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感情って奴がその振幅の中で少しずつ進歩するしかないんだ—メトロポリス—

概要

監督
りんたろう
原作
手塚治虫
脚本
大友克洋


あらすじ

人類とロボットが共存する巨大都市メトロポリス──その繁栄は、高度に発達した科学文明を享受する地上都市と、取り残され貧困にあえぐ地下都市から成り立っていた。やがて、この都市に生きる人間とロボット、そして地上都市と地下世界との間に一触即発の対立が始まる。その激しい混乱の中、生まれた人造人間ティマ。ロボットと人類の、そしてメトロポリスそのものの運命が自分に託されていることを、彼女はまだ知らない……。(1)

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特徴

手塚治虫の初期の作品を当時の最新技術作り上げる

 本作『メトロポリス』は原作が手塚治虫初期の読み切り作品である。それを映画化するにあたり話の構成なども手を加えたものになり原作を読む事でで別の側面から楽しめることが出来る。勿論原作の漫画を読んでいなくても問題ない。漫画版の方はこちらのサイトをご覧になられた方が詳しい事を書かれているので参照されてほしい。


初期のカートゥーンとジャズ、CG技術の融合

 この作品の特徴としては初期のカートゥーンのようなキャラクターデザインと動きである。ティマを除いてこの作品のキャラクターはリアルより離れたデフォルメ調で主に巨大な掌や足などにその特徴がみられる。そして動きなども滑らかで日本特有に止め絵の多さなども比較的少ない。何よりアイリスアウトが使われるているのでその特徴が強く現れている。



良い点

ティマの神秘的な描写

 この作品のキーパーソンに人造人間のティマが置かれている。彼女は人造人間であることを忘れ、ケンイチと関わり感情を露わにしていく。その人造人間の人間離れした超越的な雰囲気を外見の美しさでも表そうとしているのが伺える。始めのぼんやりとした何も考えていない内面の印象も何処か超越的な存在だと予感させ、何より都市の地下の労働階級の人々が住む町で空を見上げるティマのシーンは天使を思わせる。


壮麗なメトロポリス

 ティマの描写だけでなくこの作品全体で描写の煌びやかが伺える。メトロポリスの繁栄した街並み、警察署での対談のシーンや地下の労働階級の住処なども美術的センスの高さが見て取れる。色彩もその場面ごとに設計されており、薄暗い雰囲気と明るい雰囲気を両方兼ね備え、そしてその如何なる場面でもティマの金髪が良く映える。

 ワンシーンワンシーンが美術や動きが素晴らしいのでどのシーンを切り取っても見栄が良い。個人的に好きな部分は雪の降る中レッド公がティマを迎えに来るシーンである。


悪い点

多すぎる登場人物

 物語の欠点として登場人物が多すぎる事である。映画という短い尺の中で登場人物たちが創作者の手によって都合よく行動し、そのおかげでその登場人物自体に上手く感情移入が出来ない。そして過多な登場人物の為に話が精錬された印象とは程遠くなり、徐長した間延びした展開だと思わさられる。


軽率な行動をし続けるキャラクター

 前述したように登場人物が多すぎるが故に物語の展開として登場人物が安易な行動に出ることが多い。この作品では主にヒゲオヤジがその最たる例であろう。ケンイチがいなくなっても大事にせず警察の援助もしない。そして労働階級の鬱憤が堪っている中、その目の敵にされているロボットのペロを置いて行くなど軽率という他ない。


なぜティマは人を減らす道を選んだのか

 終盤でティマが自分の役割を思い出し、超人の間の椅子に座る事を選び人間を減らそうと目論むが何故彼女がその選択をしたのか分からない。恐らく人間は争いを起こし続ける、今も労働階級がロボットを排他的で反乱を起す、そしてそれさえも利用し自分だけ成り上がろうとしている上流階級の人々をいらない存在だと表現したかったのであろうがティマは直接そのシーンを見ていないし、間接的にそれを聞き、その決断に至るほどの巻所の変化が起こったとは描写されていない。それを私達観客に熱心に見せているがティマの心情としては説明できていない。


感想

脚本だけが悪い

 大友克洋とりんたろうがタッグを組んだ「スチームボーイ」でも同じように思ったが作品としては脚本以外はアニメ史に残る様な大作である。それ故に脚本が練り込まれていないせいでこの様な無残な姿になったと言える。物語として無駄な部分を省き、必要な線だけ辿ってい行けば良作となったはずである。


ロボットと人間

 恐らくこの主題としてはロボットと人間の関りから人間とはどのような存在か表現したかったのであろう。実際はケンイチとティマの逃亡とその背景によくわからない争いがあったとしか言えない。登場人物がこのように動かしたいことだけが伝わりそれの表現が出来ておらず、労働階級の反乱も中途半端に終わり、レッド公がしたかったことも良く分からない。ただ映像美を楽しむものだけになっている。


(註)

(1)以下からあらすじ引用

(2)以下から画像転

ヘッダー以下から画像転載


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