芳香族化合物の化学(2)「芳香族化合物の構造」
有機化学の中でも芳香族化合物は構造,反応に特徴があります。
ここでは大学レベルの「芳香族化合物の化学」について解説していきます。
今回のテーマは「芳香族化合物の構造」です。
【ベンゼンの特異性】
① 水素化熱が1,3,5-cyclohexatriene(予測値)よりも低い。
1,3-cyclohexadieneの水素化熱はcyclohexaneのおよそ2倍になる。
(正確にはジエンの共鳴安定化が効くため少し下がる)
1,3,5-cyclohexatrieneの水素化熱はこの結果を加味すると330 kJ/molと見積もれる。しかし,実際のベンゼンは206 kJ/molと1,3-cyclohexadieneの実測値よりもわずかに小さくなる。
② 炭素-炭素二重結合を有するにもかかわらず,付加反応ではなく置換反応が進行する。
アルケンは求電子付加反応により,二重結合が開裂する。
一方,ベンゼンは二重結合が開裂せず,置換反応が進行する。
【ベンゼンの構造】
これらベンゼンの特異性は構造に起因する。
構造の予測
古くからベンゼンは化学式C6H6を有することが知られており,多くの人物がベンゼンの構造を予測してきた。
Kekulé構造
ケクレは六員環構造を有し,全ての炭素-炭素結合が等価であると予測し,2つの構造(A/B)の平衡で存在すると予測した(Kekulé構造)。
つまり,このKekulé構造は2つの構造の間には遷移状態が存在することになる。
実際のベンゼンの構造
Kekulé構造は遷移状態の山により,2つの構造(A/B)は変換できないことになるので誤りである。
つまり,実際のベンゼンは遷移状態は存在せず,共鳴安定化が働くため,共鳴混成体として存在する(右の式が正しい)。
【参考図書】
ボルハルトショアー現代有機化学(下)
「芳香族化合物の化学」をまとめたpdf(power pointスライド)も作成しております。
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