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バタコの心は美しい


アンパンマンの世界では、バタコ(敬称略)は「最も心の美しい女性」と言われています。バタコが自画自賛しているわけではありません。ばいきんまんが拾った「魔法の鏡」がそのように語ったのです。ただ、バタコが魔法の鏡を脅してそのように言わせたという可能性も捨てきれません。「アタイがこの世界で最も心が美しいって言いなさない。さもないと、鏡を砕いて庭に埋めるわよ」と魔法の鏡を脅迫するバタコの姿を容易に想像できます。イメージというものは、その人の日頃の行いによって形作られるのです。

初期のバタコは、かなりヤンチャな性格でした。間違っても「ヤムチャな性格」ではありません。サイバイマンごときに後れを取るような性格は要りません。昔のバタコの口癖が「美人の命は短い」だったことからも、当時のヤンチャぶりを感じ取ることができます。自分の容姿をいささか高く見積もっているようですが、人間なら誰しもそのような性質は持っているので問題はありません。たとえそれが強烈な自己愛と醜悪な自惚れの上に構築されたものであってもです。

当初、テレビ版のバタコは、おむすびまんが旅の途中にパン工場へと立ち寄るのを楽しみにしていました。おそらく、現地妻が抱く心持ちと似たようなものでしょう。ちなみに、おむすびまんは、諸国漫遊して悪者を退治しています。言うなれば、水戸黄門のような存在です(実際の水戸黄門は諸国漫遊していないが)。おむすびまんの風貌は、清水次郎長をイメージしてもらえばわかりやすいと思います。「清水次郎長に似ていますね」と言われて悪い気がする男はいません。いやマジで。

バタコといえば「アンパンマンの顔をもの凄いコントロールで投げる人」というイメージが強いと思います。ばいきんまん達に邪魔をされても、百発百中でアンパンマンの顔を所定の位置(パン頭置き場)に投げ込むことができるのです。バタコの正確無比なコントロールを目の当たりにした人達は「バタコは投手に向いている」と異口同音に言います。しかしながら、バタコに向いているのは、投手ではなく内野手です。

投手は常に一定のフォームでボールを投げることができますが、内野手はどんな体勢からでもボールを投げなければなりません。様々な妨害をかいくぐって、目的の場所までボールをしっかりと運ぶのです。バタコが常日頃から行っていることなので造作もありません。バタコとしての本分を全うするためには、内野手に転向するのが最善策なのです。バタコの気持ちはナックルボールのように揺れ動いていると思いますが、プロ野球の内野手のレギュラーの推定年俸を見せれば即断即決するに違いありません。パンの生首を投げ続ける人生にさよならバイバイキーン。



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