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東大生によるインタビューvol.6:数馬酒造(数馬嘉一郎さん)

こんにちは、たかみーです。
インタビュー企画第6弾は、数馬酒造の数馬嘉一郎さんにお話を伺いました!

今回は、オンラインでインタビューを受けてくださいました。

若くしてベテラン?経営者

数馬さんは、現在36歳で能登町内にある数馬酒造株式会社の代表取締役を務めていらっしゃいます。
出身は能登町、高校進学を機に町外へ出て、就職も一度は東京でしたそうです。
しかし、社会人2年目の24歳で能登町に再び戻り、そのまま今の代表取締役の位置に。
36歳で企業の代表というだけで非常に若く驚いたのにもかかわらず、すでに13年目のベテラン経営者でした…!

ーー24歳のときに能登町に戻ってくるきっかけはなんでしたか?
1つは、23歳のときの飲み会の場で夢を語りあう機会があり、そこで「30歳になったら経営者になる、起業する」というずっと抱いていた夢を語ったとき、「7年間は何を待ってるの?」と言われたことがきっかけです。その一言でたしかに待つ理由がないということに気づき、最短で代表になれる可能性が高い家業を継ぐことに思い至り、夢のタイミングを早めようと決心しました。
もう1つは、会社に後輩が入ってきたときに、誰にでも成果が出せる仕組みが整っていることに気づき、もっと自分にしかできないこと、代わりが利かないような仕事をしたいと思ったことです。
この2つがあって、能登町に戻ってくることを即決できました。

ーー社長になりたい、というのは小さいころから考えていたんですか?
祖父も父も社長だったのが大きかったですね。保育所で夢を書くときにも「社長になる」と書いていたみたいです笑。
それと、「自分の人生の主体性を自分で持っていたい」という思いが強いです。1日24時間の中の何時間を自分の意志決定で過ごせているか、を非常に大事にしています。

若くして代表取締役となった数馬さん。一方で、お酒のことについてはわからないことだらけで始まったそうです。どのような工夫をしてきたのでしょうか。

「酒蔵の当たり前」を変える

先代から継いですぐに社長になったからこそ、業界の知識や経験がなかったそうです。

ーー知識などが足りない中で大変苦労されたのですか?
現場の仕事は社員さんたちの方がはるかに優秀なんです。だからこそ、変に口を出すことなく、強みや能力を発揮しやすい環境を整え、サポートをすることに注力しています。

ーー逆に、「外の視点」が活きるような場面はありましたか?
同業者だけでなく、異業種の方と話す機会も多く設けていました。そこでは自社を「酒蔵」としてではなく、「企業」として捉えるように意識していました。そうすることで、一般企業の働き方としては特殊ともいえる、早朝深夜の作業や泊まり込みの体制などを見直すことができました。

ーー経営者として、「自分の時間を自分の意志によって決めている時間」は多く取れていますか?
自分の場合はほとんどの時間を自分の意思決定通りに進めることができています。これは現場を任せることができる優秀な社員さんたちがいてこそ。その分、自分は人と会う時間を増やしたり、経営戦略を練ったりと、先を見据えることに時間を使うようにしています。

ーー会社としては、いまは何を目指していますか?
これからも「能登を醸す」という経営理念のもと「製品の品質向上」「社員さんが働く職場環境の改善」「地域に対しての貢献性」を毎年高めていく、ということを積み重ねていきます。

ーー会社として、社員さんが働きやすい工夫していることなどはありますか?
弊社では、定期的に社員さんとの1対1の面談を行っていて、そこで出てきた意見や改善点はできる限り反映するよう心がけています。例えば、1人1本好きなお酒造りにチャレンジする「責任醸造制度」という仕組みがあります。社員さんの声から生まれた制度です。小さいタンクですが、自分が試してみたいお酒を造ることができ、そこから生まれた商品もあります。実は、以前フィールドスタディ型政策協働プログラムで造った「 竹葉(ちくは)いか純米」もここから生まれたものです。また、社労士さんとも定期的に話し合い、職場環境を見直し、改善を続けています。

左がFS3期で造った「竹葉(ちくは)いか純米」

わからないことが多いなかでも、それを逆手にとって会社経営の工夫をしたことが成功の秘訣なのかもしれません。

学び続けることと良い習慣を持つこと

これまで経営者として"敏腕"な面を見てきましたが、その原点はどこにあるのでしょうか。

ーー経営者として意識していることはありますか?
色んな切り口から物事を見ることは意識しています。例えば、ときにはネガティブなことをわざと考える必要があります。最悪なことはなんだろうと考え、それを回避する方法などを想定します。経営者としては、ポジティブすぎてもネガティブすぎてもダメで、フラットな状態で冷静にリスクとチャンスを考えていくことが重要だと考えています。

