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12年目農醸 私たちの酒米の生育記録6

この度の記録的大雨の被害に遭われた方々へ、心よりお見舞い申し上げます。
大潟村でも強めに降りましたが、幸いにも大きな被害はありませんでした。
数日晴れが続いた後に再び雨続きでしたが、大潟村でもいよいよ梅雨が明けそうです。

私たちの酒米の状況をお知らせします^^

前回、機会を使って溝を掘る溝切りの行程についてお伝えしました。
この溝を水を抜く際の通り道にするわけですが、田んぼに再度水を入れる際にも溝があることにより奥まで水が行き渡りやすくなります。

溝を掘った後に水を抜き、田んぼを一度乾かします。
この行程を中干しと呼びます。
松橋ファームのある大潟村では必須の作業ですが、
土の成分や排水性によりあまり積極的に中干しを行えない地域もあるそうです。
中干しの効果ですが、稲は田んぼが湿っている状況では枝分かれ(分けつ)しますので、目標の茎の数を確保した後は田んぼを乾かしてそれ以上茎の数が増えるのを抑制する働きがあります。
茎の数が多すぎると密度が上がって倒れてしまうリスクが上がりますので生育調査をして目標の茎の数が確保した時点で中干しを開始します。
しかし、茎の数が足りないからと言っていつまでも水を張っていても、稲はある一定以上の生育ステージ以降は茎が増えても籾がつかない為、茎の数が増えても収穫量が上がらない事態になります。
その為、ある程度稲が生長するまでに茎の数を確保して余裕を持って中干しを始めることが重要です。

中干しの効果としては、ガス抜きというのもあります。
水を張った酸欠状態で働く微生物が土の中の有機物を分解する際にガスが発生します。このガスが稲の生育に悪影響を及ぼす為、中干しをして土がヒビ割れてガスが抜けるよう促し、さらなるガスの発生を抑制します。
この時発生するガスの正体メタンガスです。
最近話題になっている水田の長期中干し、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。このメタンガスは温室効果が高い為、中干し期間を長く取って空気が供給される状況を作りメタンガスの発生を抑制するというものです。

これに加えて、田んぼを乾かして田面を固めるという効果もあります。田んぼがぬかるんでいるままでは稲刈りの時にコンバインのような大潟機械が入れない為、田んぼを乾かして固くする必要があります。
大潟村の田んぼは排水性が良くないため、田んぼを固めるというのは非常に大切な中干しの効果です。
田んぼが柔らかいままだと翌春に田んぼが乾きにくくなかなか田起こしができないこともあり、その影響は長期に渡る可能性があります。

以上のような効果のる中干し。
定点・定期の生育調査を行い、今年は早めに茎の数を確保して中干しをスタートすることができました。

田植えから49日目の秋田酒こまちです。
中干しに入り、土の表面が少しヒビ割れているのが分かります。

田植えから50日目の改良信交です。
中干しを始めてからも雨続きで田んぼが乾かなかった為、茎の数が予定よりも増えすぎてしまったと嘆いていました。
しかし、この日の生育調査の結果、少しでも晴れが続いた間に土が乾きいて枝分かれしたての小さな茎の生育をおさえられたようで、前回生育調査よりも茎の数が減っていて一安心です。
今回は雨続きでなかなか田んぼが乾かない訳ですが、強めに乾かして外側の茎の数を少し減らすという方法もあります。

田植えから58日目の秋田酒こまちです。
この日は5回目の生育調査でした。
茎の数は結局目標に対して少し足りないくらいでした。
機械で計測した葉の色が前回から一気に薄くなっていたのですぐに肥料を散布しました。(追肥)
栄養状態が良くないと質・量共に下がる訳ですが、葉の色が濃くて栄養状態が良すぎるとその後一気に丈が伸びて倒れてしまうリスクが上がるので、ちょうど良い状態になるよう肥料を設計して計測します。
天気や水温で肥料の効き方が変わるので毎年思い通りには行かないのですが・・・

田植えから59日目の改良信交です。
こちらは始めから肥料切れになるよう設計しています。
多すぎる肥料を抜くことはできないけど、足すことはできるという考え方です。改良信交は丈が伸びやすく倒れるリスクが高いので肥料が不足するよう推移させてあとから足します。
しかし、今年は葉の色がなかなか薄くならず追肥できずにいました。
もともと入れている肥料の量はさすがに少なすぎるので追肥無しでは品質が心配で、色が薄くなるのを待っていましたが、今回の調査で予定通り色が薄くなっていて速やかに追肥しました。
追肥をする時、稲の生育ステージが進むほどに収穫量が多くなりますが、タンパク質の含有率が上がっていきます。
タンパク質の含有率が高いと日本酒になった時に雑味になりやすいと言われているので、松橋ファームではできるだけ早いタイミングで追肥するよう心がけています。
(ちなみに、食用の米も追肥の時期が遅いほどに収量は増えますが食味が落ちやすくなります。)

さて、この追肥のタイミングを図る生育ステージはどのように判断するのでしょうか?
この時期になると稲の茎の中に幼穂(ようすい)が入っていますので、茎をパカっと割って幼穂の長さを測って生育ステージを判断します。
まだ柔らかいですが、見た目はもう籾のようになっていますね。

この幼穂が茎の上まで来ると出穂(しゅっすい)です。
8/3の稲の花見会に間に合うでしょうか!?

引き続き皆で12年目農醸の酒米の田んぼを見守って行きましょう^^

稲の花見会は定員に達しましたが、懇親会はまだ少しお席に余裕があります。懇親会のお店は電車でも来られます。
懇親会のみの参加も大歓迎ですので是非ともお越しください^^

https://note.com/noukanosake/n/n602de9c89d6d

●農家とつくる日本酒プロジェクト
webページ/https://noujou.jp/

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