日本のコロナ禍の超過死亡とコロナの流行、ワクチン接種の関係について、
最初に
日本の超過死亡発生時期がワクチン接種と関係しているためワクチンが超過死亡の波を起こしているという主張が以前から広くみられるのでこれがありえない事を色々な観点からノートで説明してみました。
mRNAワクチンでは心筋炎のリスクが上昇する事が知られていますが致死的な事例は極めて稀とされ他に様々な客観的な医療記録と接種記録の照合から致死的な疾患が接種直後にリスクが上昇している事が再現性をもって確認されている事例はありません(CVSTを始めとして単発的なリスク上昇の報告はあるのですが別の研究では見られなかったりします)。これは接種の因果で死ぬ方が0という意味ではないですが統計的に1年たってもしっかり確認できないほど稀な事であるという事は言えると思います。
ワクチンが人口動態に影響が出るほど死亡を起こすという説は一切の真実性がないので、日本の21年の接種時期と21年の春以降の超過死という一点だけをみるとこじつけられても例えば他国ではどうですか?超過死亡が出ている死因はいつどこから何がでていますか?都道府県別の超過死亡の相関対象をみるとどうですか?国別で相関対象を見るとどうですか?20年の秋はどうでしたか?という観点から見ると全部において辻褄が合いません。
また世界中には接種データと超過死亡データが山のようにあります。国内でもいくつかの国でも地域ごとに提供されています。これらから接種とコロナがどちらが超過死亡を起こすのに重要なんて事はわからない筈がなく反ワクチン活動家たちは世界の200の国地域の中の1,2,3,4回接種の波と超過死亡の波がマッチした稀な事例だけを取り出している事は自分でデータをみてれば簡単にわかります。例えば以下がオランダで4回目と超過死亡が同期した!ワクチン回収を求める!とツイッターで拡散されていた噂の検証で作ったものです。オランダは1,2,3回目も超過死と本当に全く関係しません。超過死がオランダと連動している周辺国や欧州1、4回目を接種したスウェーデンも4回目と超過死は連動しません。横断的に見ても4回目接種の度合いと超過死は関係しません。冬季等の他の感染症等の増減の影響が大きい時期の時間的な関係を除くと全て一貫してコロナとは明瞭な関連がみられます。
①日本の21年の死亡は20年比で67000人も死亡が増加した。これはワクチンのせいだという話のおかしさについて。ー毎年の死亡の自然増加と前年が死亡が少なかった際の翌年の死亡増加を考慮していない。ー
基本的な点なのですが、日本の死亡は毎年平均して約20000人程度増加する傾向があります。超過死亡といった時にこの自然増加を考慮しないとなりませんが、この67000増加がワクチンのせいという話はまずここから考慮していません(図1)。しかも高齢者の寿命の急激な伸長には限界があるようで、前年の死亡が少なかった年は、翌年死亡55000人以上死亡が多いというのもこの20年で今回が3度目です
またこれも基本的な点なのですがコロナ前の毎年の死亡の自然増加傾向を考慮すると日本の21年の末までのコロナ禍の超過死亡は累積でマイナスです。自然増加傾向を考慮した超過死とは下の図2のようなものが1つの単純な計算方法です。生存している年齢別の人口と年齢別死亡率を考慮したりする複雑な方法もあるかと思います。私がこのnoteで自分で計算している超過死はこれを使っています。excelでliner.forecast関数で計算する事ができます。
ですので日本は21年末まではコロナ禍を通した累積の超過死亡が出ているわけではないのです。これは私独特の意見という訳ではなくour world in dataというグループの超過死亡評価システムでも同様です。
なお例えば大統領が感染対策にネガティブなメッセージを発し続けたブラジルの超過死亡、ワクチンが進まなかったロシアやブルガリア、ルーマニア、初期に大きな被害となった英国、いずれの要素もある程度もつ米国、初期に大きな被害を許した英国などの超過死亡推移は以下のような感じです。100万人あたり3200人死亡というのが西浦予想の被害でしたがour world in dataの超過死亡でみるとこのラインは現在超過死亡統計が21年6月末まである国94か国の中で28か国が21年11月末のオミクロン流行直前期までに越えています。
