『旅の空』ネパールの旅 憧憬のヒマラヤの向こうに 10
8日目 ~ゴーキョピーク(5380m) → ルザ(4390m)~
ゴーキョピークは、文字通り一つの天上の世界だった。エベレスト(8848m)とヌプツェ(7861m)を中心とした最強の展望だけではない、見渡す限り8000m峰という光景は、白く、壮大で神々しかった。百戦錬磨のラクパさんも “I’m also very happy.” と幸せそう。
一つ目のピークを踏んだ日が忘れられない日となったのは、その日泊まったルザのロッジが、とても心休まる場所だったからだ。ロッジにはお母さんと小さな子どもだけ。短い夕暮れどきを、小さな子どもと紙飛行機あそびに興じ、決まりきった夕食のダルバートを楽しみ、いつものように早めに寝袋にくるまる。少したつと、小さな歌声が聞こえてきた。それがロッジのお母さんが、小さな子どものために歌う子守歌だとわかったとき、ぼくは隣のラクパさんと顔を見合わせ、その幸運を確認し、その歌声が聞こえているうちに眠ろうと、目を閉じたのだ。