
脳室穿破ってどんな状態?~リハビリテーションを考える~
おはようございます!
脳神経外科病院にて急性期~回復期のリハビリテーションを担当しているシミーです。
皆さん本日も臨床BATONにお越しいただきありがとうございます。
ついに2020年も残すところあと1ヵ月となりました。
いろんなことが起こった1年でしたが、あと1ヵ月気を抜かずに過ごしていきたいと思います。
前回は『くも膜下出血後のリハビリテーション~どうする?脳血管攣縮への対応~』というテーマで記事を書きました。
気になる方は是非下記のリンクから覗いてみてください!(^^)!
本日は『脳室穿破』についてまとめていきます。
脳室穿破と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
私は「意識障害がでるな」くらいで、そこから掘り下げて考えていくことが出来ませんでした。
脳室穿破は脳出血の急性期で認められる病態であり、急性期からのリハビリテーションでは重要になってくる部分だと思います。
脳室穿破とは脳がどんな状態にあり、そこから逆算してリハビリテーションについて考えていきたいと思います。
脳室穿破とは?
脳実質内の出血に続き、近接する脳室内に血腫が穿破することです。
脳室穿破を起こすと、頭痛や悪心・嘔吐、項部硬直、意識レベルの低下などの症状が出現します。
視床出血による脳室穿破では眼球の内側下方への偏倚が多くみられることがあります。
脳出血の急性期で認められる現象であり、急性期から関わるうえでどのような状態になっているのかを知っておかなければなりません。
どの部分の出血にて脳室穿破は引き起こされるのでしょうか?
主に、視床出血と被殻出血、小脳出血で認められる頻度が多いです。
視床出血や被殻出血の場合は第三脳室や側脳室、小脳出血では第四脳室へ血腫が穿破することがあります。
*第四脳室に近い部分で脳幹部もありますが、脳幹出血では回復が見込めないためセラピストが脳幹出血での脳室穿破を引き起こしている方に関わることはほぼないといえます。
そのため、視床や被殻、小脳の脳出血の場合には脳室穿破を起こしていないか確認します。
脳室穿破はCT画像にて簡単に確認することができます。
脳室が白くなっていれば脳室穿破を起こしているということです。
下の図に示す脳室部分が血腫の穿破により白くなります。


視床や被殻のCT画像を見ると、側脳室後角(脈絡叢)も白くなっていることがあります。
これは出血ではなく生理的石灰化なので間違えないように注意してください。
見分けるポイントとしては左右対称性に認められることです。
脳室穿破では一側方向から血腫が穿破します。
また、脳出血では血腫が進展して(広がって)いく流れがあるので、惑わされないようにしましょう。

脳室穿破で重篤になるのは急性水頭症を引き起こした場合になります。
基本的に血腫は徐々に吸収されていきますが、脳室穿破により急性水頭症を引き起こすと外科的な治療(脳室ドレナージ)を施します。
脳室穿破に対する外科的治療
脳室穿破において脳室拡大が強い場合は、血腫の排出や頭蓋内圧の低下を目的として、脳室ドレナージが行われます。
もし、脳室ドレナージが行われている場合は穿破した血腫量が多く、急性水頭症を引き起こしていると言えます。
脳室ドレナージは圧により排液するため、ドレナージ中に離床して頭部の位置が変化してしまうと十分な排液が行えません。
医師の指示を確認し、どこまで離床できるのかということは必ず確認して介入してください。
脳室穿破が起きているときの脳はどんな状態?
脳室穿破がある状態は脳室が血腫で満たされて、髄液の流れが滞っている状態です。
脳室穿破により脳室が血腫で満たされると、脳室の拡大から急性水頭症を引き起こす可能性があります。
脳室穿破の場合の水頭症は、非交通性水頭症であり、脳室内やその出口に閉塞があり、髄液がくも膜下腔へ流出できずに脳室が拡大している状態です。
このような状態では頭蓋内圧亢進により、頭痛や悪心・嘔吐、意識障害、Cushing現象、けいれんなどの症状が出現してきます。
また、脳室穿破が起きているということは、出血量が多く、重篤な症状を起こしている可能性が高いと予測されます。
脳出血自体が重度である可能性が高いのです。
出血部位の症状や、脳全体への影響(脳浮腫)も大きくなることが考えられ、意識障害も長引く可能性があるということを考えて介入していく必要があります。
脳室穿破あり、リハビリテーションは?
