伝える。伝わる。

 私のやっている仕事は上手くいって当たり前。どんな仕事でもそうだが、ミスは許されない。
 幼いころから音楽が大好きで、やがて音響の世界に興味を持ち、小学校では放送委員会、中学校では放送局で活動し、学校行事でマイクやスピーカーの準備やちょっとした操作、各時間帯の校内放送も担当してきた。
 高校卒業を控え、将来の道を真剣に考える時期がやってきた。3年間真剣に勉強はなかったが(毎年留年しかけたのは内緒)、やはり自分は音響の世界に進むしかないのかと。そして専門学校に入学。学校ではレコーディング、PCでの音楽制作、音楽理論などを勉強し、休日は不定期で現場でPAを勉強する生活が始まった。当時は筋力もなく、重い機材を運ぶだけで精いっぱい。ケーブルもうまく負けない。知識もない。ただただ気合いで乗り切る日々が続いた。当時出会った師匠ともいえる存在の恩師は数年前に他界したが、恩師のご縁でお付き合いの続いてる同業の大先輩もいる。
 卒業も近づき、就職先を探さなければいけなかった。しかし、一期生ということもあり地盤はなく、卒業してからはバイト生活。実家には居づらい日々が続いたが、数ヶ月後に就職先が見つかり入社。当然下っ端だ。口惜しい日々が続く毎日だった。覚えることは果てしない。それは今でも変わらない。
 音の出る現場は果てしない。結婚式、ライブ、コンサート、発表会、式典、お祭り、学芸会…。自ら本番時に機材を操作するだけでなく、お客様が操作するときの事前調整をすることもある。ただ、どんな状況でもいい音を出せるよう、最善の努力をする。様々な事情で制約があるときでも、ぎりぎりできることまではする。
 多くは語らないが、働く環境が変わっても仕事のベースは変わらなかった。結局好きなんだろうな。
 先日電話である現場の打ち合わせをしていたとき、お客様から「あなたのような人は大事なんですよ」と仰られた。この一言でこれからも仕事を続けようと改めて思った。

#創作大賞2024

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