アンスパック読んで贈与と継続について

 贈与のサイクルとは「明日に他者から何かを受け止めるために,今日他者に与える」という相互的な好循環である.望ましいものだが,その実践が自律性を獲得するのは難しい.お互いがお互いのためになるそんな関係,コミュニティはなかなか形成されない.

 対して自律しやすい循環もある.それは「殺した者は殺す」という復讐のサイクルである.復讐は,殺した人を殺す時,殺した人を取り除く行為そのものが新しい殺人を生じさせるために,個人の意思で終わらせることが難しい悪循環だ.一度起きた殺人を無効にできない以上,限りなく続く.人から自律性を奪い,復讐事態が自律していくとも言えるだろう.

 しかし,贈与のサイクルはこの復讐のサイクルと大きく異なる.それは,新しい贈与は,贈与されることへの期待からなされる点にある.期待という個人の意思による自己犠牲,人の自律性が問われるのだ.贈与の実践は,人に自律性が預けられている.故に人によって終わりうるのだ.また,贈与は対等で即時的なお返しによって「決済」となってしまい停止する.直接的即時的な返礼をなさないというルールが実際の贈与の実践では見られるが,恩はすぐに返してしまいたいのも人の性質だろう.

 このように,基本的に終わらない構造を持つ復讐のサイクルに対して,贈与のサイクルは人に委ねられた部分が多くあるが故に,脆弱なのだ.

人類学者のアンスパックによると,この贈与の脆弱性を乗り越えるのは,人間界を超える存在,超越を求めることにあるのだという.

おわり(こんなとこで終わるんだね)

 

 


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