頭山
落語の「頭山」をご紹介します。けちべえという男がいました。その名の通り吝嗇家です。お茶のティーバッグを繰り返し使いそうなタイプですね。成金おじさんのように、お札に火をつけて「どうだ明るくなったろう」とは言わないと思います。火をつけるならハートにしましょう。
桜を見ながらぼんやりと歩いていたら、サクランボが落ちていました。言わずもがなですが、サクランボとけちべえは、それぞれ個別の存在です。この点をしっかりと認識しておく必要があります。そうすれば「あなたとあたし さくらんぼ」という混迷状態に陥ることは避けられます。もういっかい!!
アンコールに応えるかどうかで悩む夢から覚めると、頭から桜の木が生えていました。花は桜木 人は武士。虫は嫌いよ カブトムシ。カブトムシといえば、カツオ節を猫に与えるのはあまり良くないらしいですね。なんでも、ミネラル分が豊富に含まれているので、腎臓病を引き起こす恐れがあるのだとか。知らなかったニャア。
桜の木を目当てに、花見客が訪れました。日頃の鬱憤を晴らすかのように、酔っ払い達がどんちゃん騒ぎを繰り広げています。もしもこの場にジョージ・ワシントンがいたら、斧で桜の木を切り倒していたでしょうね。ちなみに、ワシントンと桜の木の話は捏造であるといわれています。もうなにが本当かわかんねぇな!
文字通り頭に来たけちべえは、桜の木を掴んで抜いてしまいました。頭の土地の所有権はけちべえにあるので、桜の木を抜くのも自由です。いくら花見客が非難の声を上げても無駄です。無駄毛と無駄木は容赦なく引き抜くのがセオリーです。好き嫌いはイナメナイ。
見物客はどこかへ行ってしまいましたが、知る由もありません。桜の木と見物客を始末したけちべえは、とても爽やかな気分になりました。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のように爽やかです。なお、さわやか3組が出る幕はありません。僕らは仲間だ~♪
ところがどっこい。けちべえの頭には異変が起こります。なんと、頭に穴が開いてしまったのです。穴の面積は広くて大きいので「これは毛穴だから心配するな!」と周囲の人を説き伏せることもできません。一刻も早く、穴をなんとかしなければなりません。Fixing a Hole.
サージェント・ペパーを聴きながらのんびりしていたら、雨が降ってきました。雨水が穴にたまって、池を形成しました。「水を捨てるのはもったいない」というドケチ根性の持ち主であるけちべえは、池をそのままの状態で放置していました。けちべえの頭には「池の水を全部抜く」という選択肢はありません。
するとどうでしょう。「釣りに適した池がある」という噂を聞きつけて、釣り人達がけちべえの頭に集まってきました。桜の木の二の舞ですね。けちべえのイライラは絶頂です。この状態で「電撃イライラ棒」にチャレンジしたら、即ゲームオーバーになるでしょう。これができたら100万円!!
炎のチャレンジャーのことはさておき、けちべえは行動を起こしました。怒り心頭に発したけちべえは、池に飛び込みました。そうです。自分の頭の池に身投げしたのです。「自分の頭上に存在する池の中に、自分の身体を投げ入れる」という離れ業をやってのけたのです。アッパレ!
池に飛び込んだけちべえは、当然の帰結として御陀仏になりました。池の中には、けちべえの水死体が浮かんでいます。ですが、その池の所有者である「けちべえの頭」は依然として残ったままです。なんともミステリアスで味わい深い話ですね。ミステリアス・ボーイのけちべえは、月明かりを浴びて今も輝き続けています。もっこり山は永久不変です。
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