女は、それが天使のたまごであると信じていた。奇怪な戦車から降り立った、巨大な銃を抱えた少年。彼は、夢で見た“鳥”を探していた。廃墟のような街で、ふたりの間にはほのかな共感が芽生えたかに見えたが、ある晩、少年は少女のたまごを砕いてしまう--。(2)

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≪はじめに≫ 

 Amazon primeでこの作品が追加されていた。以前Twitterで幻想的な映画を探していた時にこれを勧めていた人がいたので是非見てみたいと思ったのでこの作品を手に取った。

 初めに言っておかなければないのはこの作品は内容があるのかないのかであろう。いろいろな媒体でこの作品は徐長でつまらないという意見を必ず目にするがそれはある側面ではそうであると断言できる。しかし敢えて徐長にすることで話自体が興ざめにさせることなくこの雰囲気が保っているとも言える。


≪独自性≫

【芸術としてのアニメーション】

 日本のアニメーションは大衆向けの娯楽に振り切っている作品が多いがこの作品は美しい背景、繊細な動きの感情を表現、幻想的なフレーズ、物語の限りない終局の雰囲気で芸術的な要素が備わっている。これがこの作品が他のものと一線を画している理由である。

【静かに見せる物語】

 前述したように物語全体が徐長している様に見えるがこれは話の展開が非常にゆっくりであり、確かな変化があるのか分からないからである。その為話が進んでいるか分からず、もし話が展開されたら急に話が進んでいる様に見える。この静かな展開に付いて行けるかどうかでこの作品を楽しめるか否かも比例する。


≪技術力≫

【セル画の美しい美術】

 この作品の美点である背景や人物の色彩をセル画が活かしている。例えば薄い濁りのある色彩の中で青が輝く世界もセル画ならではの表現である。セル画自体が暗い色彩で良い印象を受けないという人もこの作品自体の雰囲気と見事に組み合わさっているという事を判断出来るだろう。

【髪の毛一本一本動きさえ】

 動きさえも美しい。この作品の主人公の少女の髪の毛が長く、そのキャラクターが動くときその髪も動く。そしてその髪の動き一本一本書いて動かしている。魚を捕らえるときの人の騒めき、緊張感も表現している。確かな技量を感じられる。

【少しずつ動く神秘的なストーリー】

 この作品はノアの箱舟をベースにしているがどこまでを参考にし、どこがオリジナル展開なのか分からない非常に難解な作品である。その為の考察が捗る作品ではある。そしてそれを理解しなくても表面上のストーリーの少女が大人になっていく過程も無理なく描いておりそれだけでも満足できる。


≪構成≫

【退屈で何が言いたいのか分からない】

 何度も述べておりこの作品は非常にゆっくりで何を言いたいのか良く分からない。内容だけで判断すると時間の割に内容が薄いと感じるだろう。それ故アクションなどの娯楽的な要素を求める人には退屈だろう。反対に幻想的な雰囲気を楽しめる人には楽しめる作品となっている。

 そしてこの数少ない物語の要素、箱舟や魚などの暗喩が出てくるがこれが何かはっきり判断する事を望んでいないものがおり、その層がこの映画が好きになる層である。明確に言えば人の好みによってこの作品評価が分かれる。

 勿論この層は只暗喩がたくさんある物語であるのなら何でも称賛するというわけではない。この暗喩が作品全体の雰囲気を壊さず幻想的にしている為称賛するのであって『メトロポリス』の様な一場面ごと美しいカットで音楽も上手く演出されているがキャラクターの情緒が表現することが出来ず、興醒めにする稚拙な展開をすれば称賛しないのである。

≪おわりに≫

 この作品は幻想映画だと言っても過言ではない。意味があるのか分からないストーリー、象徴的でありながら何を意味をしているのか分からない単語。まるで単語の響きで選んでるよう。これが幻想文学の要素を強めている。よって幻想文学に好意を示す人にはたまらない作品であるが他の者には首を傾げる作品なのは事実であると考えられる。


≪註≫

(1)、(2)、ヘッダー画像以下画損転載、引用

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0952CRPJV/ref=atv_wl_hom_c_unkc_1_11


(3)以下から画像転載


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