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おむすびまんは高級米


おむすびまんは、アンパンマンの世界では希少価値が高いことで知られています。とくに、ジャムおじさんの周辺では顕著です。ジャムおじさんの身辺警護の任に当たるのは、主に小麦粉の塊(パン)達です。想像して下さい。小麦粉まみれになってしょぼくれているジャムおじさんの目の前に、突如として光り輝く米粒が舞い降りるのです。これが救世主でなくてなんなのか。メシアならぬ飯屋です。ジャムおじさんがおむすびまんの虜になることは想像に難くありません。お米は固くない方が良いですね。

物事の価値というのは、周囲の状況によって大きく変化します。たとえば、工業高校の女子などが良い例です。工業高校というのは「クラスの9割が男子」というケースが珍しくありません。そんなむさくるしい環境の中に、数人の女子が入り込んだらどうなるでしょうか。もう上を下への大騒ぎです。恋のから騒ぎ。女王アリにかしづく働きアリのように、男子はせっせと働くのです。働きマン。働くおっさん劇場。是非に及ばず。

閑話休題。おむすびまんの顔は、コシヒカリやササニシキなどの高級米で作られています。「鼻持ちならないブランド野郎めが」と言われている所以です。ただ、お米が「腹持ちがいい食材」であることは厳然たる事実です。いくら相手が気に食わなくても、その実力はしっかりと認めているのです。アンパンマンの世界では、実利主義が浸透しているのですね。ジャムおじさんによる長年の啓蒙活動が実を結んだのです。やるじゃねぇかあのジャム。

おむすびまんはの一人称は「あっし」であり、語尾には「ござんす」を付けて話します。一人称は「木枯し紋次郎」による影響であり、語尾は『北風小僧の寒太郎』による影響でしょう。おむすびまんは普段、水戸黄門(テレビドラマ版)のように諸国漫遊して悪者を退治しています。悪者の明確な定義はありません。あえて定義するのであれば「おむすびまんをイラつかせた奴」です。どんなことがきっかけで「味方」から「敵」に転じるかがわからないので、周囲の人間は常に戦々恐々としているのです。ぷるぷる、ぼく悪いおにぎりじゃないよう。

また、アンパンマンやバタコは、おむすびまんのことを「さん」付けで呼んでいたこともあります。この「さん付け」には、相手を敬う気持ちだけではなく、相手を不審に思う気持ちも込められているのでしょう。おむすびまんという、おむすびなのか中華まんなのか判然としない名前を持つ相手に対して、どのように接したらいいのかわからずにアタフタしている彼らの姿が目に浮かびます。そんな彼らが協議の末に出した結論が「とりあえず『さん』を付けておこう。なんか偉そうだし」というものだったのでしょう。素晴らしい危機管理能力であると言わざるを得ません。


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