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粥~はらぺこ~



原作、脚本
梵天彪雅

1573年1月25日

遠江国 三方ヶ原……

武田信玄『徳川の青二才如き我ら武田の足元に及ばぬが、、手を抜かず全力で揉み潰せ…… かかれ!』

浜松城 徳川本陣

徳川家康『……巨大な陸の鯨がこの遠江を攻めくるか……皆の者!防備を固め……』

鳥居四郎左衛門『若!、武田軍本隊、4万の軍勢、浜松城を素通りする模様!』

本多忠真『な、なんじゃと!?…』

成瀬藤蔵『舐め腐りおって!我ら徳川では武田の相手にはならねーってことか!』

田中義綱『……いや、、ま、、まずいぞ!殿!!奴らは!』

夏目吉信『殿!武田がこのまま進むと、堀江城が……』

徳川家康『……ふ…ハハハハ…ハッハッ!…
クソっ!!
……奴らは我らに手など抜いてはおらぬ……
補給路を絶つつもりじゃ……』



堀江城は浜松城の支城である以上に貿易で財を成す徳川家にとって正に胃袋のような物であった……

鈴木久三郎『今、武田軍は三方ヶ原より祝田の坂を降っておるようにございまする』

徳川家康『出るぞ……』

本多忠真『は?…なんと申されましたか?』

徳川家康『討って出る!』

鳥居四郎左衛門『な、なりませぬ!
相手は40,000我らは20,000数が違いまする!』

家臣一同で家康を抑えつける

徳川家康『ええい!離せ!  ワシは無策で動くと言っておるのではない!
よいか!皆の者、わしらは三方ヶ原より祝田の坂を降りておる武田の背後から奇襲する』


夏目吉信『…なるほど、、確かにその策が上手く行けば、、我らの軍勢でも敵を討てるやもしれませぬ……しかし…』

徳川家康『な、なんじゃ!! 武田だから討てぬとでも抜かすか吉信!』

夏目吉信『左様にござりまする。
今は堀江城は武田にお渡しするが良かろうかと…我らは殿さえ無事であれば、、この先、堀江城を取り返す機会はまた作れまする…』

田中義綱『……そうじゃの…殿さえ無事であれば…』

徳川家康『手ぬるいわ!貴様らそれでも武人か!今、堀江城を奪われればその機会は二度と来ぬわ!!』

家康が采配を持ち

徳川家康『皆の者!これより我らは三方ヶ原より武田の背後を突く!出陣!』

短気で気のはやる家康を見て、家臣が落胆する

鳥居四郎左衛門『……殿は昔から短気じゃ、、
短気は損気じゃ…何とかならぬものか……』


夏目吉信が悩みこみ…何かを思いつき

夏目吉信『まだ、手はある……』

成瀬藤蔵『手も何も軍勢に指揮だして殿は飛び出して行っちまったじゃねーか……』

鈴木久三郎『そうじゃ、そうじゃ』

忠真が夏目の瞳の奥の覚悟を見て

本多忠真『……ワシは聞くぞ、、吉信…そういうことか…お主、死ぬつもりじゃな…』

夏目吉信『………』

鳥居四郎左衛門『なんじゃ!若いもんが!水臭いのぅ!この死に損ないのジジィも一緒に行ってやるでのぅ!』

本多忠真『ワシもそれでこの後、殿が変わるのであればワシも黄泉の道、歩んでやるわ…』

鈴木久三郎『わしも行くぞ!』

田中義綱『ワシもじゃ!』

三方ヶ原台地手前


徳川家康『やはり、ワシの睨んだ通り武田は背後には気を遣っておらぬわ……
皆の者!いざ……!?』

三方ヶ原台地には背後から進軍した徳川軍を迎え入れるような形で武田軍40,000の軍勢が立ち塞がっていた

徳川家康『な!なんじゃと!!武田軍は祝田の坂を降りておるのでは無かったのか!!』

成瀬藤蔵『言わんこっちゃねー!』

徳川家康『言うておる場合か!!退却!退却!、、吉信!何をしておる!退却じゃ!』

夏目吉信『殿、、この後は直ぐに怒り考えも無しに動いてはなりませぬぞ、たまには周りの家臣の言葉も聞いてくだされ……』

徳川家康『なんじゃと!こんな時になんじゃ!!……吉信……そっちは退却する方向とは逆じゃ…』

夏目吉信『殿、、今までお世話になり申した…』

田中義綱『我ら徳川家臣団、黄泉の世に行ったとて殿を守りまする……』