平均寿命統計で見ても日本やゼロコロナ高齢国は21年の死亡率もコロナ前の増加傾向からほとんどマイナスがみられないという点もあります。our world in data提供のものです。高齢の低接種国の代表例であるロシア等と比べると著しい差がわかります。平均寿命は年齢ごとの死亡率から計算されるので人口ピラミッドに変動があったり、前年に人々が死ななかったため今年は超高齢者が多いといった要因に影響を受けにくいです。
厚労省発表の統計です。少しour world in dataのものと違いコロナ前の傾向で順調に伸びていった値との比較をすると0.1~年ぐらい短いようです。これらは新型コロナの死者があって、自殺増加もあって、一方で冬の感染症等の減少もあってという多様な要因を受けての結果なので細かい要因はわかりませんが、接種で何十万も死ぬはずがない人が死んだとか、ワクチンの方がコロナより毒とかそういった話が(低接種蔓延国の被害をみれば)基本的に与太話である事はわかると思います。
②日本の超過死亡はコロナが広がっていた20年も21年の1,2月もマイナスだったのに接種が始まった21年4月から超過死が出たからこれはワクチンのせいという主張の誤りについて~すでに20年の秋から初冬には特に流行地域で目立っていた超過死亡~
実際の毎年の死亡増加傾向を考慮した日本の超過死亡推移は以下のような感じで、2020年10や12月には既に2020年前半の大幅マイナス超過死亡が解消されていてプラス気味に推移していた事がわかると思います。同様の傾向は台湾や豪州といったゼロコロナ国にもみられます。しかし冬の超過死亡の推定は気温や感染症の流行などで毎年のバラつきも大きいため評価が難しいです(例えばWHOの超過死亡では20年12月はマイナスの超過死亡で逆に21年1月が+の超過死亡と算出しています)が、都道府県別の相関を見れば明らかにコロナ流行地域に超過死が集中していた事がわかります。
③欧州の高接種国との比較について~20年12月、21年1月に接種が始まったニアゼロコロナ国はこの時期に概して超過死がマイナス~
欧州の高接種国の接種開始時期と超過死の関係から見ても接種が始まると接種のせいで超過死が出たなどという事は言えません。
日本は一般接種が始まったのが21年の4月なので、1,2月は超過死はマイナスだったのに、4月の一般接種後に超過死が始まった(実際は再開した)ように見えますが、欧米では接種は20年の12月や21年1月に始まっていて、いわゆるフィンランドノルウェーなどのゼロコロナに近い高接種国では接種開始直後も超過死亡はマイナスです。
他に別件で作った豪州の超過死とコロナ死と接種数を同時にグラフ化したものを添付します。
また個別例だけでなく集団解析をしてみますと低接種国も比較的流行をおい死亡を捕捉している欧州で接種開始から8カ月(デルタ変異席巻前)で高接種国であるほど超過死亡ーコロナ死は小さくなっています。接種するとその月に原因不明の超過死が生じるどころか全く逆でそういうコロナ死で説明できない超過死亡は接種している国の方が少ないんですね(ただしこれは公式コロナ死報告以上の超過死の発生には様々な理由が考えられ、それが高接種国の方が少ない理由にもワクチンの効果以外にも西洋の高接種国ほど医療体制や検査体制が強いなど様々な理由が考えられます)。
ですので、接種開始直後に超過死亡が生じる、のではなく、冬場は他の感染症死亡が激減していると、コロナで多少死亡が生じるくらいでは超過死亡はマイナスになる、高接種国ほど公式コロナ死亡数で説明できない超過死亡が少ない、というのが欧州における正しい理解です。
④南半球の国の超過死亡との比較について~接種開始に呼応しそれまで発生していなかった超過死亡が発生、または増加なる傾向は全くない。~
南半球にはオーストラリアやニュージーランドというゼロコロナ高接種という良い好例があります。こうした国々を見ても接種前までは超過死が出なかったのに、接種後に超過死が出た、とは言えません。
