彼女の場合:廃業寸前の茶店にてAM2時の記録

例えばほら
味のしなくなったガムを
捨てられず噛み続けているような

いつの間にか迷い込んでいて
誰にも気付かれず窓際で死ぬ蝿のような
蚊のような蛾のような

うっかりおりもので盛大に
下着を汚してしまった
何でもない昼下がりのような

初めてベッドを汚してしまい
母親に笑顔でシーツを洗われたあの日のような

大嫌いなあの子の前で
両膝をついたことが
ひたすら惨めだった時のような

ブリッジをしようとして
音楽室の冷たいコンクリに
派手に丸めた頭をぶつけた彼のような

十人十色の内の十人になりたくて
必死に雑誌で研究していたあの子のような

生理初日のあの、
じゅわぁってなる感覚のような

必ずといって良いほど
皿のすみに取り残される食後のパセリのような

水筒の中身を普段より早く飲んでしまい
苦渋の選択でトイレの手洗い場の水を
飲んでやり過ごした夏の日のような

ボンゴレパスタにさり気なく隠れていた
砂の味を探し当ててしまったような

うーん
なんて形容して良いのかわかんないけど
先輩の彼氏と寝た時の感想はそんな感じ
思ってたより普通だったかな

って鈴のような声で
笑い飛ばす貴女の目をちゃんと見れない初恋よ


㊙︎ドM倶楽部のお題より「おどろおどろしい」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?