ニュークリアエアリア4
家に帰るといつもコメを迎えてくれる与高がいない。早く中に入りたがるコメをリードで抑えながら、足裏についているかもしれない汚れを、適当に拭き取った。この作業にどれほどの意味があるのか分からなかったが、肇は一人でやったことがなかった。散歩から帰ってきた肇がコメを背中から抱き上げ、前に放り出されたコメの足を、与高が一本ずつぬぐう。いつ始まったとも知れない玄関での共同作業が、終わったことを知った。
「学校には行きたくないみたいよ」と美紀が言った。
三紀と世高の間で、どんな話し合いがあったのかも聞かず、肇は与高の部屋の前へ行った。
「学校に行かなくていいと言っているだろ」と不機嫌そうに、ドア越しに聞こえるくらいの音量で放った。
顔も見ず、ノックもせず、聞いているのか分からなかった。与高からの応答はなく、肇はリビングへ引き返すしかなかった。その夜は与高と顔を合わすことはなく、三紀ともそれ以上話しはしなかった。
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