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麺箆


クマムシの最大のチャームポイントといえば「クリプトビオシス」です。クリプトビオシスとは「隠された生命活動」を意味する言葉です。まかり間違っても、隠し子を意味する言葉ではありません。「周囲の厳しい環境に対応するために一時的に生命活動を停止する」のがクリプトビオシスです。俗に言う「死んだふり」ですね。アナグラムは「踏んだ尻」です。持つべきものは尻の弾力性ですね。

ちなみに、クリプトビオシスは「乾眠」とも呼ばれています。まぁ乾麺とほとんど同じですね。スーパーマーケットの乾麺のコーナーには、うどんやそばやパスタやラーメンの乾麺が所狭しと並んでいます。その押し合いへし合い具合は、満員電車やフルーツバスケットを彷彿とさせます。パーソナルスペースを奪い取るためには、尻の力を最大限に発揮しなければなりません。人間しりしり。

ぎゅうぎゅう詰め状態の麺類に対して「お前ら譲り合いの精神を持てよ!」と声高に叫んでも徒労に終わるだけです。なぜなら、彼ら麺類と我ら人類の間には「言語という断崖絶壁」が立ちふさがっているからです。さらに言えば「被食者と捕食者」という立場上の違いもあります。そもそも麺類と人類とでは、それぞれのバックボーンが大きく異なるのです。

そのため、我々人類が彼ら麺類のためにできることは、ごくわずかしかありません。その筆頭は「感謝の気持ちをもって麺をすする」ことでしょう。面と向かって心情を吐露するのは、なかなかにして気恥ずかしいものがあります。感情という添加物を麺の中に練り込むのもまた一興ですね。麺に対してどの角度から切り込むかは、個人の裁量に任されているのです。

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