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有機化学者のための単結晶X線構造解析(3)「X線の基礎 その1」

単結晶X線構造解析は実際の分子,結晶構造を観ることのできる強力な構造解析手法の1つです。
多くの研究分野に普及しており,生化学・構造生物学分野ではタンパク質の構造解析研究,有機・無機化学分野では合成した分子の構造決定や分子間相互作用の研究などに利用されています。

本連載では有機化学者のための単結晶X線構造解析と称して,X線回折測定の基礎から測定原理を解説していきます。

今回のテーマは「X線の基礎」です。

X線の発生

X線の分類

種々の方法で発生させたX線は単一波長ではなく,連続した波長の光として得られるものの,特異的な波長-強度関係が示される。連続した光は制動X線(白色X線,連続X線とも言う)と呼び,強度の強い2つの単一波長のX線を特性X線と呼ぶ。2つの特性X線はKa,Kbとして区別する。

X線管球によるX線の発生

真空のガラス(あるいはセラミック)管内で行われる。フィラメントに対し数Vの電圧をかけることで電子ビームを発生させ,40~60 kVの電圧を印加することで加速させる。電子ビームは,金属ターゲットに衝突させることでX線が発生する。発生したX線はベリリウム窓を透過することでX線管球から取り出す。金属ターゲットは常に冷却されており,これは電子ビームの運動エネルギーは大半が熱として消失するためである。

ラボ機におけるX線発生装置

一般的なラボ機では金属ターゲットに銅あるいはモリブデンが用いられており,それぞれ1.54184, 0.71073 Åの特性X線が発生する。
ラボ機では発生したX線をそのまま使用するのではなく,人工多層膜X線集光ミラー等を用いて高輝度化させて使用する。

シンクロトロンによるX線の発生

ラボ機以上の輝度を有するX線の発生方法としてシンクロトロンを用いる方法がある。シンクロトロンは直径数百m以上の円構造をもち,そこを磁場で制御しながら電子線を回転運動させる。これにより,接線方向に電磁波(X線~赤外線)を放出されるため,モノクロメーター等で単一波長のX線を取り出す。

X線を利用した分析法

XRD:X線回折測定

測定サンプルにX線を照射し,回折波を撮影し解析する測定法=回折法
(例)単結晶X線構造解析,粉末X線構造解析

XAS:X線吸収分光法

測定サンプルにX線を照射し,透過光を検出する測定法=分光法
(例)X線吸収微細構造(XAFS),蛍光X線測定(XRF)

【参考図書】
・X線結晶学入門[化学同人]
・アトキンス物理化学(下)[東京化学同人]

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