見出し画像

クトゥルーのゴシック怪奇—這い寄る混沌 新訳クトゥルー神話コレクション3—

概要

訳:森瀬 繚 著:H.P.ラヴクラフト 絵:中央東口(1)

あらすじ

 怪奇小説作家H・P・ラヴクラフトが創始し、人類史以前より地球へと飛来した邪神たちが齎す根源的な恐怖を描いた架空の神話大系〈クトゥルー神話〉。
 その新訳コレクション第3集となる本書では、古代エジプトの影の中より現れた不吉な興行師の脅威を描く「ナイアルラトホテプ」、その異名を冠する表題作「這い寄る混沌」をはじめ、平原に蠢く邪神の恐怖にまつわる「イグの呪い」、邪神像の犇めく館で異形の神への礼拝が響く「蝋人形館の恐怖」、そして異端教派〈星の智慧派〉に深入りしてしまった怪奇作家の運命を描く「闇の跳梁者」と、ラヴクラフト自身が手がけた“原神話”から、彼の悪夢と筆から生まれた神々を巡る10篇を収録。
 宇宙の深奥、冒涜的な笛と太鼓が響く中、無貌の神が嗤笑する――!
〔収録作品〕
・ナイアルラトホテプ Nyarlathotep
・這い寄る混沌 The Crawling Chaos
・壁の中の鼠 The Rats in the Walls
・最後のテスト The Last Test (元作品「科学の犠牲」併録)
・イグの呪い The Curse of Yig
・電気処刑器 The Electric Executioner(元作品「自動処刑器」併録)
・墳丘(雑誌掲載版)
・石の男 The Man of Stone
・蝋人形館の恐怖 The Horror in the Museum
・闇の跳梁者 The Haunter of the Dark(2)

画像1

(3)

各話あらすじ、特徴


ナイアルラトホテプ

 ナイアルラトホテプが町にやってきた。好奇心に惹かれた人々がナイアルラトホテプに会うべく集会に行くとそこで映像が流され始める。それは世界が暗黒の脅威と戦っているもので見ている間に奇妙な出来事が起こり始める。

這い寄る混沌

 流行りの疫病に罹った語り手に苦痛を和らげるために投与された阿片。それにより悪夢が襲い掛かる。

壁の中の鼠

 先祖が住んでいたする屋敷に移住した老人。そこでは奇妙な噂があり、引っ越し当時、探ってはいたが気にはしていなかった。しかし何日か経つと壁の中を駆けまわる鼠の音がし始める。


最後のテスト 元作品:科学の犠牲

 熱病に侵された人々の為に日々進歩を続ける医療にささげる兄妹たち。しかし兄には奇妙な助手がついており、診療所には奇妙な噂が付きまとっていた。

イグの呪い

 蛇の神、イグ。夫は予言により殺されるということで蛇を酷く恐れていた。アメリカの開拓時代、移住した夫婦を待ち受ける蛇の悲劇。

電気処刑器 元作品:自動処刑器

 ある重大な書類を盗んだ男を見つけ出すために派遣された語り手。詳しい事情を聞くために現地に赴くために列車を乗り継いでいた。そこで出会った狂人に命を握らされてしまう。

墳丘(雑誌掲載版)

 「イグの呪い」につながる同じ土地での物語。第一集『クトゥルーの呼び声』の「墳丘」の雑誌掲載時の改稿版。見比べれると第一集の「墳丘」の完成度の高さがうかがえる。

石の男

 彫刻家の友人の失踪の手がかりを探しに来たある村での奇妙な男の所業と女の復讐。

蝋人形館の恐怖

 恐ろしい蝋人形を作る男に惹かれた語り手は親しくなるが見下していたそれを知っていた男は見返すために傑作を語り手に見せることにした。

闇の跳梁者 

 いつも窓から眺めていた黒い教会、筆が進まず気分転換にそこを訪ねる。廃墟となった教会の最上階で奇妙な水晶を見つけ、そこを覗き込むと奇妙な刎頸が次々と浮かび上がってくる。その日から誰かに見られている気がしてならなかった。


良い点

 それぞれテーマを決めてそれに合わせた作品を収録していく形式の新訳クトゥルー神話コレクションであり、今回はH・P・ラヴクラストの作品に出てくる神々を言及する現実世界の作品群となっており、今回より一層、ゴシックと怪奇の雰囲気が楽しめるものとなっている。

悪い点

 言及の為、神々達の直接的な描写が少ない為、超越的な存在との邂逅や対決を望む人には物足りない作品である。

まとめ

 今回よりゴシック、怪奇色が強いがより万人に読みやすいものとなっている。H・P・ラヴクラフトの世界観を楽しみたい人には物足りないと思うが嗜好は強く出ており、彼自身がクトゥルーを始めとする神話群をどの様に捉えていた分かるので、ラヴクラフトの理解を深めたい人にはお勧めである。



(註)

(1)、(2)、(3)以下から画像転載、あらすじ引用



講談社当該商品ページ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?