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歩くはやさで暮らす

 おはようございます。

 布団をあげ、布団を干し、コーヒーを淹れ、趣味の園芸を見ながら昨夜のアップルパイを温めてコーヒーと一緒に朝食、という日曜の朝。今日はオンライン講座、同じ時間に二つ申し込んでしまい、だけどどちらも見ながらおもしろい方に決めようとか思う、そんな朝。

 私のひとりぐらしは、ほんの二間、独立した小さなキッチン、家具らしい家具はなく、大きな木のテーブルと、テレビ、ソファ、あとは本だけがあるような部屋。食器もほんの少しですが、冷蔵庫は大きいです。電化製品は、ひとりぐらしをはじめたときに新しく買い換えたものが多いですが、ひとり用の小さいものにはしませんでした。テレビも55型の有機ELです。これは映画が好きで、家でいるときも映画をできるだけ大きい画面で楽しみたいという、私の唯一ぜいたくしたところです。

 住んでいる賃貸住宅は、全部で4棟の13階建てのアパートです。独居らしい高齢者の方が多く住んでいますが、こどものいる家族世帯も見かけます。部屋の大きさが1DKから3DKくらいまであるようですが、私のところは2Kです。できるだけ世帯数の多い賃貸住宅がよかったのです。共用部分や設備が契約に基づいて、できるだけ事務的にやりとりができるというのは、ストレスが少なくて安心です。家主と個人的なやり取りをするのは面倒に感じました。

 南に向いたベランダがあります。ベランダは「広いね」と訪れた友人がみな言います。幅は狭いですが、奥行きがちょっとだけ広いです。ここにリクライニングのガーデンチェアを置いています。真夏と真冬以外は、ここで飲み物を飲みながら本を読んだり、お昼寝をしたりできます。なので、ベランダはできるだけ清潔にしています。プランターなどは置いていません。二間しかない我が家の、もうひとつのお部屋とみなして、ここに洗濯物を干したり布団を干したりしてはいますが、空や雲や風や気温や、人の声、物音などを聞きながら、読む本を選んで、時には本を閉じて考え事に耽ったり、そのうちに眠ってしまったりしています。

 ひとり暮らしをはじめた頃には、新型コロナウイルスが日本に広がりはじめていました。リモートワークになった時期もありました。でも、この自分の部屋にいることがうれしくて仕方ありませんでした。仕事に出る日は、家に帰るのがたのしみで、帰ったらベランダにスパークリングワインと、新しい本を持って出るのが日課のようになっていた時期もありました。

 ひっこしてくるときに、元々使っていた布団を打ち直しにだしました。敷布団を3つ作って、ひとつを同じくひとり暮らしを始めた娘に持たせました。この綿布団がふかふかで夢心地だったので、今度は掛け布団を新調しました。綿の布団は程よい重さ、フィット感で本当に気持ち良いです。

 引っ越してくる前はベッドの購入を考えていてネットでいろいろ吟味していました。ただコロナ禍ということもあって、なかなか決めきれずにいて、いざ引っ越してきて布団生活を始めてみると、日常的に寝具が部屋の一部に見えている状態より、さっぱりと片付けてしまった方が二間を広々と使えることに気がつきました。二間とも洋間ですので、ここに布団を敷いて寝るのですが、それでは冷えがきついのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし、このアパートの床は床暖房システムが入っていて、コンクリートにいきなり床材を貼っているのとは違うからかもしれませんが、冷えは気になりません。しかし、冷えというのは案外気になりにくいものなのかもしれません。冬はホットカーペットを敷いたスペースに布団を敷いて寝ています。寝る前にホットカーペットで少し布団を温めておいて、寝る時にスイッチを切って寝ています。寒くて目が醒めるというようなことはありません。

 引っ越しを考える時、収納場所がどれくらいかということを気にするものだと思います。私もそうでした。元々住んでいた場所がすばらしい収納力をもつ物件だったために、こどもたち3人の使わなくなった学用品、兜飾りや雛人形、キャンプ用品、20年以上前に別居、離婚した元夫の持ち物、あらゆるものが保管されていました。しかし、このアパートに引っ越すと決めた時から、荷物を猛烈に整理、処分しました。なにを持っていくか、を考えた時に、それは「写真」「本」でした。いつか使うかもしれないもの、は手放しました。兜飾りは近所の小さな子供さんのいる若いご夫婦が引き取りに来てくれました。キャンプ用品は息子が買取店に持って回ってくれて、ほとんどの品がうまく引き取られ、引き取り手のなかったいくつかのものは粗大ゴミで引き取ってもらいました。

