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「濁りの長期化」 渓流からアユ消える(流域治水⑤)

長浜市の高時川が8月5日の大雨で氾濫(はんらん)して以降、「いつまでも川の濁りがとれない」として、高時川上流を管理する2漁協が同30日、連名で県知事宛てに濁りの原因究明などを求める要望書を提出しました。

 高時川漁協(阪田光雄組合長)では、例年7月初旬ごろから9月末にかけて漁場を解禁し、遊漁券を販売しています。今年は8月5日の大雨以降、川の濁りが原因で一度も営業できないまま、今季の営業を終えました。遊漁券の販売数は昨年に比べて、約25%に落ち込みました。

 阪田さんは6年前に組合長に就いてから、天候や川の状況などを記録につけてきました。それによると、「濁りの長期化」が始まったのは2017年8月の台風5号から。それ以前は数日で河川は元の澄んだ状態に戻っていました。

阪田さんは詳細な記録を残している。濁りが長期化する原因を探るため、現地を歩いて水を採取したり、写真を撮影したりして、たくさんの調査資料を用意してくださっていた。

 阪田さんは「異常な状況に着目してほしい。濁り=被害との受け止めがされていない。このままではアユがすめない川になってしまう」と訴えます。

 高時川最上流の丹生川漁協も状況は同じです。同漁協組合員で農業にも従事する男性は「近年の土砂流出で川底が上がっている。川底の土砂を撤去することで、アユのエサが生える岩や石も一緒に撤去されてしまう」と心配します。

 県流域政策局によると、今回の大雨による影響で、高時川流域では川底に土砂が堆積(たいせき)したり、護岸が崩壊したりするなど、今後修繕が必要な被害が37カ所ありました。また、高時川沿いを走る県道中河内木之本線の中河内―菅並間で、計57カ所の路肩欠損や崩落が確認されたそうです。長浜市北部振興局によると、市道の大見ー川合間では7カ所の被害がありました。

 地元林業者の男性は、氾濫翌日から何度も高時川流域の山に入り現場を見てきました。「川や道路だけでなく、山もいたるところで荒れている。どこかで大量の土砂が川に流入し、川の中で堆積して雨が降るたびに流れ続けているのではないか」と推測します。

 高時川の濁りの長期化の問題は9月県議会でも取り上げられました。
https://vdg.jp/irQxu_FVh4QQ

 三日月知事は、濁水の原因として、防災ヘリや徒歩による調査の結果、大きな山腹崩壊は無く、渓岸浸食が多数発生している状況を確認したと答弁しました。県水源地域対策室によると、渓岸浸食とは、大雨などで自然に起きる川の変動で、災害レベルにならない限り修繕などは検討されないそうです。

 先ほどの丹生川漁協組合員で、農業にも従事する男性の田んぼは川の増水で9割が泥につかりました。河川の当面の治水対策とともに、山の保全の重要性をこう訴えます。

 「田んぼを守り、氾濫を防ぐために土砂をすくうのはやむを得ないが、山が荒れる原因を解決しなければアユはいなくなってしまう。治山は治水だ」


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