これらの国では冬が7,8月なので、21年3月の接種開始後なのに21年の7,8月は超過死がマイナスです。
また豪州などでは、超過死亡は20年の秋から若干超過死亡が生じ続けているようです。両国のゼロコロナ時代の超過死推移の違いの理由は不明ですが、いずれにせよ両国とも21年の3月を境にNZや豪州の超過死亡パターンが上ぶれしたということはありません。
両国とも接種パターンはほぼ同じですが豪州が22年1月にオミクロン、NZは22年4月にオミクロンが流行し、その時に両国とも超過死亡が出ています。当たり前ですが、コロナが超過死を起こしておりワクチンは微塵も関係がありません。
豪州は、年齢補正死亡率というデータを提供しておりそれを見ると20年の秋以降の年齢調整死亡率は、19年の同じ月より高い訳ではないそうです。つまり20年の秋以降の超過死は単純に(20年前半の超過死亡の激減で)集団の構成員が超高齢者を多く含むようになったためだと説明できることになります。がそれはNZでも同じであるため待機手術、などさまざまな理由が違いにはあるのかもしれません。
その他にも様々な接種時にほぼゼロコロナ政策が成功していた小国のデータがあります。こうした小国の統計はブレが大きいのとおそらく外国人の出入国の変化が影響が大きい事があるため、参考になるかは限定的ですが、接種を開始すると超過死がそれまでの動態から一変している、というような一貫した法則を見つけるのは難しいでしょう。
⑤死因別の超過死亡推移から見た観点~日本の20年後半以降の超過死亡をコロナ死以外でリードする死因は老衰や誤嚥性肺炎でこれは20年の秋からずっと増え続けており接種との時間的関係性がない~
全死亡数の超過死亡を計算するのと同じ方法で死因別の超過死亡を計算する事ができます。
死因別から見ると、日本の超過死亡をコロナ以外で引っ張っているのはダントツで、水色の老衰と誤嚥性肺炎(を中心としたその他呼吸器疾患)です。これは大幅なマイナス超過死が続いた20年半ばごろから目立ち始めていて、21年の1,2月もその傾向は変わりません。4月に増えた訳ではなくだんだんと増加していっていますので接種とは全く時間的な関係性がありません。老衰は平均死亡年齢が92歳にも上る天寿に近い形での死亡です(人口動態の死因別死亡数の年齢別人数から計算)。豪州同様、20年前半の感染対策で集団の構成員に超高齢者が増えすぎたため、それらの方が天寿に近い形で死を迎えている方が増えているため、20年後半以降それらの死因で超過死が出ていると解釈するのが自然なように思います(勿論20年秋に本格的に広まったコロナ等の影響もあると思いますが(図))。
橙色の循環器疾患の超過死亡も大幅マイナスだったのは20年前半と21年1,2月でその他のコロナが多かったり感染症のマイナス超過死が解消されている時期にはマイナスが解消されている事がわかると思います。22年の2月には爆発的な増加がみられます。
なぜ循環器疾患死亡の超過死が感染症死亡の超過死亡と同期するのかは100%確実ではないですがコロナでも他の感染症でも感染症の直後に循環器や脳血管の死亡は起こりやすいという事が繰り返し示されています(下記参照)ので感染症の超過死亡がマイナスである時期に循環器死亡の超過死もマイナスになっているのは驚くべきではないのかもしれません。
⑥県別の超過死亡から見た観点~コロナ死が一人増えると超過死亡が2~3人毎回増える~
県別の超過死亡が何と相関しているかという観点で見ても超過死亡を引き起こしているのがワクチンとは言えません。都道府県別のコロナ死が全死因に占める割合と各期間の超過死亡の関係は20年後半のものは上述しましたが、21年や22年のものは下図の通りです。大体どの期間でも1人コロナ死が増えるごとに2人強超過死が増えています。当たり前の話ですが、コロナは世界中で莫大な超過死を引き起こしており日本でもこのように地域別にみると接種開始前から例外ではありません。
これは超過死亡は5000人増えた、コロナ死は2500人増えた、残りはワクチンだみたいな三段論法が通じない事も同時に意味します。
