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策略と膠着

原作 梵天彪雅

    『策略と膠着』

天文8年、三好孫次郎利長は代々、三好本家に受け継がれてきた河内十七箇所代官職の座を細川晴元の元、新たに就任した三好分家の三好政長から代官職を奪還するべく細川晴元、三好政長討伐の為、挙兵した
しかし…本願寺証如率いる一向衆が三好軍に付いているとの虚報に騙された細川晴元は三好政長を置いて丹波国高雄山にある神護寺へ逃亡、三好孫次郎利長率いる三好軍は標的を三好政長から逃亡した細川晴元に変え、丹波国高雄山神護寺へ進軍したのである。

神護寺は京の都の北にある三好軍は高槻の北にある山崎から京の都へ攻めると京は焦土と化するのは必定であった
その為、京の都に帰っていた将軍、足利義晴は嫡男の菊幢丸を京、左京にある八瀬に逃がすと直ちに美濃の土岐頼芸、越前の朝倉孝景、若狭の武田信豊、能登の畠山義総に出陣し鎮圧の書状を送り木沢長政に三好軍を止めるよう説得に行かせるのであった…

〜能登国、七尾城本丸〜

遊佐総光『殿、公方様が三好利長の討伐の為に兵を出すように書状がまいっております』

平総知『公方というても今や室町幕府は既に無いではないか』

能登守護代 
畠山義総『度重なる戦にて足利家は京の都を火の海にし京におった公家衆らは皆この能登に逃げて参った…ワシらはその逃げ仰せた者らの食い扶持を与えてやる財力があるが足利家にはかような甲斐性もないそのような者らを我らは主とは認めん!捨ておけ!』

遊佐総光『はっ!』

〜美濃国 稲葉山麓屋敷〜

稲葉六郎『殿、公方様から三好勢討伐の勅命が……』


土岐頼芸『そうか!公方様からの命か…しかし、我らの屋敷は度重なる水害から流され戦力もままならん美濃守はいただいたが美濃から今、兵を出す事はまかりならん……そういう事故の…使者を追い返せ…』

深芳野『あら、殿、公方様からの命は宜しいので?』

土岐頼芸『美濃守の守護で何が出来るものか!六角から貰うた嫁は所詮、戦を終わらせる為の口実よ…儂はな深芳野〜其方さえ居れば十分じゃあ❤️』

深芳野『あらあらまぁ〜』

土岐頼芸『何を観ておる!皆の者下がれ』

稲葉六郎『……しかし!公方様の命は!』

土岐頼芸『貴様は誰の家臣なんじゃ!』

稲葉六郎『…グッ……』

その場から去る

〜若狭国 武田氏館〜

市川定照『お館様、公方様より三好伊賀守討伐の命が下りまして御座りまする』

武田信豊『この戦況ではのぅ……公方様に舅殿には義理を果たさねばならん!
熊谷!この戦況、どう見る!』


熊谷勝直『されば、三好は高槻から北上して京の喉元、山崎に陣を張ると見られます。
公方様の命とはいえ京の都に入る頃には三好勢と京の都で激突する事になると存じまする。
なれば我らは細川晴元殿が籠られる神護寺背後の高雄城に入り三好勢の出方を観た方が良いかと』

武田信豊『ふむ…三好勢の出方次第では京の都はいずれにしろ焦土と化すか……』

粟谷光若『されど、出兵すれば公方様や六角殿への義理は果たせましょうぞ』

武田信豊『ふむ、これより我らは丹波高雄城へ進軍す!』

若狭武田家来衆『は!』

〜越前国 一乗谷館〜

山崎吉家『お館様!公方…』

朝倉孝景『そう騒がずとも三好の事であろう?』

山崎吉家『ご存知であられましたか……左様、三好勢が摂津十七箇所代官職を分家より奪い返す為に挙兵したとの由』

朝倉孝景『やはりのぅ……晴元では家臣は手名付けられんかったか』

赤座直則『されば、我らはいかがなさいまするか?』

朝倉孝景『儂らか〜……儂らは動かん!』

赤座直則『な!公方様の命を反故になさるので?』

朝倉孝景『そうではない、儂らがこの越前にいる事自体が三好にとっての脅威じゃからじゃ、若狭の熱血漢は既に動き出しておるようじゃが…まぁ、観てみぃこの戦況じゃあ京の南におる三好勢には手出し出来まいて…』

山崎吉家『全てを見越した上での采配!見事にございまする』

この後、山崎に布陣した三好孫次郎利長に六角定頼が三好政長、細川晴元との講和条件を取付け三好孫次郎利長は越水城を正式に貰い受け、摂津半国守護に命ぜられこの戦は京の都を焦土と化する事なく終戦を迎えた……
一時の…本当に一瞬の平穏が訪れたのである……

天下人!三好長慶!に続く…

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