アマプラで「ザアウトロー」がよかった

トムクルーズ主演ジャックリーチャーシリーズの,古き良きアクション映画の煮凝りにしたような名作と名高いあの「アウトロー」ではなく,ジュラルド・バトラーが主演をやっているほうの「ザアウトロー」が意外とよかったです.以下はアマゾンの紹介文です(https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07N48VWJK/ref=atv_dp_share_cu_r.)


≪最強の刑事 VS 最凶の強盗団―! ! 全米初登場No.1ヒット! 映画史に残るクライムアクションの傑作! ! ≫
48分に1回銀行強盗が発生するといわれるロサンゼルス。ロサンゼルス郡保安局の重犯罪班を率いるニック・オブライエン(ジェラルド・バトラー)は多発する銀行強盗に日々立ち向かっていた。そんなある時、伝説の強盗と呼ばれるレイ・メリーメン(パブロ・シュレイバー)の一味が3000万ドルの銀行強盗を企てているとの情報が舞い込む。氷のように冷たく、恐ろしいほど冷静なレイに率いられた集団は、平凡な強盗団ではない。軍人のように正確に動き、緻密な計画を立て、熟練した人材を雇い入れる。ニックたちは徐々に一味を追い詰めていき、両者が対決する日は刻一刻と近づいていた。

 一見すると,クライムアクションという感じがしますね.実際,銃撃戦ではジョン・ウィックばりに洗練された個々のマガジンチェンジで,さらにそれだけでなく,カバーし合いながら一つの有機体のように動く本格的なタクティカル描写など,アクションだけでも100点です.

  が,そんなことよりも5000億点のところがあるんですわ

 重低音のように「マッチョ(男性生)の陰陽」というべきテーマが人物描写で展開され,それらによってお話の「サスペンスの方向性」が転換して,さらにド直球の「スリラー」へと変化していくという巧みな作りになっていて,唸るしかないやつなんですよこれが.

 登場人物に解決すべき課題が与えられ,それがうまくいくのかどうなのか??という過程で観客をハラハラさせるでお馴染みのサスペンスという作りがあり,推理ものなどが典型ですが,まず言ってしまうと普通のサスペンスではなく,主役の刑事の視点からハラハラできなくなっていくんですよね.それがなんでかというと,主役の刑事はこれでもか,とわかりやすく女性を自らのマッチョ性,オラつきを演出するための道具にしている,バッドマッチョとして描かれていくんですよね.悪いホモソーシャルの親玉にしか見えなくなります.

 対して犯罪者集団もみんなで筋トレとかやるマッチョなんですが,仲間たちとキャッキャするグッドマッチョ場面やメンバーそれぞれのキャラがわかるように描かれ,紹介文にあるような冷酷印象はなくなり,むしろ視聴していると,この犯罪者チームに犯罪を成功させてほしい,うまくいってほしいというハラハラに変わってくるんですよね.

 というか「犯罪阻止を成すか?」というサスペンスをやる刑事側への共感をさせないんですよ.グッドマッチョ犯罪者たちに対して,刑事はその女遊びから,嫌な気分にさせる不破な家庭を見せつけてくれ,そのくせに嫁への執着からでる「見るも無惨なとあるオラつきムーブ」.その他にもとにかく自制心の存在を疑いたくなるような,無益なほど他人をコントロールしようとして,ありとあらゆる方面にオラついて脅し散らし,あまつさえ一人のときは涙を流し,,,,,,

   紹介文の「最強刑事」とは何か....

 だが,それがいい!!!!

 日常でもよく見る「粘着質で陰湿で弱い精神性を隠す虚飾としての過剰なマッチョをやっている」やつとして描かれるってわけなんです.これでもかと不快なマッチョの暗黒面描写によって,刑事サイドではなく,「犯罪を成す」グッドマッチョたちのサスペンスへと見方が変えられてしまいます.

 もうさきに述べた100点の銃撃戦がでてくる時にはマッチョと暗黒面マッチョの戦いにしか見えなくなります.

と,思いきや

最終面では見事に,怖くなかったはずのものが一変して怖くなる「スリラー」映画になっていくんですよこれが.是非見てほしいです.ここらへん見てほしんですが,注目してほしいのっが,最後のこの展開の鍵になるのが「非マッチョ」なんですよ.最後の刑事の台詞がとっても示唆的なんですが,お話全体が「マッチョ性」というテーマで切り開かれていくって,そんなことある??ってなるんで.ほんとびっくりするんで,見てください!


 ちなみにとくにフェイニズム啓蒙的なメッセージをやる作品でもなく,純粋な娯楽作品で,見ている時は「テンポを悪くする余計な人物描写多いな」くらいな感じにはなるんですがね.まぁ見ましょう.おしまい



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