脳室穿破が起きている場合で急性水頭症を引き起こしているならばそちらの治療が優先となるため、積極的なリハビリテーションを実施することはできません。
この場合は医師の指示が必ずありますので、それを確認した上で介入するようにしましょう(基本的にどんな状態でも医師の指示を確認することは必須)。
安静臥床かギャッジアップ座位までなのか、クランプして端坐位までかなど、細かい部分まで確認してから介入していきましょう。
介入が出来てもベッド上で関節拘縮を予防するための関節可動域訓練などになるでしょう。
評価としては、意識障害を把握することが重要です。
状態が変化していくときの指標とできるため、どんな意識レベルのなかをきちんと評価しましょう。
意識レベルの評価に関してはゆっこさんの記事を是非参考にしていただければと思います。
急性水頭症を引き起こしていない状態では離床可能な場合が多いと思いますので、積極的に離床を進めていくようにしましょう。
ギャッジアップ座位や端坐位にしてもなかなか覚醒状態が改善しないことも多いかもしれませんが、バイタルや全身状態に問題がないのであればしっかり離床を進めていくことが重要です。
また脳室穿破と直接関係はありませんが、脳出血急性期では血圧の上昇を控えなければなりません。
引用:脳卒中ガイドライン2015
脳出血急性期の血圧は、できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、7日間維持することを考慮しても良い
とされています。
発症後24時間後までの血腫の増大を抑制することや3ヵ月後の死亡+重大な機能障害も抑制される傾向があるとされています。
私の勤務している病院でも脳出血後は収縮期血圧140mmHg以下コントロールの指示が出されます。
離床していく際には血圧の変動にも十分注意していきましょう。
私の臨床経験より
私が担当した患者様で、視床出血で脳室穿破を起こしている方がいました。
視床出血でしたが、発症後2日目より見守り歩行にてトイレへの移動が可能で、会話も可能な方でしたが、介入して1週間は日中傾眠状態にあり、訪室するといつも入眠しておられました。
意識レベルの評価ではJCSⅡ-10、会話もできる状態ですがぼーっとしている状態で、ベッド上での介入ではすぐに入眠されてしまいます。会話できても今ひとつはっきしりしないのです。
リハビリ中はしきりに「眠たい」と訴えられていました。
MRIにて発症10日後に脳室内の血腫が吸収されるとともに、覚醒状態も改善し日中も臥床せずに過ごされていました。
軽度の脳出血で、急性水頭症を引き起こしていなくても意識レベルの低下を認めることを経験した患者様でした。
なぜ意識障害が出ていたのか?
脳室穿破や視床の髄板内核を血腫が圧迫している影響が意識レベルの低下につながっていると考えられました。
この方への介入はベッドにて臥床した状態だと入眠してしまうため、座位や立位にてアプローチしていくことをご本人にも説明しながら実施しました。
早期退院を希望されていたこともあり、少しでも離床時間を増やしていくような介入を行いました。
まとめ
・脳室穿破は脳出血の急性期に認められ、血腫が脳室内に穿破することです。
・主に視床出血や被殻出血、小脳出血で認められます。
・脳室穿破により急性水頭症を引き起こした場合は脳室ドレナージや脳室内血腫除去などの外科的な治療を行います。
・脳出血は早期からのリハビリテーションが望ましいため、急性水頭症などを引き起こしていなければ、医師の指示のもと離床を進めていくことが重要です。
・軽度の脳出血でも脳室穿破をすると意識障害を伴うため、CTの所見や意識レベルの評価にて状態が悪化しないかを確認しながら離床を進めていきましょう。
参考文献
・児玉南海雄・佐々木富男ほか編『標準脳神経外科学第11版』
医学書院(2009年)
・医学情報科学研究所『病気がみえるvol.7 脳・神経 第2版』
株式会社 メディックメディア(2017年)
・『日本臨牀 第72巻 増刊号7 最新臨床脳卒中学(下)
-最新の診断と治療-』株式会社 日本臨牀社(2014年)
・原寛美・吉尾雅春編『改訂第2版 脳卒中理学療法の理論と技術』
株式会社 メジカルビュー社
・馬場元毅著『絵でみる脳と神経 しくみと障害のメカニズム 第4版』
医学書院(2017年)
本日も最後までお読みいただきありがとうございました!
脳出血の急性期と聞くだけで抵抗感がある方もいるかもしれませんが、一つ一つ整理していけば適切なリハビリテーションを提供することは可能です。
是非今日の臨床に役立てていただけると幸いです!
明日は、脳外臨床研究会 滋賀支部代表のコバさんです!
運動麻痺について内包から考えていく内容になっています。皆さん臨床で運動麻痺について考えていくときに内包の部分を必ず考えていきますよね。どのように考えていけば運動麻痺について深めることができるのでしょうか?
明日の内容も楽しみですね!
コバさん!臨床BATONどうぞ!!
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