都道府県別の接種率とは21年は良くも悪くも相関がありません。22年の第6波ではある程度傾向があります。ただし日本はワクチンは人口配分なので、ほとんど接種率に違いがないが都市部が若干接種が遅れる傾向がある。明らかに人口密度の高い都市部に流行が2020年から集中していた。そのためわずかな接種率の違いより都市部かどうかの方が影響が大きい。という要因によると考えられます。コロナが蔓延している米国では普通に、接種率が高い地域ほど超過死亡が少ないという傾向がありました。
欧州も同じです。いずれも色々交絡因子はあるかと思います。
私が言っているだけではなく論文も出ておりました。
なおオミクロン期通算でも8月あたりまでやはり綺麗に高接種国の方が被害が少ないという傾向があります。→21年12月はまだデルタ期最盛期である国も結構あるため、やや接種国は有利かもしれません。この後、差はもっと微妙になっていきます。
22年春以降だけに注目して高接種国の方が被害が大きくない?とかマスクしている日本が世界一の感染数!とかやる一発芸がネットミームでは人気ですが、普通にローガードの国地域が先に感染したり死んでるだけだったりします(南欧など一部は観測史上最大の熱波の影響もあります。あとデルタ以前で低接種国はすさまじい超過死が出ているので、高齢者が何%も減少してたりします)。
⑦何故コロナ死やインフルエンザ死が1人増えるとその倍以上超過死亡が増えたりするのかの候補。感染症後の血管イベントリスクの増加。退院後の死亡増加。検査不足。不審死。救急体制の崩壊など。
コロナで一人死ぬと2人以上超過死亡が増えているという統計を見せると不思議がる人が結構いて機序を尋ねられる事が多いのでいくつかその候補を記載します。なおこの乖離は一部は他の感染症の激減によるものなのですが、それ以外の時期も国によって結構違うため検査医療救急そして死因の決定方針等様々な影響を受けているものと思われます。
1つはコロナに感染すると血管イベントのリスクが激増するというものです。これは無数の知見があります。以下に例を1つ添付します。
地域別にみても例えば米国では明らかに視認できるほどの循環器疾患死の著増を20年の春の流行時に認めています。
日本だけでなく米国でも20年春だけでなく接種時期以降も流行期の心臓病の超過死はコロナ死とよく関連しています。
時期的にも流行と循環器系疾患の超過死亡はよくリンクしている事が報告されています。
医療救急体制の崩壊も最も考えられるメカニズムの1つですがシンガポールはコロナ死の超過死の総括をしており、超過死の5分の3はコロナでそれ以外の死亡率超過も感染者のみから生じており、医療体制の逼迫の影響は限定的(心臓発作や脳卒中の発症後の救命率は例年通り)というレポートも出しています。この際、コロナが死因になってなくても感染後90日が死亡が多い事が述べられています。あくまでシンガポールの話です。
なお超過死とコロナ死の乖離は冬季以外も生じ国による差も大きくシンガポールはそれが大きめな国の1つです。この乖離はその機序はともかく検査数と関連してる事もわかります。
救急体制の逼迫もよく報じられていました。
アドバイザリーボードも人口動態の統計を見る前から、オミクロンで心不全や誤嚥性肺炎、持病が悪化し入院増加につながると指摘していました。現場では感覚的に明らかなんでしょうか。
これと関連してあくまで数十名程度の全員2回接種者の集団感染の少数研究ですが、認知症の施設の方の平均89歳の方が、集団感染したところ、90日以内に26%が死亡、そのうちの4分の1程度が新型コロナを直接の死因(非感染群も6%程期間に死亡)としていたという報告がされています。
認知症の進行、寝たきりや経口摂取の減少、併存疾患の併発、全てこの少人数で明確な有意差がでており、上記アドバイザリーボードのような一般的な見解を裏付ける報告です。ただ直接死因でない場合にCOVID-19がどこまで死因として記載されるかは医師の裁量によるのかもしれません。
