内弁慶

午前一時 車がまばらになった
国道329号線のど真ん中を歩きたい
ファミリーレストランの暖かな灯りの下
宙ぶらりんの頭をなんとか支えて
パチンコ屋より遅起きの街を眠らせたい
不思議なことにこんな時間でも
健康の為に歩く人はいて
宙ぶらりんの頭支えながら
お疲れ様、と見守った
果たしてそれに意味があるのかは
考えないでおこう

妹のベナッシサンダルを履いて千鳥足
急勾配の坂を前へ前へと進む
右手はこの詩を打って
左手は風を切って
意識はふわふわとどこかへ飛んでいきそうで
表垢では出せない闇を裏垢で吐いて
たちまち気持ち悪くなって道端で吐いて
何がしたかったのだろうと迷宮入り

他人によく見られたい
せめて普段の私より うんとよく見られたい
うちでは大威張り そとでは小さくなる
これ、なーんだ。
画面の上のやり取りでは優位に立てるのに
外の私はまるでカタツムリのように縮こまるんだ
つつかれまいと 塩を撒かれまいと
殻を上手に盾にして弱虫を育ててる
自分で機嫌を直すことすら出来ないまま
大人になってしまったんだ
こんなはずじゃなかったんだと
宙ぶらりんの頭を眠りにつかせて やがて覚める


文芸誌『煉瓦』第17号掲載


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