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青枯れ病が発生しました。

就農から8期目の作がスタートしてもうすぐ1ヶ月が経とうとするころ、ハウスの様子を見回っていた時に1本の萎れた苗を見つけた。数十本の苗が等間隔で植っている畝の中にぽつんと1本だけ。恐らく、たまたま根痛みになったやつだろう、そのうち回復して、萎れていたことも忘れるに違いない。毎年、1ハウスで千数百本も苗を植えていると数本はこんなやつが出るのだ。ということで、その萎れ苗は放置してしばらく様子を見ることにした。

それからさらに一週間ほど経ったある日、同じハウスで午前中の作業に区切りをつけて昼休憩にしようというときにスタッフの1人が『萎れている苗がある』と報告してきた。
現場を確認すると、水気を失って力なく萎れた苗が確かにあった。
あれ、これってこないだ見たやつじゃないか?
同じ畝の並びを見ると飛び石的に萎れている苗が何株がある。嫌な予感がした。

最初に見つけた苗と他に萎れのひどい苗を2本、株元から第一分枝を切り出して、1リットル計量カップに汲んだ水に浸ける。
3本の内、2本の切り口から白い菌泥が滲み出てきた。青枯れ病確定である。

青枯れ病はその名の通り苗木が枯死する病気である。土壌中に病原菌があり、作物の根に傷みがあると簡単に感染してしまう。水で運ばれるために、畝で一続きに植っている苗は格段に感染リスクが高くなる。
地上部においても、収穫や剪定の際に使用したハサミなどを介して樹液感染もする。
保険の補償率も一番高い病気なので、相応の損害を覚悟しなければならない。
よく聞く話では作の終盤に入る春先、3〜4月ごろに発病するパターンだが、まさか定植間もないこの時期に現れるとは。
病原菌の存在が確実に分かっていれば、接木苗を植えることで発病を未然に防ぐこともできたのだが。

土づくりの時に暗渠弾丸を通したのが災いしたのか、晩夏の暑い時期の早植えがまずかったか、それとも早くに実がとまって根張りが不十分だったのか。

反省とも後悔ともつかない思いが頭の中を駆け巡る。

努めて冷静に、今何をしなければいけないかを考えた。

まずは現時点での罹患状況を把握しよう。もう一度ハウスに入る。

宮崎の10月初旬の快晴、正午過ぎ、ハウスの室温はとっくに30度を超えている。ピーマンは本来夏野菜の中でも高温を好む部類に入るのだが、ハウスの構造や付随する設備の関係で、意識的に蒸し込むような管理をしていた。しかし実は青枯れ病防除の側面からはそれはよろしくない。高温環境下では病気の進行が早まるのだ。

再び後悔の念が押し寄せるのをなんとか堪えながらハウス内を見渡す。
ざっと見た感じでも群発的に萎れ苗があるのがはっきりわかった。

今作は台風でもネクトリアでもなく、こいつだったか。
できれば避けたかった相手と対峙しなければならない。
長い作になりそうだ。


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