 こどもらのいろいろな学校でつくったもの、こどもの頃によく見ていたビデオ、そういうセンチメンタルな思い出のあるものも、写真に収めたりして、手放しました。ただ、いくつかのものは残しました。

 引っ越しの段ボールが重いので、引っ越し屋さんが「これ全部本ですか」と尋ねましたが、本と衣類を混ぜこぜにして、重くなりすぎないように工夫したんですけどね。

 それで気がついたのですが、ある程度の年齢になって暮らしを見直す時に、収納場所の少ないところにひっこしするのは良いことなのではないかと。持ち物が100あって、収納場所が10しかないときに、90を選択し、10を選択するという作業になります。自分にとって10がどれであるべきなのか、それをとことん極める作業になります。

 自分の引っ越し作業とともに、実家の片付けも同時進行になりました。母がなくなり、実家を処分することになりました。戸建の荷物の処分はほんとうに大変ですが、荷物を減らす作業を自分がしていたため、私が実家からなにかもらうということはできませんでした。母と父の思い出の品をいくつか持ち帰りましたが、大きなもの、小さなもの、まだまだ使えるもの、すべて業者さんにまかせました。ただ、その前に、どこかに大事なものや金品が混ざっていないかを確認するのがものすごく大変でした。確認しながら姉とせっせとゴミ出しをしました。何度か姉が軽トラで処分するゴミをどっさり積んで持って帰ってくれました。

 こどもたちとの暮らしにいつもそこにあった大きな木のテーブルは、数年前に少し脚を切って私の体に合わせてほんの少しだけ低くしました。椅子の脚も切りました。数センチです。ひとり暮らしには大きすぎるテーブルではありますが、友人とお茶をしたり食事をしたり、パソコンを小さい机からこちらに移して作業をしたり、とても使いやすいです。ここが私の定位置です。ソファにすわっているより、テーブルに向かっている時間の方が断然長いです。

 このアパートに引っ越してきて、よくお風呂に浸かるようになりました。お風呂には窓はありませんが、それを除けばなかなか快適なお風呂です。乾燥機付きですので、ジメジメしませんし、洗濯物用のバトンも2本ついています。私は外干しがほとんどですが、ちょいちょい使います。高齢者を想定したつくりなのか、最近はどこでもそうなのか、呼び出しブザーが風呂場とトイレについています。これを押したところで、警備員さんが飛んできてくれるのかどうかわかりませんが、多分、部屋で鳴り響くだけではないでしょうか。押すのが怖いです。

 引っ越しをしてきて、衣類もかなり処分したのですが、その時に「これからは気に入ったものだけを買うことにしよう。いいものを少なく買おう」と思っていました。けれど、いいもの(高価なもの)を買うのはなかなか勇気が入ります。それから、買い物もなかなか面倒です。昨年の冬はとうとう防寒具を買えずに、薄着の重ね着などで乗り越えました。本当に気に入ったものを買う、というのは今も決意としてはありますが、長く使えるものでなくてもいいかなとは思っています。10年使えるものは若い時に買った方が理にかなっています。歳を重ねていくときには、良い仕立てのものももちろん欲しいし、買いたいですが、さっぱりと清潔なものを着るというのも大事かなと思います。昔買った良いものが時代遅れで、よくよく見てみると、結構疲れていたりします。いつか流行が巡り来るかも、という考えは若い時には良いかもしれませんが、その時々に手頃で、自分の気分にあったものを買ったらいいんじゃないかと、今は思っています。

 3年ぐらい前に自分の車を手放し、母の介護に使っていた車も2年前に処分しました。今は自転車もない生活です。住まいのすぐ近所に大きなスーパーがあり、商店街があり、バスが通り、鉄道の駅もあるいて7分から13分ぐらいの範囲に4駅あります。どこでも歩いていくので、自転車が必要だと感じることはありません。サイクリングをして遠くへ行った時は、アパートのそばにレンタサイクルのハブがありますので、割高ですが気軽に使えました。しかし使ったのは1回だけです。

 少ないものと暮らし始めて1年半を過ぎました。足りないものを買い足したり、買い替えたりもしています。小さな暮らしで、いちいち丁寧に暮らしているわけではありません。まだいろいろ気がついたり、見直しを加えたり、試行錯誤中です。掃除はこまめに、だけど生活のことはたくさんしようとしないで、丁寧にすることのなかに楽しみを見出していく。歩く速さで生活をする、ということを今、しているなと思います。


 

 

 

 

 

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