見出し画像

有機化学の分類

どうも,のうむです。

今日は有機化学の分類についてお話します。

一言に有機化学と言えど,その中身は多岐に渡り,近年は数学,物理,生命科学分野などの領域学問も広がっております。

今回は大雑把に有機化学の俯瞰してみます。

そういえばサムネ画像ですが,いらすとやにエバポがあったのですがみなさん知ってました?

有機化学の2本柱:合成と反応

有機化学を2つに分けるとすると,多くの人は有機合成化学有機反応化学に分けると思うます。

有機合成化学

有機化学は言うまでもなく合成化学の一つとして数えられます。
医薬品,農薬,電子材料,塗料など,有機化合物は私たちの身の回りにあふれています。

そんな有機化合物をつくり出すのが有機合成化学です。

有機合成化学は世界中の研究機関や企業で研究が行われています。
今までなかった物性を持つ化合物の創成,生活に必要な化合物の合成など,割と重要な分野です。

のうむも学生時代は有機合成化学の研究に従事していました。

有機反応化学

先に述べたように化合物をつくり出す有機合成化学は重要です。

しかし,目的の化合物があっても,その化合物をつくり出す方法,反応がなければ絵に描いた餅です。

そこでもう1つの柱である有機反応化学が重要になってきます。

名の通り「反応」に特化した分野で「反応開発」を行っています。

例えば,現代の有機合成化学に必要不可欠でもあるクロスカップリング反応や,古いものではDiels-Alder反応などの人名反応など,これらは全て反応開発のおかげです。

また,ただ反応を開発するだけでなく,Grubbs触媒をはじめとした触媒開発の研究も日夜行われています。

有機合成化学との大きな違いは,反応の開発が直接製品の開発につながらないことから,企業というよりは研究機関での研究が主となっています。

有機合成化学や有機反応化学をもっと深く

有機合成化学や有機反応化学はあくまでも大きなくくりです。
ここからさらに細かい分野について見ていきましょう。

構造有機化学

誰も見たことない,作ったことのない化合物をつくり出し,そのユニークな分子の構造や相互作用,物性の研究を行うのが構造有機化学です。

ではユニークな分子とは何でしょう?

例えば名古屋大学の伊丹研究室では,通常のナノグラフェンとは異なり,湾曲した構造を持つwarped nanographeneを合成しました。
平面が湾曲構造になるだけで従来とは異なる分子間相互作用や物性が期待できます。

図はhttps://xn--aip-2i4btb3j2a1do7p9bxc8f3609e.nagoya-u.ac.jp/public/nu_research_ja/highlights/detail/0000805.htmlより引用

天然物化学

有機合成化学の中でもターゲットを動植物の持つ天然物にしたものが天然物化学です。

特に石油などから容易に手に入れることのできる化合物から,ターゲットを合成することを全合成と言い,これまで様々な分子の全合成が報告されています。

具体例を挙げると,最難関と呼ばれていたpalau'amineは2009年にPhil Baranらの研究グループによって報告されました。

図はhttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.200907112より引用

また,この論文はOpen Accessなので誰でも無料で自由に閲覧することができます。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.200907112

有機金属化学

講義では錯体化学とも分類されるのが有機金属化学です。
有機化学だけでなく,無機化学の知識(酸化還元やd電子軌道,結晶場理論など)も必要となります。

こちらも参考にどうぞ。

有機金属化学は,配位状態などによる特異な物性発現や,種々の反応触媒への応用など様々あります。
そのため,有機合成化学,有機反応化学のどちらの側面を持ちます(のうむ個人としてはどちらかというと反応のイメージが強いですが・・・)。

他分野との領域学問

では次に他分野との領域学問について見てみましょう。
一応,有機金属化学もここに分類してもいいと思います(無機化学+有機化学)。

物理有機化学

物理化学と有機化学を融合したものが物理有機化学です。

物理有機化学は,有機化合物の構造や反応性,物性などを物理化学的手法により解明していく分野とも言えます。

例えば,Diels-Alder反応をはじめとしたフロンティア軌道理論をイメージするのがわかりやすいと思います。

では有機化合物の分子軌道はどのようにして考えればいいのでしょうか?

ベンゼンやジエンなどの単純な分子はシュレディンガー方程式を解くことで分子軌道を考えることができますが,より複雑な分子ではほぼ不可能です。

そこで使うツールが「計算化学」です。

代表的なものとしてgaussianがあります。
詳細な解説は(長くなるので)割愛しますが,これは分子軌道法や密度汎関数理論を使って分子軌道を求めるというものです。

それぞれの理論で有名なものをあげると,分子軌道法では「ハートリー・フォック方程式」,密度汎関数理論では「コーン・シャム方程式」が挙げられます。
簡単に言えばシュレディンガー方程式とは異なるが同じく分子軌道を求めることができる手法です。

有機材料化学

物理有機化学や構造有機化学の一分野ともとらえることができ,有機分子で様々な材料を開発していくのが有機材料化学です。

材料化学という分野に注目すると,高分子材料(樹脂や繊維など),無機材料(セラミックなど)などもありますが,有機材料とは何でしょう?

一番わかりやすい分野としては有機半導体などの電子材料や有機色素でしょうか?
前者について深く見てみると,有機トランジスタ(OFET)や有機太陽電池など様々ありますが,最も有名なのは有機ELが耳なじみが深いと思います。

厳密にいうと有機ELのELはElectro Luminescenceの略であり,これは電子発光と直訳できます。
つまり有機ELは有機電子発光,つまり光る現象のことをいうので,材料を指す言葉ではありません。
日本以外ではOLED(Organic LED)というのが一般的です(有機ELと呼ぶのは日本人だけです)。

生物有機化学

生化学と有機化学を合わせたものが生物有機化学です。

生化学で出てくる分子と言えば,水や二酸化炭素のような汎用的?なものを除くと,タンパク質やアミノ酸,脂質などほとんどが有機化合物です。
また,酵素を介した反応は有機化学の触媒反応と同じように捉えることもでき,有機化学の知識も重要となってきます。

とは述べてきたものの,のうむ自身この分野に関してはあまり詳しくないのでここらへんで終わります。

まとめ

と細かく見ていくときりがないので今回はここまでです。
有機化学と一概に言っても中身は多種多様です。

それでは,また。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?