また長野県の報道では10日間の療養期間経過後の死亡を新型コロナの死者と基本的にカウントしていないという風にも報道されています。これは地域にもよるのかもしれませんし、ケースバイケースなのかもしれませんがこんな運用をしている地域・病院が少なからずあるのなら超過死亡が新型コロナウイルス死者に合致しようはずがありません。
一方で人口動態に反映される死因に関しては直接の死因だけでなく医師が影響を及ぼしえた疾病に新型コロナが記載されると、少なくとも直接の死因が老衰の場合に、新型コロナが死因になるという風にも報道されています。この報道では、何故コロナ死者多い?という論調ですが、正しい疑問は、なぜ新型コロナの死者より実際の超過死者が多い?ですよね。
上記のシンガポールのケースにしてもそうですが、一定期間後も死亡率は当面上昇しているという研究はよくみられます。
いわゆるlong covid症状を示す方の全死因死亡率が直後1か月だけではなくその後も高い、という研究もあります。65歳以上の方が8割以上を占めている研究で、諸条件はマッチしてありますが、21年の7月までの研究です。
⑧学術的な背景について:致死的な疾患が接種後に増える事が多重比較補正後に再現性を持って確認できない。
ワクチン接種後に特定の疾患による医療記録が多く発生するかは複数の国でマイナンバーシステムや保険制度などで照合できる形になっており客観的な統計でモニタリングされたり研究報告されたりしています。こうしたシステムでワクチン接種後には特に若年の男性で統計的に心筋炎が多く発生する事が知られていました。同じ手法でたとえばくも膜下出血や心筋梗塞などより致死的な疾患はどうであるかについても調べられています。
そうした調査の結論は散発的に多重比較補正を経ていない有意性のある変化がみられる事があるが再現性をもって確認する事ができない。というものだと思います。多重比較補正というのは簡単にいうとサイコロを振って2回連続で6が出ればそのさいころを特別なサイコロとみなすというテストをしている時に、いくつもサイコロをふると偶然6が2回出る事もあるので、そのたくさんのサイコロを振った事を考慮して統計検定をしようというものです。
現在こうした疾患の発生の研究で王道となっているデザインは、self controlled case series studies SCCSというものです。同じ個人のグループで接種の後と前のしばらく経過した後の一定期間と接種直後の期間を比べ特定の疾患の医療記録の発生率が上がっているか検討するものです。これは無作為ランダム化比較試験ではないので、完璧な研究デザインではありませんがこうした研究のスタンダードな手法になっているものと思います。
そうした研究の1つが英国からファイザーワクチンの950万人の接種記録と医療記録を用いベースラインとの各心血管疾患有害事象発症率の比較をした研究です。ファイザーはCVST以外は概ね異常なしという結果。接種2-3週間後に脳梗塞の若干の確率の上昇がありますが多重比較補正無しなので偶然の域を出ず。接種直後はむしろ低発症率の疾患が多めという知見でした。
上述のイスラエルの研究には未接種者と疾患の発症リスクを比較したものがあります。ここでも有名な心筋炎のものリンパ節腫脹や帯状疱疹などに接種後のリスク増加を認めていますが、致死的な疾患のリスクの増加は見られません。
再現性云々いっているのは個々の研究では多重比較補正をせずにこの疾患が増えたとか減ったとかいう事があるのですが、一貫した知見がみられない場合にそういっています。例えば上記のイギリスの研究では脳梗塞に短期間だけ非常に小さいリスクの増加を認めていますが、別の米国の研究ではそうした傾向すらありません。イスラエルの研究では虫垂炎のリスクの増加を認めましたが米国の研究ではありません。米国の研究では静脈血栓塞栓症のリスクの増加をみますがイスラエルや英国の研究では見られません。
ただこれらはランダム化比較試験ではないので限界があります。例えば未接種者と接種者は様々な統制を行っても統制しきれない違いがあるかもしれません。またSCCSの研究にしても同じ人物の中でも接種をする時はどういう時かというと風邪をひいて家で寝込んでなかったりする時、つまり予定通り体調に問題がなく接種ができた場合なのでそうした要因の影響もあるかもしれません。また小さいリスクを検出するためにメタアナリシスなども求められると思います。
