有機化学者のための単結晶X線構造解析(2)「結晶構造」
単結晶X線構造解析は実際の分子,結晶構造を観ることのできる強力な構造解析手法の1つです。
多くの研究分野に普及しており,生化学・構造生物学分野ではタンパク質の構造解析研究,有機・無機化学分野では合成した分子の構造決定や分子間相互作用の研究などに利用されています。
本連載では有機化学者のための単結晶X線構造解析と称して,X線回折測定の基礎から測定原理を解説していきます。
今回のテーマは「結晶構造」です。
結晶の基礎
結晶の定義
原子や分子が規則正しく周期的に並んだ構造 ↔ 非晶質(アモルファス)
基本となる単位(最小の周期構造)を単位格子(単位胞)と呼ぶ。
結晶学では慣用的に軸はa, b, cで表記され,それぞれの向かい面の角をα, β, γと表記する。
なぜ単結晶なのか?
単結晶X線構造解析では測定サンプルにX線を照射させ,回折波を読み取っている。単結晶では規則正しく並んだ結晶面により,きれいな回折点が得られる。
一方,粉末や非晶質では複数の結晶面に由来する回折点が重なり,回折円が測定結果として得られる。
結晶の分類
七晶系
結晶はその格子単位条件や対称性から七晶系に分類される。
三斜晶系:a≠b≠c, α≠β≠γ
単斜晶系:a≠b≠c, α=β=90°(C2軸1本)
斜方晶系:a≠b≠c, α=β=γ=90°(互いに垂直なC2軸3本)
正方晶系:a=b, α=β=γ=90°(C3軸1本)
三方晶系:a=b=c, α=β=γ≠90°(C4軸1本)
六方晶系:a=b, α=β=90°, γ=120°(C6軸1本)
立方晶系:a=b=c, α=β=γ=90°(四面体配置のC3軸4本)
Bravais格子
結晶格子に対し,格子点(原子/分子)の位置によって,単純単位格子(P),体心単位格子(I),面心単位格子(F),底心単位格子(C)の4種類がある。七晶系からさらに分類され,14のBravais格子が存在する。全ての結晶構造はこの14のBravais格子に必ず分類される。
X線回折測定からわかる結晶の情報
空間群
Bravais格子から対称の組み合わせにより230の空間群に分類される。空間群の表記方法はHermann-Mauguin表記とSchoenflies表記の2種類がある。
ミラー指数
結晶格子に対して格子点と結んだ幾つかの平行面で区切ることができ,結晶面と呼ぶ。この結晶面と交点までの距離の逆数をミラー指数(面指数)と言い,結晶構造解析においては重要な指標値である(実際の測定における消滅則)。
【参考図書】
・X線結晶学入門[化学同人]
・アトキンス物理化学(下)[東京化学同人]
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