鈴木久三郎『殿、、短気は損気ですぞ……』

本多忠真『忠勝!!殿を守れよ!ワシらが道を拓いてやる!』

成瀬藤蔵『よう、反省して下さい!わしら命がけでそれを伝えたいだけでさぁ笑』

徳川家康『…な、何を勝手な!ワシが徳川の総大将じゃ!総大将の言うことを聞け!!
退却じゃ!ならん!いかせん!』

本多忠勝、酒井忠次が必死で家康を抑えている。

鳥居四郎左衛門『…ハガ、ハガ、こんな年寄りにまで若は、死んでくれるなと申される…
じゃからワシらはそんな若が好きなんじゃ…


夏目吉信『殿、ワシらの想い託されてくだされ……おさらばにございまする……
我こそは徳川軍大将 徳川家康なり!』

田中義綱『ワシが徳川家康じゃ!』

鳥居四郎左衛門『ワシよ!ワシこそが徳川家康じゃ!殿、いつか戦の無い世で会いましょうぞ……』

鈴木久三郎『皆の者、殿の影として方々へ散れ、、そして、必ず討たれるのじゃ!
ワシこそが徳川の総大将じゃ!』

本多忠真『ワシじゃ!徳川軍本隊総大将
徳川次郎三郎家康じゃ!!ワシの首を奪って手柄としてみせぃ!』


武田軍本隊にそれぞれ討たれる


徳川家康『いやじゃあぁぁぁ!!ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』


三方ヶ原台地

武田軍本隊

武田信玄『主を守る為に命を捨てる……か…
家康の小僧には過ぎたる者たちじゃな……
この信玄感服仕った!見事なり!』


浜松城近くの農村

家臣たちとも散り散りに別れ、鎧も脱ぎ捨て
フラフラと浜松城へ歩く家康……

腹が減り……めまいがして倒れるが、
農家の家から匂う食べ物に釣られ農家に入る

吉蔵『なんじゃあ…あ!貴様は、、、あ!さ、侍、、!!、こ、殺さないでくれぇ!!』

イト『ん?、、あんた!この人、、、殿様でねーか!?』

吉蔵『お?……あ、、ホントだ!浜松城の殿様でねーか!どうしただ!?』

徳川家康『………そ、、、$€ly£*%#}?$……』

吉蔵『は?、、何じゃって!?』

徳川家康『£+*$%#<~{}*€…!!』

イト『何って言ってるんだい?』

イトたち夫婦が耳を家康に近づけると急に

徳川家康『その粥をワシにくれ!!』
(信じられないくらい大声で)

イト達『うわっ!!び、ビックリした!!』

吉蔵『こ、これを食いたいって言うのか?!…いや、ダメだダメだ!こんなの殿様が食うもんじゃない!!』

イト『それに私達だって明日食べられるかどうかすらわからないんだ、、いくら殿様の頼みでも……』

徳川家康『……すまぬ…でも、頼むいずれ、恩を返す故、、ワシにその粥をくれ……』

吉蔵『でも、腹壊すかも……』

イト『……あんた、、何かきっとあるんだろうけど、、食べてもらおうよ……腹減ってたら何でも美味しいっていう時もあるだろうからさ』

吉蔵『…んーー、そうだな、不味くても文句言わないでくれよ……』

吉蔵が鍋から粥を取り出して家康に与える
家康は何杯もおかわりをした。

徳川家康『うっうぅぅ……』

吉蔵『美味しくて涙流してるのか殿様!?』

イト『……違うみたいよ……何か悲しいことがあったの?殿様…?』

徳川家康『…ワシが短気だったばかりに……大切な家臣が皆、皆死んでしもうたんじゃ……
ワシなんて大した者でないのに……』

イトが家康を引っ叩く。

吉蔵『な、おい!イト首刎ねられるぞ!やり過ぎだ!おい!?』

イト『みんな、死んだ人たちは殿様が好きで好きで守りたくて死んだんだろ!死んだ人たちの想いは何だったの?』

徳川家康『戦の無い世……』

吉蔵『それはデッケェ話だな💧
でも、叶えられると思うぜ!あんたなら!』

徳川家康『そ、そうか、うっうっうぅぅぅぅ……』



その後、短気を抑えて戦国の世を駆けた徳川家康が天下を統べ天下人になるのだが、また、それは別のお話し……


                            完

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