おまけ⓪ イスラエルが日本の3,4回のように超過死亡が接種と連動しているという話について。~2回の追加接種をいずれも流行に応じて決定したイスラエル。超過死亡はコロナ死によってほぼ完全に説明できる。接種と流行は4回目接種で明確にずれている。大半の周辺国では全く同期してないしイスラエルの超過死亡率は中東では断トツ。~
反ワクチン界隈がよく使う話にイスラエルにも超過死亡が接種と連動しているというものがあります。これは、そういう国を選んでいるだけなのですがこの話について検討してみます。
実際再現性はあるのでしょうか。周辺の中東やアフリカで比較的地域の中で検査数が上位で人口が一定程度あり超過死亡データが手に入る全ての国で検討してみました。
接種と超過死の間の同期に再現性があるというのは全く事実ではない事は一目瞭然ですね。イランや南アフリカのように大量の被害がでてから一生懸命接種している国。全然接種が進まずに多くの死亡を出しているレバノン。カタールのようにちょっと連動する国。様々です。イスラエルは検査数上位国でコロナ死で説明できない超過死はほぼ全く存在していない事もわかりますしどの国でも冬季以外は超過死のほぼすべてはコロナに時間的に連動して生じている事が一目瞭然です。
でもイスラエルでこれだけ合致しているってことは接種が悪さして流行を引き起こしたんじゃないかという人もいるでしょう。
しかしイスラエルは3回目も4回目も単に流行に応じて実施を決めただけなので、そんな説明は全く必要がありません。
なおイスラエルは中東では超過死亡率が際立って低いです。中東は国によって高齢化率が非常に異なるため率を使っています。ただ接種前から中東の超過死亡率には差があり、これらの国々には医療レベルをはじめ人種体型年齢や感染対策等を含め様々な国による差があり、接種だけでこれだけ差が生じているとは限りません。
おまけ⓪-2 小島勢二さんの日本で累積追加接種数と累積超過死が相関係数0.99??という主張について→まずトレンドを形成する関数同士に相関をとるのは時系列解析でNGなのは基本。また日本の毎週の超過死はコロナ死ともよく同期し、流行しない地域ではそんな同期は見られません。
次に日本の累積追加接種数と累積超過死数が相関係数が0.99という反ワクチン活動で有名な小島勢二さんのネットミームがおかしな点について考察をします。
まず時系列解析の基本としてトレンドを形成する時系列同士に相関を取るのは無意味な高相関ができてしまいNGです。
たとえばこの高相関の無意味さがわかる例として日本の22年の累積超過死亡数は世界のほとんどの国の累積検査数と0.9以上の相関係数を示す、という事実があります。
そうはいっても毎週の超過死でみても結構同期しているじゃん、と思われるかもしれませんが、上に紹介したように6波ではコロナ死も綺麗に超過死に同期しています。これは一部、日本が3回目接種をオミクロンに間に合わせるために大幅に前倒しし、また検疫によりオミクロン流行を大幅に後ろ倒しにした事にもよっています。
でも地域別にみると全然流行しなかった地域ではそんな同期はなかったりします。他国はもちろん、デルタ期に3回目を打っている国が多いため、そんな都合のよい同期などしてない国が大半なのは↑に紹介してきた通りです。
でも小さい都道府県は超過死のぶれも大きいから都合のいいデータ選んでるだけなんじゃないのという声もありそうなので全部まとめると上に紹介したように下の図のようになる訳です。
おまけ反論集⓪-3 新型コロナ死亡が終息した後も、超過死亡が遷延している?→感染後の超過死亡率の増加が数か月続くので当たり前。
一部の反ワクチン絶対超過死亡ワクチンのせいにするマンの方の中には新型コロナの死亡が終息した後も超過死亡がしばらく続くじゃないかという事を言う人がいます。別の観点から超過死亡がワクチン接種と同期しているという説を論破されている仁井田先生の作成あされた図ですが週別にみると実際は↓のように推移しています。
