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甘い香りにつつまれて

秋になると、無性に焼菓子をつくりたくなる。
〇〇の秋といえば、私は焼菓子の秋だ。

小学生の頃からお菓子作りが大好きで、将来の進路を決めるときも、パティシエの道を本気で考えたこともある。
結局、お菓子の道へは進まなかったが、製菓学校の通信講座を受講してみたり、お菓子作りの単発レッスンを受けたりしながら、趣味としてほそぼそと続けてきた。

秋は製菓材料のバター、卵の取り扱いがしやすい季節、ちょっと肌寒くなったキッチンをオーブンが
甘い香りとともにあたためてくれるのも心地よい。

あの頃の秋


夫と暮らしはじめた頃、季節はちょうど秋だった。
毎晩残業続きの夫を待つ時間、今よりもたくさんの時間があったあの頃、自分のオーブンを持てた喜びもあり、夕食の片づけ後は毎晩のようにお菓子をつくっていた。

クッキー、マドレーヌ、アップルパイ、スイートポテト…。焼菓子のオンパレード。
仕事おわりで疲れているはずなのに、なぜか
お菓子だけは作ることができた。 
もくもくと手を動かし、組み立て、完成させる。何にもとらわれずに取り組めたあの時間は、1日の終わりのリフレッシュになっていたのかもしれない。
食後のデザートにお菓子を出すと、喜ぶ夫の笑顔を
見るのも嬉しかった。

現在は…

今は秋がやってきても、あの頃のように焼菓子を作る機会は減ってしまった。
家中を元気いっぱい駆け回る息子、落ち着いて
作業するのはなかなか難しい。
誕生日は毎年手作りケーキでお祝いしたいと
思っていたが、なかなか理想通りにはいかない
日々だ。

ふと、テレビでクッキー型をみた息子から
「クッキーをつくりたい!」と久しぶりの
リクエストが届いた。 

息子とのお菓子作りは、毎回、テーブルの上も息子も粉だらけになったり、卵の殻でいっぱいになったボウルと格闘したり、1人のお菓子作りでは
ありえないことが満載でたくさんのエネルギーを使う。

なかなかすべての状況を楽しめず、苦笑いを浮かべることもしばしばだが、
息子の出来上がりを楽しみにオーブンをのぞきこむ姿、出来たてのお菓子を満点の笑顔でほおばる姿は何よりも愛おしい。

重い腰をあげて、秋がすぎてしまわぬうちに、
週末、久しぶりに幸せな甘い香りをキッチンをむかえようか。

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