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なぜ九月は、何十時間も軟禁されコントをやり続けるライブを行うのか

九月と言います。芸人をしています。

間もなく僕が一軒家に53時間閉じ込められ、延々とコントをやり続けるライブがスタートします。6.17(金)19時から、6.19(日)24時まで、お客様に限り出入り自由です。入場料は1000円。応援入場2000円。

とても突飛なライブ企画に思われるかもしれませんが、この軟禁ライブ、開催するのは今回で13回目です。

実は今年だけでももう5回目。1月に72時間と19時間、3月に72時間、4月に48時間。そしてこの6月の軟禁が53時間。だいたい1〜2ヶ月に1回は軟禁されている計算です。

このライブ、毎回きっちり完走してきた企画で、チャレンジ企画みたいな文脈ではありません。今回も、何事もなければスムーズに完走すると思います。

ここで一つ、この「軟禁ライブ」を行う目的や意図について書いておこうと思います。

僕はフリーのピン芸人で、ほぼ毎週の単独公演を中心とした活動をしています。毎回の公演で新ネタを10〜20本おろしています。これは毎日のほとんどをネタ作りに当てたとき、一定の質を保ちつつ僕にできるマックスの量・ペースです。

この単独公演の合間に、ゲストとして呼ばれたライブやイベントに出演したり、脚本やコラム執筆などの仕事をしたりしています。現状、各地のファンの皆様に支えられ、この活動スタイルで生活がギリギリながら回転しています。

しかしこの活動スタイルには、大きな問題点があります。

それは、過去にやったコントを磨き上げたり、作り直したり、何度も試したりする場がないということです。

一般に、芸人の活動の主軸は単独公演ではありません。多くの芸人と一緒に出演するネタライブがメインです。そういったライブを毎月10〜20本くらい、多い人ならばその倍ぐらい出演し、それぞれのライブでネタを1〜2本披露する。そういうサイクルで活動されている方がほとんどだと思います。様々なライブで、様々なお客さんの前でネタを試し、作り替えていくイメージです。

僕もまた、外部のネタライブに出ることができます。しかし、そういったネタライブの多くは、入口としてエントリーライブという形式をとっています。すなわち、基本的に2000円前後のエントリー費用がかかるのです。

この出費はかなりの痛手です。一つのライブで2000円、10個なら2万円、20個なら4万円となります。僕の場合、毎週の単独公演をやり続けるためにはバイトをする時間が取れず、エントリー費用を払う金銭的余裕もありません。

幸運にもゲストとして、エントリー費用のかからないライブ、何ならギャラも出るようなライブに呼んで頂けることもあります(ギャラが出るのは凄いことなのです)。

しかし、僕はふだん単独公演しかしておらず、更に生来の「関わりづらいオーラ」、そして関わった際の「実際には明るくてよく喋る奴なんかいギャップ」の全てが負の方向に作用してまして、業界内にそんなに交友関係がありません。呼ばれることは稀なわけです。多くて月2。

結果、そういった外部のライブを通じてネタを試すことは難しい、となるわけです。

そこで僕は対策として、一箇所に閉じ込められて、お客さんだけが入れ替わりながら何十時間もライブをする「軟禁ライブ」を行うようになりました。

「軟禁ライブ」は、字面や内容が異常なぶん、いくらか宣伝効果があり、普段よりも幅広い層のお客さんが入れ替わり入れ替わりいらっしゃいます。様々なネタを披露していくチャンスとなります。

さらにこの「軟禁ライブ」は、なんと言っても時間が長いです。一回の軟禁ライブで、だいたい時間数×10本のコントをやることができます。48時間ならば480本、72時間ならば720本。今回は53時間なので、530本できることになります。

しかもその中には、ある種の無敵状態となる時間が含まれています。すなわち、何時間も何十時間もコントをやり続けることによって、ある種のトランス状態に入り、普段よりもパフォーマンスがグンとよくなる時間が訪れたりするのです。

すると、過去ネタを磨き上げたり、組み替えたりする場面として最適となるわけです。平均して、どのコントも5回やればある程度アップデート出来るとしたとき、延べ530本をフル活用すれば106本を更新できることになります。

これは毎日ライブでステージをこなす周りの芸人の一年分、とまでは言わなくても、数ヶ月分くらいの進捗になるんじゃないかと思います。

そして何より、集客数にもよりますが、基本的にお金がマイナスにはなりません。だから生活上も足しになるということです。金銭的な継続性があるのです。

すなわち「軟禁ライブ」とは、僕にとって「最大効率で大量のコントを作り続けるためのライブ」でもあり、「生活費を稼ぎつつ今のスタイルの芸人活動を継続するためのライブ」でもあるということです。

これが可能になるのは、ひとえに周りの支援のおかげです。軟禁ライブの会場については、知人のツテやファンの紹介で関東・関西に複数個確保しています。今回は尼崎。こんな突飛で衝動的で自分勝手な活動は、応援してくださる皆様がいらっしゃるおかげで成立しています。

芸人としての僕の目標は、劇場に住むことです。永遠に軟禁され、一年中コントをやり続ける暮らしがしたいです。生きている間のなるべく多くをコントに費やしていたいのです。

そう考えると、53時間なんて一瞬です。一瞬ならば一瞬なりに、一瞬の煌めきを残せるように頑張って参ります。応援よろしくお願いします。近くの方は遊びに来てね。

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サポート頂けた場合、ライブ会場費、交通費などに宛てます。どうぞよろしくお願いいたします。