ですが、既に上記に幾つも例をあげたように陽性後は数か月超過死亡率の上昇が続くのでこれも別におかしくはありません。
おまけ反論集⓪-4 病院で死ぬ人が大半だし、病院で亡くなる時はPCR検査をするんじゃないの?という指摘→PCR陽性になるのは感染後の短期間だけであるのに対し超過死亡率の増加は数か月続いている。
これは森田洋之先生が言われていた件ですが上記と同じでまず基本的な点として新型コロナが検体採取部で陽性になる期間は通常長くはありませんが超過死亡率の増加は数か月続いていますのでこの理屈も成立しません。
しかし体内では感染が持続しているという知見が支配的になっているように思います。
またこの点に関しては、英国では病院や施設ではなく自宅・非施設で亡くなる人の割合がパンデミックで増加したという報告がされているという点にも留意が必要です(日本でどうなったかは把握できていません)。
おまけ① コロナ死の何倍もの超過死亡が起きる訳がない? ~オミクロン流行初期では統計がある国の中では屈指の検査数の少なさでこうした国では流行の度にそうした事がおきるのはざら~
日本がそんなにコロナ関連死亡を見逃しているはずがない、というような言説をよく見ます。しかし実は統計的には日本はオミクロン流行初期までは超過死亡統計があるような国の中では世界でも群を抜く少なさでこうした国でこういう事が起きるのは珍しい事でも何でもないです。上の図の再掲です。これは日本は流行がオミクロン1波では小さかった事もあるのでしょうがそれにしても他国は日本の10倍もの検査数を行っていた事がわかります。
参考用にこうした検査抑制国でコロナ死とワクチン接種がどのように連動しているかのデータをアジアとヨーロッパに関して18か国分追加してみました。人口が数百万いることやオミクロン流行期までデータがある事を基準にしています。日本のように流行の度に超過死がコロナ死の何倍も綺麗に同期して生じる(冬以外)というのは珍しい事でも何でもなく日常茶飯事であり、勿論ワクチンを打たなくても起こっている事がわかります。これは最初におみせしたオランダやスウェーデン、ドイツなどの欧州の超過死亡の国と超過死亡接種数の比率のオーダーは同じです。ワクチン接種と同期を調べるどころかワクチン接種数に比べ超過死が大きすぎてもはや接種数の変動が視認できなくなってしまったことがわかります。
wakuwaku3自作の表だからなあ。という人は、反ワクチン反感染対策系の論者である藤川賢二さんの作ったサイトで好きな国の名前をいれて接種と超過死亡の関係をみてみましょう(なおour world in dataのデータを使っているはずでour world in dataはbooster接種率の情報が3回目接種率の情報である国がしばしばあるため、4回目以降の接種状況を正確に反映してないケースが多いので22年4月ぐらいまでの情報を使うといいと思います)。economistが新型コロナの死者と超過死亡推移の関係も同じくサイトで提供しています(それでもコロナ禍で4年目にもなればパンデミック前の傾向から死亡を予測するのは不正確になってきている国地域が多いとは思いますが)。
おまけ② 接種後半年からコロナ死で説明できない超過死亡が起き始めるという話の誤りについて。~コロナ死で説明できない超過死はコロナの流行に時間的に応じて発生し公式コロナ死数の数に比例し発生し高接種率の国の方が少ない~
これは日本の超過死亡の話ではなく、j_satoさんという反ワク界隈の方が欧州で接種後にコロナ死以上の超過死亡は見られないのに(ワクチンでウィズコロナしてデルタ変異が流行しだした)秋に接種後半年ぐらいたつと超過死亡が出始めたため、接種後半年以降に超過死亡が出ると言い出した事です。
まずこの仮説。勿論、今度は上記でみたように日本は逆にあてはまってませんね。ワクチンで超過死みたいな荒唐無稽な言説は基本的に一切真実性がないのでこういう場当たり的な辻褄が合わない話に必然的になります。