ーーその考え方は元から持っているものなのですか?
いや、元からは持ってないです笑。だからこそ、学び続けることを大事にしています。人から教えてもらうこともそうですし、本を読むことも意識しています。元々勉強も読書も好きじゃなかったのですが、今は「知りたい」という欲が勝つので、月8冊を目標に本を読むようにしています。

ーー日頃から意識していることなどはありますか?
自分の目標に近づくにはどういう自分であるべきかを意識しています。そして、良い習慣を持つこと。いいと思ったら取り入れ、違ったらやめる。足し算と引き算をしながら常に改善を続けているイメージですね。自分ができることをひとつずつやっていくことを大切にしています。

ーー非常に大切なことだと思う一方で、実行するのは難しいと思うのですが、どうしたらできるのでしょうか…?
基本的に僕はびびりなんですよ笑。何が一番怖いかというと、「動かない」という選択をするのが一番怖いとわかったんです。動かないでこのままずるずるいくリスクよりも、動いて失敗するリスクの方がはるかに低いと経験でわかったので行動してみる部分はあると思います。

お話を伺うと、元から特別な何かがあるわけではなく、たくさんの試行錯誤と努力を重ねた結果、今の数馬さんがあることがわかりました。

「能登を醸す」

数馬酒造様のホームページを覗いてみると、「能登を醸す」という非常にキャッチーな言葉がまず目に入るかと思います。経営理念である「能登を醸す」ですが、我々のNOTO CHOICEの"動詞"に少し似たものを感じます。次は、その話を伺っていきます!

ーー「能登を醸す」はいつからあるものなのですか?
このフレーズ自体は僕が代表になったときから使っているものです。ただ、代々能登に対する想いが強く、その想いを継承してきていて、先代や先々代、ご先祖様が思っていることを言葉にしたものが「能登を醸す」だと思い、使い始めました。

ーー地域への貢献、という点は酒蔵としてもユニークなものなのでしょうか?
今は、地域とのつながりを意識している酒蔵さんは非常に多いと思います。お米と水が重要な酒造りでは、地域の自然が密接に関係しているモノづくり。
私たちも、全部能登のお米でお酒を造ったり、耕作放棄地を田んぼにしたり、自分たちの生産活動が能登の課題解決にもつながることを意識しています。

ーー地域資源を使うにあたっての難しさは何かありますか?
非常にありがたいことに、パートナーの農家さんに恵まれて、能登のお米の使用率は40%から90%以上にはすぐに上げることができました。ただ、能登に災害が発生したときのリスクを考えると100%にすることができませんでした。特に海の近くの蔵なので、地震による津波などの被害を非常に受けやすいです。
それでも、能登のお米を100%使うという想いが強かったため、リキュール蔵と醤油蔵の拠点を移し、お米が万が一取れなくなってしまった場合にもモノづくり機能を維持できるようにしました。
能登産米100%への道のりには、そのリスクを分散する必要があったため、時間がかかりました。

「リアルがすぐ目の前にある」能登

最後に、能登町の魅力について数馬さんに伺いました。

ーー数馬さんの考える能登町の魅力って何だと思いますか?
能登町に限らず、能登では「リアルがすぐ目の前にある」ことを強く感じます。食卓に友達が釣った魚が並んだり、知っている農家さんの野菜を料理に使ったり。生産者を身近に感じることができるのは非常に幸せです。
また、四季がはっきりしているので、2週間ごとに移ろう旬を楽しむことができるのも魅力だと思います。
そういう意味でも、「暮らしが豊か」だなと感じます。

ーー今後の展望について教えてください!
能登をひとくくりにして、自分たちの生業、ビジネスが何かしら能登の課題解決につながることをどんどん進めていきたい。
できる限り地域の繁栄と会社の繁栄が連動するようなビジネスモデルを組んでいきたいです。

インタビューを終えて

今回、数馬さんにお話を聞いて、非常にかっこいい経営者としての姿を見せていただきました。
企業の経営者の方のお話を伺えるということは非常に貴重な機会であり、お時間を割いてお話を聞かせてくださった数馬さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
生きていく上で大切なことをたくさん学ばせていただいただけではなく、酒造という地域資源と強く結びついた場に、これほど魅力的な方がいらっしゃることは間違いなく地域に大きな影響を与えているのだろうと感じられました。
本当にありがとうございました!

オンラインでの記念撮影。ありがとうございました!

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