この欧州のデルタ変異流行時の公式コロナ死以上の超過死亡が何と相関しているかを解析したところ案の定コロナ死亡数自体と正相関し、ワクチンとは負相関していました。北欧の前年超過死がマイナスの国では少し大きい傾向があったので、日本や豪州同様、マイナス超過死が続いたため超高齢者が増えている影響もあるはずかと思います。コロナが流行するとコロナ死以外の死因の超過死もそれに同期して発生するというのは上述のように検査の少ない国で特によく見られる現象です。
おまけ③ 厚労省の疑い報告数,米国のVAERS等の任意の主観的報告制度をもとにしたあらゆる言説について~基本的に関連統計は報告者が疑っている事象の統計を示しているだけで現実に起きている統計とは関連性が薄い~
厚労省の接種後の疑い報告は医師が疑うと報告をするだけなので、もちろん接種後に起きた全死亡でもなければ、接種の因果によって発生した死亡でも何でもありません。
日本人の予期せぬ突然病死は全死亡数の15%を占めているといわれ、日本国民の中高年がほぼ全員1年に3回うっていずれかの接種の1週間内に突然死亡する人がたかだか1600人しかいない訳がありませんのでこの1600人死亡報告というのは大幅に自然に突然死する確率より低いはずです。
やれ時間的に接種直後に集中しているとか、やれ若者が一般死亡数にくらべ多めだとか、やれ循環器脳血管疾患に集中している、やれ従来のワクチンより多いとか言われますが、全部、そういう条件だと「疑われる」または「死亡に時間がかからず突然死するため接種直後に死亡が発生できる」だけという対立仮説を全く棄却も反駁もしていません。
特によく見るのが時間的に疑い報告が接種直後に集中しているという件を取りざたする言説です。これは非常によく見る言説でわざわざ巨額のお金をはらって出している意見広告までに含まれているネタなのですが、
タネは簡単で医師の報告義務が接種直後に発生したら報告せよと命じているというものです。なので1ミリも実際の死亡が接種直後に集中している事を意味しません。実際、英国当局は接種者が接種後何週目に死亡したかという統計を発表していますが、下図の通り、接種直後に近づけば近づくほど死亡が少なくなる分布となっており、死亡疑い報告の分布と実際の死亡分布が何の関係もないことをよく示しています。
残されたご遺族からすれば、今まで何十年と生きてきて死期が近いように見えないのに、新型ワクチンうって高熱出して寝込んでそれで数日後に死んでるってどう考えてもおかしいじゃないかとなるのは当然です。医師も当然疑うでしょう。ですが、日本人の死亡の実に10-20%もの割合が突然死である以上、予防接種というのは基本的に統計的にそういう人が大量発生する事になりますので3億回近く1年で接種して自然死の確率と判別できないそういう事が起きたごく少数の方にそういうフォーカスの当て方をするのは誤謬で必ず客観的な頻度の変化を調べなければならないという事になります。
この疑い報告だけでその死亡数が自然発生率より多いという事でもない限りこの疑い報告による稀な死亡を取りざたするのははっきり言って無意味です。これは日本の接種後の有害事象評価システムに根本的に不備がある事の証でもあります。
なお多数の国では接種記録と死亡記録が照合できるシステムがあり、客観的に見て接種後に死亡が多いかは多くの国で評価されていて、全て結果は接種直後の死亡は未接種者集団の死亡や一般死亡確率より大幅に低いというものです。ただこれは人間の多くの死亡は予期できるもので、危篤の人は死ぬ数日前に接種などしないという理由が主だと思われ、接種の因果で接種直後に死者が発生しない証拠ではありません。例えば危篤の人が接種しないために集団全体より接種直後が本来7割死亡が少なくなるはずなら、65%しか少なくなってない場合、実際に死亡は接種直後に発生しやすいという可能性もあるでしょう。ですので接種後の有害事象の把握のために接種記録と全死亡記録が把握照合できるシステムを構築すべきだと唱えている方をよくみますがそれはその通りなのですが、コロナワクチンに関しては現状そうした国は多数ありそうした国の統計をみても接種後には死亡が少ない、接種者の死亡は少ないという事しかわからないという事になります。